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SOAPとソーシャルワーク1 ~PORMの概要について~

はじめに

記録システムを作成するにあたり、ソーシャルワークで取り上げられる記録方法について理解を深めたいと思います。

今回は、「SOAP」記録を取り上げます。

はじめに、この概要を「日本POS医療学会」のeラーニングページ、ならびに「日本POS医療学会『POS医療認定士』のためのワークショップ資料」(http://www.pos.gr.jp/pdf/2008/posiwai.pdf)を基に整理します。この資料は「日野原重明:POS  The Problem-oriented System  医療と医学教育の核心のための新しいシステム、医学書院、1973年発行」によってPOSの原点を再確認するための資料です」と紹介されており、POSの要点をつかむために適した資料と考えられます。

その後に、ソーシャルワークとの異同、そして適用について考えてみたいと思います。

初回の今回は、POMRの概要のまとめです。


POS(Problem-oriented System)とは何か

「POSとは、患者の持っている医療上の問題に焦点を合わせ、その問題を持つ患者の最高のケア(best patient care)を目指して努力する一連の作業システムである。」

「ワークショップ資料」

「一連の作業システム」として以下の3段階によって構成される。
第Ⅰ段階:POMRの作成
第Ⅱ段階:POMRの監査
第Ⅲ段階:POMRの訂正

第Ⅰ段階 問題志向型診療記録(POMR)の作成

POMRには、以下の4つの要素が含まれる
・基礎情報(Data base)
・問題リスト(Problem list)
・初期プラン(Initial plan)
・経過記録(Progress note)

基礎情報(Data base)

以下の内容が含まれる
a.患者の生活像(patient profile)
  ・出生地及び住所
  ・学歴、職歴
  ・現在の仕事内容と立場
  ・結婚歴
  ・宗教
  ・趣味
  ・一日の過ごし方
  ・嗜好
b.病歴
  ・主訴
  ・現病歴
  ・既往歴
  ・家族歴
c.診療所見
d.検査データ
e.系統的レビュー
  患者から一通り聞き終えた後、循環器系、呼吸器系、消化器系、泌尿器系、皮膚系統、内分泌系統、運動器系統、血液系統、伝染病系統等に分けてチェックすること

問題リスト(Problem list)

問題とは、病歴や診察で得られた訴え、または観察、診察所見ないし検査データから得られた所見であり、患者自身または医療者が異常だと見抜く(percept)事柄である。それが「患者の生活上の心身の機能能力を下げるような事柄」を「問題」と呼んでいる。この問題には、狭義の医学的な問題のほか社会的(social)精神的、人口統計学問題(ヘビースモーカーなど)も含まれている。

「ワークショップ資料(強調筆者)」

①医学的領域の問題、②生活環境の問題、③嗜好、習慣の問題、④社会的問題、⑤心理的問題、⑥経済的問題、⑦不具・身体障害的問題があげられます。

「eラーニング」

「問題を取り上げる方法と原則」(eラーニング)では、問題は「#1~、#2~」と記載すること、問題を取り上げた年月日と終了年月日を記載すること、活動性の問題と非活動性の問題を分けること、長期的か一時的なのかを分けることとされている。

初期プラン(Initial plan)

3つのタイプがある
a.診療上、また、患者ケア上に必要な計画(diagnotic plan)
  診断や患者ケアのために必要な情報を集めるための計画
b.治療上の計画(therapeutic plan)
  現在から将来までも見渡した治療計画
c.教育的計画(educational plan)
  患者家族への教育計画

経過記録(Progress note)

a.叙述的経過ノート(Narrative Note)
  S:(subjective)または(Symptomatic)
    患者が示す主観的情報
  O:(objective)
    医師や看護師が明らかにした客観的情報
  A:(Assessment)
    評価、診断、考案
  P:(Plan)
    患者の診断、治療、教育計画
b.経過一覧表(Flow sheet)
  経過中の認められた種々のデータを、一見してわかるような一覧表

退院時要約(Discharge Summary)または最終経過ノート(Final Progress Note)

S:主観的最終的経過ノート・記録
O:客観的な最終経過ノート
A:評価、考察


第Ⅱ段階 POMRの監査(Audit)

3つの要素がある
a.記録作成が以下の点について適正か
 i )基礎情報として、どのような情報内容が明確に記載されているか
 ii )どのように患者の問題が取り上げられ、整理されているか
 iii )計画の中の3つの項目(心断面、治療面、教育面)について、何が見出されるか
 iiii )経過ノートの中の4つの項目(S,O,A,P)に何が見いだされるか

b.「a.」にあげた4つの行為が、以下のようになされているか
 i )徹底して(thoroughly)
 ii )信頼のおけるように(reliably)
 iii )能率的に(efficiently)

c.記録内容の不足や不適切な点(deficiencies)を確認し、修正する

POMRの本質が生かされているか、また特定の疾患を持つ患者ケアの質が担保されているかという視点でも監査される。


第Ⅲ段階 記録の修正

円滑に行うには、患者に直接、間接にかかわるすべての医療従事者間のコミュニケーションがうまく言っていることが必要である。

「ワークショップ資料」

患者自身にも適切に教えられ、教育されれば「もともと患者のもの」である診療記録に、正確に記載されているのか、問題リストが完全なものであるかを患者自身が監査することもできるであろう。

「ワークショップ資料」

次回は、POMRのソーシャルワークへの適用について、検討したいと思います。

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