#3 メンマと僕
Noteを開設して以来ジェンダーの話ばっかりしてて、なんとなく他のことも話したくなったので、脈絡なくメンマについて話そうと思う。
メンマをご存知だろうか。ラーメンのお供として優秀な、ベージュで繊維質でしっとりとしたアレである。2000年台のかの有名なアニメで「みーつけた!」された小さな少女のことではない。甘口でシャキシャキしている、ラーメン界隈では助演男優賞を受賞しても忖度ないような(メンマをジェンダー化する意図は微塵もないが)憎いヤツである。
では、あやつが何でできているか。その答えをとある親戚に聞いた時、私は衝撃を受けた。
「人が食べた後の割り箸を漬けたものだよ」
幼かった僕は仰天した。数多のちびっこの例に漏れず、僕はラーメンが好きだった。家で食べる袋麺には載っていない、風味豊かな例のヤツ、外食時のささやかな楽しみであったあの細いブツは、あろうことか人が食った後の割り箸だったのか。
無論正解はタケノコである。クックパッドを調べれば、あやつは煮たタケノコをごま油と酒、醤油、みりんなどで炒めて汁気を飛ばせば簡単に作れるらしい。お手軽に助演男優の作り方を調べられるなんて、インターネットと現代技術に万歳である。そして、幼い僕もメンマの出身地が竹林であることは知っていた。だが、彼(もしかしたら彼女かもしれない)は青々とした林の中におぎゃーと生を受けたのだと説かれるよりも、食事の出汁や水分を吸って少しばかり茶色く染まった箸先から紆余曲折を経てここにやってきたという説明の方が、説得力がある気がした。僕の脳内は混乱を極めた。その度合いは、多分、丁度天動説を信奉していた人々が、地動説に初めて邂逅を果たした時の感情にも似ていた。まあどんなだったか知らんけど。次に油ぎってツルツルした床のラーメン屋でメンマに邂逅したとき、僕は不思議と泣きそうになったのを覚えている。いや、嘘だ。多分そんなことは忘れて美味しくいただいたに違いない。