トムは真夜中の庭で
以下の文章は自分の読書感想を思いつくまま書いたもの。個人の主観を多分に含んでいるため、苦手な方は回れ右してください。
本の情報(読了日2022/1/28)
書名:トムは真夜中の庭で
作者:フィリパ・ピアス
訳者:高杉一郎
出版社:岩波書店
ASIN:B08Q3TJ1CJ
この本はトムが夏休みの間に田舎のおばの家に預けられ、そこで不思議な体験をするという話である。
バーネットの秘密の花園に時間遡行の要素を付け足したような話だと思った。
また、自分自身の子供時代のことを思い出した。
この本を読んだとき、ちょうど実家に帰省しているときだった。自分も主人公のトム同様、大人たちに気を遣ってすごしていたことを思い出した。
作中、おじさんやおばさんはトムが病気にならないよう、最初はトムを屋敷に閉じ込めてよく眠ることを強制する。トムはもちろんこのことを大いに不満に感じ、庭を見つけてそこで毎晩遊ぶようになる。
今の自分はトムくらいの年齢の子供がいてもおかしくはない年齢となった。彼を心配し、あれこれと余計な世話を焼きたがる気持ちはよくわかる。同時に、自分が彼くらいの年齢だったころ、両親が旅行に連れて行ってくれてそこでかなり気を遣って頑張っていたことも思い出した。
自分は旅行が嫌いだった。旅行中は行動をすべて親によって制限される上、帰宅後友人から嫌味をいわれるからだった。当時は体だけではなく、精神的にも弱かったため悪口や陰口を叩かれることは相当に辛いことだった。親と時間を過ごすときも、彼らが自分に求めていることを実行し望まねばならなかった。
親は共働きで、いつも疲れた顔をしていた。自分は彼らの負担にならないように大人しく要求をあまり言わないようになった。この癖は長年治らず、旅行中も実行していた。
作中でトムは夜中に庭で遊ぶから、家では休息をとりたいと思っているにもかかわらず、おじさんとおばさんが彼を楽しませようと色々なところに連れて歩いていることにうんざりしている描写は本当にリアルだと思った。大人は「子供のため」と言いながら全く見当違いのことをして子供が大人につきあわされるということは万国共通でよくあることだ。また、子供には子供だけの楽しみがあり、大人には考えられないことが一番の楽しみだったりする。このことを思い出した。
子供の時分というのは、誰にとっても輝かしい時代だろう。たとえ二度と戻りたくないほど憎んでいたとしても、子供特有の楽しみを見出して切り抜けた経験があるだろう。
大人はたまに児童文学を読んで自分の子供時代を思い出して、振り返ってみることも大事だと思う。そうすることで、今という時を客観視できるから。
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