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参加記録「科学とゲームで対話する2024」

2024年3月24日に池袋で行われたイベント「科学とゲームで対話する 2024」に参加してきました。立教大学の大学生有志がサイエンスコミュニケーション教育の一環として取り組んだもの。学生たちは、所属学部や単位とかに関係なく、およそ半年くらいの期間で取り組んできたそうです。すごい。

参考リンク:立教大学 サイエンスコミュニケーション教育 SCOLA SIP



前置き

このイベントを知ったのは、前週の3月17日に横浜で開催された研修ゲームイベント「Play&Learn 2024」でのこと。学生が出展していました。

自分は去年、愛知の大学生と「地域ボードゲームをつくろう」という取り組みを行いましたが、テーマを持ったゲーム制作の指導の難しさを感じつつ、そのノウハウなどにも関心があって「立教大学はどんなの作ったんだろう」という関心を持ちました。

参考:地域ボードゲームをつくろう!


学生らの指導者である古澤輝由先生によると、ゲーム作りという縛りはなく、サイエンスコミュニケーションをテーマに学生のチャレンジを応援しているとのこと。動画やパネルを作ってもいいのですが、今回はゲーム性のある体験型のワークショップになったようです。

科学コミュニケーションの2作品の体験レポート

あくまで1人の参加者の感想に過ぎないので、理解の正しくないところや誤解釈があるかもしれません。ご了承ください。とくに「改善の余地があると感じたこと」部分。
ワークショップやゲームなどのイタラクションを重視した取り組みは、そもそも「制作者側の狙い」をバンと宣言するより「感じてね、気づいてね」って形態が多いので、制作者からすると「批判の矛先がそもそもズレている」といったことが起こりやすくなります。

板書やプレゼンより、受け止めの多様性があってこその体験型ですから。わきあがる感想として批判的思考も働いていますが、これを読む方は、真に受けとめ過ぎず「ほぇー」くらいでお願いします。


鑑賞型対話ツール ダリのめ

パッケージに収まったワークショップ・ツールキット。箱の中のキットを使ってファシリテーターが進行する対話ゲーム。

パッケージなどのデザインも学生が作ったそうです。

ゲームの進め方

  • 絵を見て、各人の思ったこと、気づいたことを述べる

  • タイトル、AI作画のプロンプトが公開される(先端的な科学技術に関連したものが多い)

  • そのタイトルごとの「問い」が公開される

  • 具体的には、絵のタイトル「ダリ先生の絵画教室」とプロンプト→テーマ「亡くなった方の人格をAI再現」→問い「あなたは亡くなった人の人格をAIで再現したい?」の流れ

  • 関連する科学技術に関する説明が掲載されたカードを開いて、問いについて考え、互いに共有する

  • 最後は作業を逆転して、科学技術の話題を一つ選んでそれに関するプロンプトを作り、AIイラストを描いてみる

注意:「ダリのめ」で今回扱った人格再現AIの話題は、この次のセッション「Project CODE: Replica」と同じだったが、たまたま自分の参加チームが重複しただけ。「ダリのめ」には7つの異分野の話題があった。

「ダリ先生の絵画教室」に対応する科学技術カードは「情報通信技術」。

とても良かった点

シンプルに絵画作品(AIイラスト)が目で見て楽しめる。プロンプトにサイエンスの話題をいれていることが影響するのか、ファンタジーと現実性が交差しつつ、情報密度の高めの作品が多いのでじっくり見て楽しめました。

先端的な科学技術や社会の関りについて話そうとすると、「難しそう」と感じる人も少なくないわけですが、絵画鑑賞を入り口にすると取り組みやすそうです。

また「取り組みやすさ」だけなら、漫画や映像作品で科学技術を表現していく手段もあると思いますが、絵画鑑賞を入り口としたことによって、各人の想像力を広げながら「人によって感じ方が違う」という事実を大前提として置いた状態で対話を維持しやすい仕掛けになったと思います。

いろんな絵があって単純に楽しい。

個人的に、改善の余地があると感じた点

絵画鑑賞で発散的に出た感想から参加者間で「いいね」となった気づきでも、YesNoを突き付ける「問い」には活かせない感じがあった。

鑑賞が「見え方が人によって違う」の事実共有だけなら、時間を短くして、科学技術の議論時間を延ばしてもいいかも。あるいは、十分な下準備をすれば「問いを固定化せず、場の感想に応じて切り替える」という方法もあるかも? 大変そうですけど。

ほえー



Project CODE: Replica

読みは「プロジェクトコード:レプリカ」。ARGのような現実と物語を重ね合わせた形で進行する体験型の対話ゲーム。

会場に来る予定だったゲスト、茶ヶ原教授。

ゲームの進め方

  • 人間のデータに基づいて、その人が生きているかのように対話できる「人格再現AI技術」の第一人者・茶ヶ原教授による対話イベント(サイエンスカフェ?)として場が始まるが、次々と事件が起こって、参加者が巻き込まれるという形式の物語

  • 参加者がいるゲーム会場と、事件が起こっている現場の中継映像という形で物語が接続する。

  • 参加者たちは、中継映像を見る以外に、容疑者をさがす推理パートと、AIに関する議論パートをおおむね交互に、何度か繰り返して物語を進める。

教授のPC盗難から始まり、だんだん事態が深刻化していく。


とても良かった点

代替現実ゲーム(ARG)と呼ばれる「リアル脱出ゲーム」のような体験型コンテンツであり、とても目新しさを感じさせるものでした。

イベント現場にいる制作者、映像の中の制作者、いずれも全力で演技をしてくれていて、プロの舞台俳優ほどでないとしても「白々しさで冷める」といったことがなく没入感を楽しめたと思います。

また、会場で参加者たちが情報収集に使う仮想のサイトやブログも読み切れないくらい作りこんであり、「もっと見てみたいな」と思わせる演出になっていました。

こうした物語の進展に応じて、テーマとなっている人格再現AIのメリットやデメリットを具体的に提示し、議論を展開させる工夫がされていました。

物語上に関わるウェブサイトがさまざまな形で用意され、リンクされている。


個人的に、改善の余地があると感じた点

全体的に物語進行の時間が多いので、AIに関する議論パートの時間が短く、しっかり対話できるという感じではなかったかも。

また現代すでに使っているようなAIと、SF的な汎用AI(人格や意識を持ちうるAI)を演出上で区別・整理せず扱うのが気になりました。AIのような影響のデカい技術は、議論対象の解像度が荒いままだと「技術活用を恐れすぎ、軽んじすぎ」が両極端にふれやすいような気がしてしまい。

ほえー



全体として、とても楽しいイベントでした。Play&Learn2024では、同じSCOLA SIPの昨年の作品もあったので、蓄積している過去作品も今後、体験ができる機会があると嬉しいなーと思いました。

貴重な機会をありがとうございました。

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