スタートアップ関係者のためのおすすめ書籍(アニマルスピリッツ選)
過去10年の間に、スタートアップに関する書籍は爆発的に増加しました。ノウハウや経営論が広く共有される一方で、情報過多に悩む方も多いのではないでしょうか。「どの本を読むべきか」-その問いに答えるべく、アニマルスピリッツのメンバーでおすすめ本リストを作成しました。
今回は、私たちが厳選したスタートアップ関係者にきっと役立つ書籍をご紹介します。定番のバイブルから、セクター別の専門書、読み物としても楽しめる本まで、幅広くセレクトしています。あなたのスタートアップジャーニーを加速させる一冊が、きっと見つかるはずです。
なお、おすすめ書籍については今後も随時更新していきます。
ご関心のある方はアニマルスピリッツのコーポレートサイトをご確認ください。
起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと
定番ですが、資本政策は一度進めると巻き戻せないので、資金調達前に読んでおいた方が良い一冊です。事業計画や資本政策の作り方、企業価値の考え方、投資家との契約交渉、優先株式の仕組みまで、ベンチャーファイナンスのあらゆる側面がカバーされています。(荒木)
Zero to IPO 世界で最も成功した起業家・投資家からの1兆ドルアドバイス 創業から上場までを駆け抜ける知恵と戦略
本書の前書きを担当しました。スタートアップを立ち上げてから上場するまでの経営課題は日々刻々と変化していきます。「家族ブロック」の防ぎ方から上場ロードショーまで、ありとあらゆる課題を実践者ならではの視点でリアルに描いています。 周囲の人々に反対されながらもやり遂げることの大切さなど、軽視されがちな精神論の重要性も強調されています。他の起業家や投資家のコメントも付記されており、そのような先達のコミュニティに入り込んでアドバイスをもらう大切さも改めて感じられます。(朝倉)
ビジョナリー・カンパニーZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる
有名なシリーズ本ですが、本書は既存の会社ではなく、ゼロの段階から偉大な会社を作り上げるために気を付けるべきことを丁寧に説明しています。会社の原点となる考え方や方法論に焦点を当てており、実務的な内容となっています。(朝倉)
ZERO to ONE 君はゼロから何を生み出せるか
あまりにも有名な本なので取り上げる必要もないものの、非常に良い本なので敢えて挙げました。「競争するな。独占しろ」「誰も知らない隠れた真実を探せ」というピーター・ティールの教えは、常識に逆行しているようで、実は経済原則に極めて忠実であると思います。(荒木)
7 POWERS 最強企業を生む7つの戦略
スタートアップ関係者の間で日々語られる「MOAT」が何かについて説明した書籍。取り上げられる項目はありふれた「規模の経済」「スイッチングコスト」等であるものの、7種類にまとめられているのでフレームワークとして使い勝手が良い。競争の非対称性を活かした戦略を取るべき(所謂イノベーションのジレンマに近い)というのは逆張り的であり、またスタートアップらしくて個人的に好きです。できれば原著がお勧め。(荒木)
ネットワーク・エフェクト 事業とプロダクトに欠かせない強力で重要なフレームワーク
スタートアップ関係者の誰もが知るキーワード「ネットワーク効果」について、インスタグラム・リンクトインのような数多くの事例にも触れつつ、深く掘り下げた書籍。toC事業に閉じた話かと思いきや、toB事業にも様々な示唆があります。とにかく著者の洞察が深すぎて、ほとんどのページが付箋だらけになってしまいました。(荒木)
破天荒な経営者たち
優れたCEOを定量的に特定し、それぞれの個性的な経営者がどのような方法で会社の価値を高めてきたのかが書かれている。ここで描かれている破天荒な経営者たちは、「投資家の観点を持った経営者」の姿。上場企業の経営者になった知人にはたまにプレゼントしています。(朝倉)
地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる
定量感をもって気候変動の問題をロジカルに説明されていながら、投資家としてClimate tech領域をどうとらえているのかの視点もわかりやすく理解することができる、言わずと知れた名著です。(中山)
クライメートテック 新しい巨大経済圏のメカニズム
ビルゲイツの「地球の未来のために僕が決断したこと」をベースとしながら、スタートアップの具体例も多く紹介されているClimate tech領域の全体像を知れる実用的な一冊。(中山)
AI 2041 人工知能が変える20年後の未来
中国におけるAIの権威が、2041年までに人工知能が世界をどう変えるのかの未来予測をSF小説風に纏めた作品。ChatGPT登場以前に書かれた本なので少々古いものの、想像力を掻き立てられ、読み物として面白いです。(荒木)
半導体戦争――世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防
国際政治・世界経済の構造・軍事力のバランスを形作ってきたのは、半導体テクノロジーだったというノンフィクション小説。実務書ではないため活かせる実践的知識は皆無なものの、テクノロジーが如何に世界を変え得るかという視点で、読み物として面白いので挙げました。(荒木)
ファスト&スロー
