ケンドー修介@失業東大生

東大を卒業して研究者の道に進むも、アカデミアの厳しい現実に直面して何度も失業の危機に。 今は科学技術界隈の世界に身を潜めつつ、いつの日か勤め人卒業を夢見て奮闘中。 noteで仕事やお金、家族のことなどに書いています。

ケンドー修介@失業東大生

東大を卒業して研究者の道に進むも、アカデミアの厳しい現実に直面して何度も失業の危機に。 今は科学技術界隈の世界に身を潜めつつ、いつの日か勤め人卒業を夢見て奮闘中。 noteで仕事やお金、家族のことなどに書いています。

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最近の記事

ワンルームマンション投資の真実:節税と資産形成の虚実

前回、ワンルームマンション投資という商品について紹介した。節税と将来の資産形成につながるというが、本当なのだろうか。今回はその続きだ。 さて、まずは節税からだが、私はこのロジックは何度聞いても理解できない。サラリーマンとして支払わなければならない税金は、基本的に所得税と住民税だ。個人として所得がある以上は、これらから逃れることはできない。ここに今、仮に別のビジネスを個人で営むことを考える。いわゆる副業というやつだ。ここで黒字が発生してしまうと、雑所得として課税対象になってし

    • 赤字商品なのになぜ売れる?不動産Gメン滝島に学ぶワンルーム投資の実態

      「不動産Gメン滝島」というYouTubeチャンネルがある。これがめっぽう面白い。 滝島氏は新宿で不動産会社を営む経営者であるが、その独特すぎる容貌からは想像できない、達者かつ熱量のある語り口でたちまち人気を博し、2024年2月時点のチャンネル登録者数は40万人に達しようとしている。個人が運営している不動産投資系YouTubeチャンネルとしては、ぶっちぎりの人数だ。 つい先日、息子の胃腸炎を移されて床に伏せていたときにたまたまこのチャンネルを見つけたのだが、あまりの話の面白

      • ポスドクのためのサバイバルガイド:転職からキャリア構築まで

        これまで6回にわたって、「ポスドク」と呼ばれる非正規の研究者が抱える諸問題について考察してきた。このうち、以下の記事は多くの方に読んでいただけたようであり、書き手としては嬉しい限りである。 一億総中流などと呼ばれた時代と違い、今の日本は明らかに階級化社会となっている。そんな中にあって、一流企業の正社員という一見すると特権階級からは程遠い人たちが、実のところ貴族的な身分であるという事実がある種の驚きをもって受け入れられたのだろうと思っている。ポスドク問題という日本社会における

        • 大学発スタートアップに寄生する大企業出身の「やんごとなきおじさん」という病巣

          「ポスドク」という職業がある。博士号(ドクター)を取得した「あと(=ポスト)」の身分なのでポストドクター、略してポスドク、と呼ばれる。要は非正規雇用の研究者を指す用語だ。 これまでの5回の記事において、私は東大卒業後にポスドクとしてスタートした自分のキャリアをもとに、ポスドクの民間企業への転職の実態を書いてきた。その中で、伝統的な日本企業の雇用慣習、具体的には貴族的とも言える「大企業の正社員」という特権階級との対比を通して、ポスドクのありうるキャリア戦略について述べた。具体

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        • これからの時代のキャリア戦略
          7本
        • 文章を書く、ということ。
          6本
        • 研究室を脱出せよ!〜ポスドク転職物語〜
          36本

        記事

          一目千両、1回1億円!?博士号というキャリアで失う人生のトータル収支

          今から30年ほど前のことになると思うが、「日本昔ばなし」というアニメでとても印象的なエピソードが放映されていた。かなり変わった話だったので、今でもよく覚えている。タイトルは「一目千両」という。あらすじはこんな感じだ。 どこかの街に、とても美人な女性がいるという噂があった。あまりの美しさに、その姿を見るためには千両必要だという。とある若者がその話を聞き、どうしても会いたくなっていても立ってもいられなくなった。そこで若者はせっせとお金を貯めて、ついには女性の姿を見ることができた

