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「鎧武」にみるキャラの行動原理 3years after

仮面ライダー鎧武 配信を再び追いかけて

東映公式YouTubeにて毎週配信の特撮シリーズ。「仮面ライダー鎧武」を再び視聴中です。

もう何度も見ているし、先の展開もほとんどわかっているのに、なぜかまた見てしまう。大好きな作品というのはそういうもので、みなさんにもそういった作品があるのではないでしょうか。

なぜまた見てしまうのか?

3年前、同じく「鎧武」の配信を見て感想を述べました。そのときに私はこんな一文を残していました。

私はかれこれ鎧武を5周ほどしてますが、毎回違った楽しみ方ができます。
それは、誰に感情移入して物語を追っていくか。

今回3年が経過し、この考え方を再解釈してみました。

つまり
誰に感情移入するかを選ぶ  のではなく
見るごとに誰かの気持ちがわかるようになっている
というのが正確なニュアンスに思えます。

第22話『7分の1の真実』

この回のラストシーンでは、葛葉紘汰がついに残酷な真実を知ってしまいます。チーム鎧武リーダー、角居裕也の消息です。
(初見のとき裕也の印象が薄く、裕也=鎧武のリーダーがあまり繋がっていなかった記憶があります。笑)

ここでその真実をつきつけるのは、我らが主任呉島貴虎の役割でした。しかし残酷な真実、として突きつけるには、どこか嬉しそうな態度。まるで悪役としての立ち回り、表情。

ここに違和感がありました。

単にシーンとしての見え方の問題?
なぜ笑う?
貴虎にとっての紘汰とは一体なんなのか?

その疑問が、今回の視聴で解消された気がしました。

同属意識とネガティブな期待

貴虎は前話にて紘汰に対し褒め言葉に近い評価を示し、絶望し逃げ出してくれれば自分のやっていることに諦めがつく、とさえ発しました。
つまり紘汰の人間性に僅かな希望の光を見出していたわけです。
「等身大の若者」を見て「等身大の大人」がほだされる。自然なことに思えます。

貴虎は紘汰に、理解者になってほしかったのかもしれない。

そんなふうに思いました。
ですが真の理解者とは、良い時も悪い時も、病める時も健やかなる時も、いわば苦楽をともにする必要があります。特にこういった、あまりに重大な局面においては、罪を一緒に背負ってくれる人間がなによりの理解者になるはずです。

本来であればそれは戦極凌馬の立ち位置でした。
ただ彼らの関係性は「ある時」を境に歪なものとなってしまいました。だからこそ、貴虎は孤独な戦士とならざるを得なくなってしまった。同じ気持ち、志を共有できる「仲間」を望んでいたのかもしれません。

そして葛葉紘汰なら「仲間」たりえる。

そんな期待を無意識に持っていたのかもしれません。
つまりそれは、同じ罪を背負って同じだけ信念をもった「仲間」=「共犯者」になってほしいというネガティブな期待であったのだと思います。

裕也の映像を見せた貴虎の心中

葛葉紘汰。
既にお前は犠牲によって救われている。
まだ気付いていないのか。

貴虎はあの日の裕也の顛末を紘汰に見せるわけですが、このとき貴虎は、それを見る紘汰の姿を観察しています。残酷な現実を突きつけられた紘汰が、いかにして絶望していくのか。

前話からわかる通り、貴虎は紘汰に絶望し、逃げ出してほしいと思っています。これはつまり、罪を背負いながらプロジェクトを進める主任としての責務が無ければ逃げ出してしまいたいという貴虎の心情の表れでもあります。

他者に絶望を与える人間

現実社会の話で考えます。
仕事において歴が長くなってくると、ある程度妥協する瞬間が誰しもにあると思います。
綺麗事だけではやっていけない瞬間というか、理想を捨てなければいけない瞬間というか。

例えばそこに夢いっぱいの新人が入ってきたとします。その仕事が大好きで、関われるだけで幸せです、妥協して理想を捨てるのはもったいないですと言ってきたとします。

ある人にとってそれは綺麗事で、なにもわかっていないのに綺麗事を並べる青臭い人間だと思うかもしれません。
またある人にとっては、初めは自分もそう思っていたけれど、いつしかその気持ちを忘れて、効率や会社全体の利益ばかり考えていたことに気付かされるかもしれません。

この夢いっぱいの新人こそが葛葉紘汰なのだと思います。眩しさゆえに目を背けたくなる存在。厳しい現実や絶望によって、理想だけでは生きていけないことを教えてやりたい。そうなって初めて「こちら側」の人間になる。そんな目線です。

そうなったとき、その新人にとって我々は
他者に絶望を与える大人として映ってしまうのかもしれません。

おわりに

長々と書きましたが、鎧武の配信はこれからさらに面白くなっていきます。特撮の媒体を使ったSF人間ドラマとしてはこれ以上ない作品だと思っています。

さまざまな角度から見て何度でも楽しめる、そんな作品だと思います。

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