シュナの旅
本の詳細(読了日:2022/3/10)
書名;シュナの旅
作者;宮崎駿
出版社;徳間書店
ISBN;978-4-19-669510-3
ジブリ映画の第1作目、「風の谷のナウシカ」の原案と呼ばれている作品がこの作品である。
「風の谷のナウシカ」は正確にはスタジオジブリが製作した映画でないが、一般的にはジブリ映画の第1作として数えられている。なお、後述する「風の谷のナウシカ」はすべて映画作品を示している。
ジブリ映画の「風の谷のナウシカ」は風の谷の王女ナウシカが大国トルメキアとの戦争に巻き込まれ、トルメキアとの戦うという話である。
一方、シュナの旅は少年シュナが黄金の実を探して西へ旅をするという話だ。一見なんの仕掛けもオチもなく思えるが、自分はこの短い話にジブリ作品のすべてが詰まっていると思う。
主人公のシュナの外見は「風の谷のナウシカ」に登場するキャラクター、ペジテの王子アスベルにそっくりだ。冒頭に登場するシュナの祖国は風の谷にそっくりだがもっと貧しい。何かの使命を帯びて旅をするという設定は「風の谷のナウシカ」のナウシカや「もののけ姫」のアシタカの設定と共通している。
このようにシュナの旅の要素が少しずつ少しずつ分散され、薄まったものに新たに肉付けされたものがそれぞれのジブリ作品だと思う。とくに、2000年代までの初期の作品にはその影響が顕著な気がする。
この漫画の全体を流れるテーマはいかようにも受け取ることができるだろう。単なる冒険ものと思えるし、生命とはなにかという壮大なテーマを扱ったものとも思える。奴隷がでてくることから、身分差や貧富の差について扱ったものと思える。この漫画自体がオールカラーで、独特のタッチで描かれていることから、絵画作品とすることもできる。この漫画一コマ一コマを切り取って絵画としてどこかの豪邸に飾られていてもおかしくはないと思う。
自分はこの漫画は生命力の話だと思った。主人公シュナが旅にでて試練を乗り越え、また旅にでる。漫画版の風の谷のナウシカの主人公、ナウシカ並みのきつい試練だ。ページ数の関係からか、旅の詳細は省かれ概要のみえがかれている。何度もくじけただろう。その度に立ち上がるシュナは、何度打ちひしがれても生きようとする強いキャラクターに感じられた。ジブリ作品には数通りのテンプレートキャラクターが登場するが、シュナはその原型だと思った。
この物語のストーリーそのものは単純だが、この作品の1つ1つの要素のすべてを語るとキリがないと思う。また読み直したい作品だ。