          一目千両、1回1億円!?博士号というキャリアで失う人生のトータル収支

          失ったプラチナチケット:ジョブ型雇用 vs. メンバーシップ型雇用が描くキャリアの分岐点

          大学であれ大学院であれ、教育を完了した若者は「新卒」という肩書を手に入れ、就職する。大手と呼ばれる日本の会社に就職できた場合、収入や福利厚生など極めて有利な条件のため、一生涯に渡って勤め上げることが多い。そうしてその会社のメンバーとしての地位を築き上げながらキャリアを形成していく働き方を、メンバーシップ型雇用と呼ぶ。 新卒入社は極めて有利な条件で就職できる可能性を秘めているので、「プラチナチケット」などと称されることもある。この貴重なチケットを手放してしまった場合、どんなこ

          失ったプラチナチケット:ジョブ型雇用 vs. メンバーシップ型雇用が描くキャリアの分岐点

          JTCエリートの素顔:メンバーシップ型雇用という異様なキャリア

          前回の記事の中で、とある大企業における内部監査室メンバーの働き方について紹介した。彼らはその業務パフォーマンスに不釣り合いなほどの待遇を受けており、貴族的というべき独特の雰囲気を醸し出していた。 あらかじめ断っておくと、ここで私は大企業の社員は総じて低スキルである、などということが言いたいのではない。むしろ私が知っている大企業の正社員は、みなとても優秀な人ばかりであった。性格も極めて温厚で人当たりも良い。前回のエピソードはむしろ、閑職とよばれるようなポジションであったとして

          JTCエリートの素顔:メンバーシップ型雇用という異様なキャリア

          日本社会に存在する「大企業の正社員」という貴族階級

          (前回)ポスドク問題を考える【2023年バージョン】 社会学者の小熊英二氏による「日本社会のしくみ」という本を読んだ。この本を知るきっかけとなったのが、イブリースさんの以下の記事である。 本書によれば日本社会を雇用という軸で見渡したとき、日本人は「大企業型」「地元型」「残余型」の三類系で整理できること、そして中でも「大企業型」に所属する構成員が経済的に大きなメリットを享受していること(一方で転勤や帰属意識の希薄化などのデメリットをかかえつつ)を、なんと明治時代の官僚制度か

          日本社会に存在する「大企業の正社員」という貴族階級

          ポスドク問題を考える【2023年バージョン】

          みなさんは「ポスドク問題」というものをご存知だろうか。 という文章から始まるブログを書いたのは、いまからおよそ10年ほど前のことである。 (このブログはその後、noteに掲載し直したので、以下のリンクから読むことができる) ポスドクというのは「ポスト・ドクター」の略で、この場合のドクターは医者ではなく、博士課程を修了して博士号を取得した人のことを指す。日本語では普通、「博士研究員」と呼ばれるこの博人たちの就職口が全くない、というのがいわゆるポスドク問題だ。 ポスドク問

          ポスドク問題を考える【2023年バージョン】

          受験参考書の思い出

          先日、久しぶりに銀座に行った。目抜き通りには高級ブランドショップが立ち並ぶが、目当てはバッグでも財布でもなく、楽譜、である。コロナ禍の際に思いつきで買ったギターを数年ぶりに取り出して弾いてみたところ、思いのほかのめり込んできたため、ちょっと本格的に練習してみようと思い立ったというわけだ。 銀座には楽器屋のヤマハ本店があるのだが、ここには楽器だけではなく結構な数の楽譜が置いてある、というのが、およそ20年ほど前に大学生だった頃の自分の記憶だ。当時は確か地下1Fに楽譜売り場があ

