江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた
本の情報(読了日2022/3/7)
書名:江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた サムライと庶民365日の真実
作者:古川愛哲
出版社:講談社
ASIN: B00ISQDWDK
この本では、一般で知られている江戸の歴史について史実と異なるものを紹介している。
江戸時代にはあらゆるものをリサイクルしていた。食事中の方には申し訳ないが、人の排泄物もその対象だった。都市部から集め、郊外の田園地帯へ運ぶ肥取りという職業があった。道端では肥取りが掛け声をかけながら往来していた。タバコを吸うなど、うっかりしていると肥杓に着物を汚されることがあったり、黄金水が道へこぼれたりしていた。こぼれたそれが乾いて風にまじり、あらゆる眼病の原因になったそうだ。つまり、中世ヨーロッパ並みの悪臭が漂っていたことは想像できる。江戸の町に対して勝手に清浄なイメージを抱いていた自分には予想外だった。
また、江戸の町には意外な監視体制があった。髪結床だ。月代という髪型は江戸時代、武士も町人もしていた。しかし、映画やドラマによくあるように、女性に剃らせるものではなく武士は自分で、町人は髪結いに剃ってもらった。月代に髪が伸びた状態だと浪人もしくは逃亡者と見做され警官に捕縛されることもあった。また、月代はスリの監視をおこなっていた。旅行者は手型がないかぎり、その土地の髪結床を使えなかった。月代は治安維持に関わっていたため火事のときに書類を持ち出す義務があり、非常用の手型をもっていた。今でも地元の床屋さんの亭主がなんでも知っているのはこの文化が影響しているのかもしれないと思った。
長屋の人情は厚いという言葉がある。この理由もこの本で紹介されていた。当時、江戸は 3;1の圧倒的な女不足で、妻の貸し借りや不倫や売春はよくあることだった。安定した給料を稼ぐことが難しいという経済的な一面もあった。この背景から、産まれた子供の父親の判定は胞衣に父親の家紋があるかどうかだった。「紋散らし」といわれ、よくわからない場合は、身に覚えがある男性が共同でお金を出資して子育てをした。なんとも凄まじい背景だと思った。
今回、この本を読んで驚くことが多く、1つの章が短いため読みやすいと思った。200年以上続いたため、今後あらたな史実が判明するかもしれない。