「おもてなし」の日本文化誌
以下の文章は自分の読書感想を思いつくまま書いたもの。個人の主観を多分に含んでいるため、苦手な方は回れ右してください。
本の情報(読了日1/7)
書名:「おもてなし」の日本文化誌 ホテル・旅館の歴史に学ぶ 作者:富田昭次 出版社:青弓社 ISBN:978-4-7872-3416-2 C0036
この本ではホテルや旅館の歴史を通して日本のおもてなしが如何にして発展してきたかを紹介している。
自分は、高級ホテルの送迎の歴史についての場面がとくに印象に残っている。明治時代に開業したとあるホテルでは、自前で仕立てた馬車を使い距離に関係なく恭しく客を駅からホテルへと送迎した。やがて自動車が普及しはじめると、順次自動車に切り替えていった。非常に効率が悪いが、このサービスは客に特別感という目に見えない価値を付与してくれる。
この送迎サービスは客の「旅の最後の行き違いによりホテル滞在中の快適さが台無しになった」という手紙をもとにし生まれたサービスだ。その後、このホテルでは重要な事業となった。
客の不満や意見から新しいサービスが生まれたということは成功エピソードにおいてしばしば登場する。しかし、自分は人の不満を受けるときにどう思うだろうか。
人から批判を受ける、怒られる経験は日常でよくあることだ。例えば、通勤途中にすれ違うときに少し肩があたって舌打ちされる、仕事でミスをして上司に怒られる、見に覚えのないことについて怒られるなど。その瞬間、嫌な気分になったり、しょうがないと諦めたりするだろう。自分はそんなときは勉強させてもらったということを考えていることが多い。
自分が似たようなことを他人にしていないか、自分に否があるかどうか、どこが悪かったのか、これらを意識している。ホテルで仕事をすることすなわち、おもてなしを最重要視しお客様の快適さを考えて仕事をすることである。この本ではそれらの歴史や工夫が緻密に描かれている。自分の非がわからない場合は相手の背景や人格を考慮すると自ずとわかるそうだ。そこには新しい価値観や意見が眠っている。自分は、それを知ることで勉強させてもらったと感じられるのではないかと思っている。
相手の気持ちになって考えなさいと、幼少期に親に言われたことがある。当時は「違う人だからその気持ちそのものは感じ取ることはできない」から無茶なこと言うなと思っていた。しかし、相手の育った環境やそれにより生ずる価値観、その場の状況を加味すると推測できなくはない。
大人になった今、批判や怒りを向けられても、むやみに怖がる必要はないと知った。自分の非があれば反省すればいいし、なければ相手にとって非になる点を把握し改善すればいい。たいていの人は明日死ぬこともなく、この世界で生きているだろう。明日には明日の風が吹く。