          それでも、文章を書く、ということ

          前回 ⇒ ブログ収益化における「営業モデル」と「作家モデル」の違い なんにしてもそうだが、継続して取り組む、ということは人間にとって最も難しいことの一つである。三日坊主、などという言葉もあるが、三日ももたずに飽きてしまうなんてことはザラにある。日記を書く、というのも三日坊主の代表選手みたいなものだろう。 ブログサービスというものが始まった2000年代初頭、誰に頼まれるわけでもなく日記のようにブログを書いていたが、それもごく初期の頃だけであって、いつのまにやら更新しなくなっ

          それでも、文章を書く、ということ

          ブログ収益化における「営業モデル」と「作家モデル」の違い

          前回 ⇒ 仮想通貨で狂い咲き。 何事も新しいもの好きの性格が幸いして、仮想通貨バブルが始まる直前に少しばかりのビットコインを手に入れることができた。といっても、数万円程度のものだからたかが知れている。どちらかというと、そのことを記事にしたブログが生み出したアフィリエイト収益のほうが大きくなった。こちらの方は結局、全部合わせると中古の軽自動車が買えるくらいの収益にはなった。安定しない職を転々としている身分としては大いに助かるものであったが、仮想通貨バブルが派手にはじけたおかげ

          ブログ収益化における「営業モデル」と「作家モデル」の違い

          仮想通貨で狂い咲き。

          前回の記事(アフィリエイト狂騒曲) アフィリエイトという副業は簡単に手が出せる一方で、売上を伸ばそうとなると途端に難しくなる。文章を書く能力さえあれば誰でも始められるから、参入障壁は極端に低い。それでいて売れる商材は限られているので、すさまじい競争が繰り広げられる。私はラッキーパンチでたまたま会計の資格というニッチな商材を見つけられたので毎月数万円くらいの売上を上げることができていた。しかしさらにその上を目指すとなると、何をやったら良いのか途方に暮れるばかりであった。そんな

          仮想通貨で狂い咲き。

          アフィリエイト狂騒曲

          前回の記事(文章を書く、ということ) いまから10年ほど前のことである。 当時、とある会計の資格の勉強をしており、それに首尾よく合格することができたため、そのときの体験を書いてブログにまとめることにした。そのときはブログサービスを使わず、自分でサーバーを借りたりと、それなりに色々と工夫して作り上げた記憶がある。 そうやって作ったホームページの問い合わせフォームにある日、広告会社から連絡が入った。内容はというと、私の取得した会計の資格を取るための専門学校の広告を載せてほし

          アフィリエイト狂騒曲

          文章を書く、ということ

          夏休みの宿題といえば読書感想文である。これは今も昔も変わらない。今も、と言いきれるのは、息子が持ち帰ってくる大量の夏休みの宿題の封筒の中に、読書感想文用の原稿用紙が入っていたのを見ているからだ。彼にとって生まれて初めての感想文は小学三年生の夏で、原稿用紙は三枚だった。今年小学四年生になる彼に与えられたのは四枚。どうやら学年ごとにノルマが上がるようだ。 多くの小学生のご多分にもれず、といってしまって良いかわからないが、息子は読書感想文を書くのが苦手だ。夏休みの後半まで手つかず

          文章を書く、ということ

          【あとがき】研究室を脱出せよ!〜ポスドク転職物語〜

          これでケンドーの転職活動物語はおしまいです。僕の場合、転職活動期間はケンドーよりも少しだけ長く、だいたい1年半くらいかかってしまいました。それでも、僕の辿った転職活動の道とケンドーの物語は、ほとんどが同じです。 この1年半のあいだ、僕は転職活動をしながら色々なことを学び、考えてきました。そのときに思いついたアイディアは、ケンドーや黒岩さんの言葉を通して物語の中で伝えてきました。それらの多くの問題については、いわゆるポスドク問題として、様々な場で意見が出されています。この物語

          【あとがき】研究室を脱出せよ!〜ポスドク転職物語〜