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メガネを処方するように、環境を処方できる人になりたい【医師のキャリア】

目が悪い人に、メガネやコンタクトレンズを処方する。
そんな感じで、生きる上で凸凹を抱える人に、環境を処方する。

これが私のキャリアイメージだ。これが出来るのならば、職種は問わない。

生きる上で凸凹を抱える‥って、実はめっちゃ見にくいんだ。今の社会。

普通に過ごしてたら、「学習障害を持つ」「発達障害を抱える」人って、中々見えてこない。見えてこないものだから、ついついそういう人が「居ない」と思って過ごしてしまう。


環境の処方パターン① 総合診療医という在り方

私は総合診療医を目指して日々研修しているので、高齢者に対して環境を処方する、という例は本当にたくさん目にする。

人間ってのは若い頃は健康だからさ、一人で、自分の足で立って歩けるんだよね。

でも年をとって足腰が弱くなったり

病気でそれまでの生活が送れなくなったりすると、とたんに他の資源に頼らざるを得なくなる。

ここで登場するのが介護保険に代表される、介護福祉サービスだ。

介護保険を申請して、その範囲内もしくは家族・本人の経済的余裕にも依存するけれど、サービスを利用しながら生きていく。

勿論そのうち人生の終わりは来るわけだけれど、その最期まで、本人がやりたいような生活を送れるようなサポートをする。これが総合診療医の真髄だと思ってる。こりゃあめっちゃ面白いんだよね。

「病院に行くから病気が見つかる」は一理ある。

「病院に行くから病気が出てくる」ってのは当にその通りで、病院に行って検査をするから、病気が見つかる。病院にいかない人は検査をしないわけだから、そりゃあ病気も見つからんわな笑って感じ。

今の社会は個人的には「病気を見つけすぎ」って感じがするんだよね。
正確には「見つけたのは良いけれど、全体をどう統合するか?の議論が弱い」気がする。

そりゃ「病気です」って言われたら心配になるよ。当たり前じゃん。

でもさ、救急外来にやってきて、どう見ても「もう5年くらいしたら死にそう」なのに「死についての議論を全くしたことが無い」って普通に変じゃない??と思ったんだよね。

20代の若者ならともかく、60歳70歳になった人が、自分が一生生き続けられるような気持ちで日々過ごしている‥って状況に違和感を覚えた。そんな感じ。

そういう議論をせず、ただひたすら出現した症状に対して診断名を付与し続ける状況に、違和感がある。


環境の処方 パターン② 発達障害・学習障害

今丁度小児科をローテートしていて、この2つのテーマも総合診療医とすごく近いというか、環境を処方してるなぁ‥!!って感じてる。

自分が習ってる発達外来(児童精神科)の先生曰く

「発達障害って、発達の病気なんです。だから、そのうち良くなるんです。上手く発達できなかったら二次障害とかに繋がりますけど。そうならないように、発達の段階で上手く社会調整という補助輪をつけてあげる。成長するにつれて補助輪は外れて、自分の足で歩けるようになっていくんです」

この考えがめちゃめちゃ素敵。そして上で挙げた「高齢者に介護福祉サービス」と構造が似ている。

学習障害も、このパターン。

今の日本は板書をノートに写して、繰り返し書いて、覚えられた人が「成績が良い」とされて、社会的ステータスを得て、活躍していく世界になっている。その世界では、「耳で聞いて覚える」人とか「目で見て覚える」人にとっては学びにくくて、成績が悪いとみなされがち。

そういう子どもたちが「勉強はめんどくさい」「学校行くのいやだ」と言って社会から外れていき、そのまま苦手意識を持ったまま帰ってこなくなる‥ということがあるそうな。

じゃあどうすれば良いかというと、これも環境調整の出番。

個別支援を行う、通級指導教室に通う、などのシステムにつなげる。

全然別件で、最近オーストラリアで16歳未満のSNS使用が法律で禁止されたらしいんだけど、良い案だよね。

今の社会は「SNSは発展したけど、SNSの使い方はまだまだ発展途上だな」って感じで思ってる。

自己と他者の境界が曖昧な状態でSNSにのめり込んだら、だめになってしまう、と直感で思ってます。これは今後、明らかにしていきたい価値観。

SNSをやっても上手く大成している人は個人レベルではいるわけで、そういう人がいる中で「全体として」どうするか?というのには、すごく興味がある。



自分が理想とするキャリアを模索し続ける。

小児科と総合診療科。ぜんぜん違う診療科だと思っていたけれど、「やりたいこと」ベースで考えるとすごく近い、ということに気がつく。

19の診療科から選ぶ必要なんて無い。自分がやりたいと思うことをまず列挙して、それを達成するための方法‥を順番に決めていくだけ。


「もし今日が人生最期の日なら、何をする?」

スティーブ・ジョブズが2005年6月、アメリカのスタンフォード大学の卒業式で行なったスピーチの一説だ。

「システムを良くしたい」

自分自身の能力を上げることよりも、他の人が関係しているシステムを改善したい。

能力の高い個人に頼るんじゃなくて、WIN-WINな環境になるように、1ミリでも多く動きたいんだよね。


やぁ、5年後の私。その時はなんて名乗ってるかな。ジョンのままだと良いんだけど。

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