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LA ALEGRAの春

johiroshi
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※試聴版。オリジナル版(01:24)はマガジンを購入すると視聴可能。

3月下旬からフリウリ・ヴェネツィア・ジューリアのLA ALEGRAというアグリツーリズモで過ごしている。

フリウリには3月初旬にも数日滞在しており、そのときはほぼ全日が雨だった。フリウリの春は雨季である。去年に引き続き今年も暖冬で、雪はほぼ降らなかったらしい。来た当初も以前雨が続いていた。宿はハンドメイドの小屋で、天井はガラス張り。夏季には満点の星空が見えるようにとの配慮だろう。しかし、冬の寒さが残る今の時期はなかなかにきつい。なにせすぐ背中には山がある。標高の高さも相まって夜はとても冷える。

LA ALEGRAの朝は動物への餌やりから始まる。猫にキャットフードを。残飯を鶏に。ロバと羊には干草を。去年、ヴァッレ・ダオスタで干草を集める仕事をやっていたから干草一つにも感情移入する。

一番早く起きるのは一家の大黒柱のアレッサンドロ。彼は朝起きると動物に餌をやる。僕はそれを横目に見ながらカフェや朝食の準備をする。カフェを淹れて、パンにオリーブオイルと塩をつけて焼いたり、フレンチトーストを作ったり。ついでに彼の分も用意する。奥様のグラッシエーラは少し遅れて起きる。娘のソフィアはもっと遅くに起きてくる。

朝の仕事は平日と土日で大きく異なる。平日の場合、アレッサンドロは山から降りて友人の庭仕事を手伝いに行く。僕はそれを手伝ったり、薪ストーブに使うための枝集めをしたり、ゲスト用の小屋のペンキ塗りをしたりする。グラッシエーラとソフィアはゲスト用の小屋を整備したり、庭仕事をしたり、諸々だ。土日及び金曜日はレストラン営業のための仕込みをする。じゃがいもを茹でたり、数種類のニョッキを手作りしたり、羊肉を捌いたり。大まかなメニューは決まっているが、アンティパストに使うものは季節によって異なるみたいだ。僕もカブを使って一品作ったり、トンカツや親子丼を作ったりした。イタリア人には日本の料理の受けがいい。

土曜日はスロヴェニアに買い出しに行く。スロヴェニアは目と鼻の先、車で15分ほどの距離。国境はあるが、管理する人は常駐していない。とはいえ、パスポートの携帯は欠かせない。フリウリ・ヴェネツィア・ジューリアはオーストリア、スロヴェニアに接する州で、その文化は当然隣国の影響を大きく受けている。イタリアとスロヴェニアと国が違うだけでガソリンや食材の値段が変わるらしい。土曜日は朝イチに発ち、スーパーマーケットへ寄ってからパン屋でコーヒーとパンをつまみ、残りの買い出しを済ます。帰りにカフェを一杯飲んで、ご近所付き合いをするのがここ数週続いている。

1日の終わりはまちまちで、山から降りて庭仕事をしたときは17時〜18時に戻る。土日はレストランの仕事が終わり次第。しかし予約があれば夜もレストランは営業する。夜ご飯はだいたい20時〜21時。時間があるときは僕もご飯を用意する。

それ以外の時間はおおむね自由。屋外にある木のベンチやハンモックに揺られながら、動物を眺めてのんびりしている。日中、羊はひたすら草を食べている。数は15匹ほど。食用。猫は5匹ほどいて、うち4匹には懐かれている。猫たちは昼夜構わず建物、及びキッチンに入り込んでくる。餌を求めてだったり、暖を求めてだったり。猫は人馴れをしていて、少し仲良くなると膝の上で寝ようとする。もっと仲良くなると小屋の扉を叩いて一緒に寝ることになる。まだ幼い猫は寝る前は戯れたがり、朝の5時頃には引っ掻き回して起こしに来る。猫と一晩を共にするのは寂しさがまぎれるが、安眠はできない。

今まで特に触れていなかったが、アグリツーリズモに電気は通っている。山間の家屋では電気が通らないことがままあるので、電気があるだけ生きやすい。インターネットはほぼ通じないが、インターネット回線はあり、Wi-Fiが通じるエリアもほんの少しある。その分、本を読む時間がたっぷりあるのだが、読みたい本を持ってきていないことが悔やまれる。そして大事なことだが、温かいお湯は常備されてない。毎日ボイラーを暖めている。洗い物が多い日は朝からボイラーを暖める。シャワーは基本的に夜に入るのだが、ゲスト用のシャワー室は屋外にある。今では少し暖かくなったが、冬の寒さが残る3月や雨の日に屋外でシャワーを浴びたのはなかなかの経験だった。屋外で裸になってシャワーを浴びたとき、福岡のIZBAを思い出した。

夜の晴れている日は星を眺めながら眠っている。

(2024年4月20日現在の記録)

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不定期連載。実験的に始めます。買い切り。

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