行動経済学を切り拓いたノーベル経済学受賞者が、人間に内在される認知バイアスについて触れた本。バイアス自体は取り除けないため、読書による即効的な効能は無いものの、思考のクセに注意を払うことで意思決定の質を高めることができるので、日常的に判断が求められる経営者の方にとっては中長期的なROIが凄く高い書籍だと思います。(荒木)
シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント
スタートアップとエンジェル投資家をつなぐプラットフォーム「エンジェル・リスト」の創業者として知られるナヴァル・ラヴィカントの思想をまとめた一冊。私自身も大きな影響を受けていますが、「好き」すぎて広くこの本を知らせたくないと思ってしまうほどです。 本書は、実務書と思想書の2つの側面から楽しむことができます。実務書としては、資本主義社会で富を築くために、自分が働かなくてもお金を生み出し成長する仕組みの重要性やその作り方などが具体的に解説されており、読者にとって学びが多いでしょう。一方、思想書としては、ナヴァルが「シリコンバレーの僧侶」と呼ばれるほど達観した人物でありながら、仙人のように俗世から逃げることなく、資本主義の最前線で事業を営んでいる点に注目します。彼の言葉の端々にはフィロソフィーが感じられ、深い洞察を得ることができます。(朝倉)
HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか
スタートアップ経営者が直面する数々の困難(ハード・シングス)を追体験できる一冊。まるでノウハウ集のようにまとめられており、実際に事業に向き合って四苦八苦している人が読むと、身につまされると同時に励まされる内容となっています。著者自身の経験に基づいた生々しい描写は、リアリティに富んでおり、スタートアップ経営者にとって心強い味方となるでしょう。(朝倉)
一倉定の経営心得
35年以上にわたり5000社以上の企業を指導してきた経営コンサルタントが、社長だけを対象に執筆した経営のバイブルです。一見すると、昭和を感じさせる精神論・根性論が含まれているため、敬遠されそうな印象を受けますが、きれいに数式化したり言語化したりすることが難しい経営の本質がまとめられています。マッチョイズムが滲み出ているものの、経営者にとって示唆に富む内容となっています。(朝倉)
社長失格 ぼくの会社がつぶれた理由
エクイティ・ファイナンスが一般的となった現代では想像しづらい、90年代のドットコム・バブル全盛期の起業家の姿を描いた作品。当時の起業家の生き様が生々しく描かれており、時代を感じさせる貴重な一冊となっています。起業の面白い点も辛い点もリアリティ溢れて描かれており、今なお色あせない作品として読み継がれています。(朝倉)
追われ者 こうしてボクは上場企業社長の座を追い落とされた
本書は、当時史上最年少で上場を果たしたクレイフィッシュの元社長が、社長の座を追われるまでの顛末をまとめた作品。著者は、第三者割当増資で資金を調達することがどのような事態を招き得るのかという厳然たる現実を、自身の経験を通して詳細に解説しています。自らの経験を赤裸々に綴った内容は、起業家にとって貴重な教訓となるはずです。(朝倉)
ツイッター創業物語 金と権力、友情、そして裏切り
イーロン・マスクによる買収で大きな話題となったツイッター社の創業期から続く、社内の愛憎渦巻く内紛の歴史を描いた作品。起業家が直面するHard Thingsの中でも、特に創業者間の内紛は最も苦しい問題の一つと言えるでしょう。本書はそうした創業者間の対立を克明に記録したケーススタディとして、起業家にとって貴重な教訓を提供しています。権力闘争や裏切りなど、企業内部の複雑な人間関係が生々しく描かれており、読み応えのある一冊となっています。(朝倉)
リーダーシップの旅
ジョーゼフ・キャンベルの『千の顔をもつ英雄』を基に、リーダーシップの発展段階を旅に例えて説明した一冊。キャンベルの著作は、スティーブン・スピルバーグの「スター・ウォーズ」制作をはじめ、多くのクリエイターに影響を与えました。古今東西の英雄譚に共通する点は、主人公が最初から英雄であるわけではなく、旅に出て何かを成し遂げ、帰還した後に英雄となるという点です。 本書では、このHero's journeyの概念をリーダーシップに当てはめ、リーダーになるとはどういうことなのか、リーダーとマネジャーの違いは何かなどを平易に解説しています。(朝倉)
君主論
歴史上最も性格が悪い人物として知られるマキャベリが、徹底したリアリズムに基づいて著した政治論。超弱小国が、大国に囲まれた中で自国をいかに守り続けることができるかが、本書のテーマとなっています。 軍事とビジネスには違いがありますが、本書には弱者が強者に勝つための示唆が数多く含まれています。マキャベリは、君主がとるべき行動や心構えを具体的に説明しており、時には非情とも思える策略も辞さない現実主義的なアプローチを提唱しています。現代のビジネスにおいても、大企業に立ち向かうスタートアップや、困難な状況下で組織を導くリーダーにとって、本書から学ぶべき点は多いでしょう。(朝倉)
失敗の本質
日本軍はなぜ敗れたのか。ノモンハン事件、ミッドウェー海戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦の6つの失敗事例を対象に、戦略的・組織的要因を分析しています。本書で解説される「失敗の本質」は、スタートアップも含めた現代の日本企業にも未だに根深い問題として残っています。(朝倉)
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