トヨタ自動車はホワイト企業か? 人的資本データから分析
はじめに
このレポートでは、誰もが知る大企業、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ自動車)が、本当に「ホワイト企業」なのかを、様々な角度から分析していきます。
良い面はもちろん、課題だと感じる部分も正直にお伝えすることで、転職を考えているあなたや、より良い会社にしたいと考えている経営者・人事担当者の方にとって役立つ情報をお届けできればと思っています。
ホワイト企業ってどんな会社?
厚生労働省が定める「ホワイト企業認定制度」の基準に加えて、今回は以下の6つのポイントも踏まえて、「ホワイト企業」を定義します。
健全な経営と優れたビジネスモデル:安定した経営基盤があり、将来性のあるビジネスモデルを持っていること。
高い給与水準:従業員の頑張りがしっかり給与に反映されていること。
ワーク・ライフ・バランス:仕事とプライベートの両立がしやすい環境であること。
人材育成:社員の成長をサポートする制度が充実していること。
ダイバーシティ&インクルージョン:多様な人材が活躍できる環境であること。
労働安全衛生:従業員の安全と健康が守られていること。
それでは、トヨタ自動車が上記のポイントをどれくらい満たしているのか、詳しく見ていきましょう。
トヨタ自動車の経営成績
まずは、トヨタ自動車の経営状態が安定しているのかどうか、2023年3月期の連結決算データで確認してみましょう。
売上高
売上高は37兆1,542億円(前年比18.4%増)と、なんと18%以上の増加。世界的な半導体不足や原材料価格の高騰などの影響で、利益は少し減ってしまったようですが、売上高は大きく伸びていますね。
(参考:トヨタ自動車株式会社 有価証券報告書 2023年3月期)
営業利益
営業利益は2兆7,250億円(前年比9.0%減)でした。
(参考:トヨタ自動車株式会社 有価証券報告書 2023年3月期)
純利益
純利益は2兆4,513億円(前年比14.0%減)でした。
(参考:トヨタ自動車株式会社 有価証券報告書 2023年3月期)
自己資本比率
自己資本比率は68.7%。これは、かなり高い数値です。このことから、トヨタ自動車は、盤石な財務基盤を持っていると言えます。
(参考:トヨタ自動車株式会社 有価証券報告書 2023年3月期)
従業員一人当たり売上高
従業員一人当たり売上高は約9,899万円。製造業としては、かなり高い水準ですね。 グローバル規模で事業を展開していること、そして高付加価値製品を多く販売していることが、この数字に表れていると言えるでしょう。
(参考:トヨタ自動車株式会社 有価証券報告書 2023年3月期)
トヨタ自動車の待遇や人事制度
トヨタ自動車で働く人の給与は、どれくらいなのか気になりますよね。
平均年収
平均年収は895万円(平均年齢43.7歳) でした。(参考:トヨタ自動車株式会社 有価証券報告書 2023年3月期)
これは、 メーカーとしては高収入ですが、商社や製薬会社やIT系企業と比較すると、若干見劣りする数字です。低い年収に不満を持って、転職する優秀層もそれなりにいると聞きますね。
賃金格差
男女間の賃金格差は28.80%。これは、日本企業の平均よりも低い水準で、残念な結果に。職種によって男女比に偏りがあるため、差が出ている可能性はあります。トヨタ自動車は「同一の仕事内容であれば、男女で賃金に差はない」と明言しているものの、今後も、より一層の格差解消に向けて取り組んでいく必要があるかと思います。
(参考:トヨタ自動車株式会社 有価証券報告書 2023年3月期)
人事評価制度
トヨタ自動車では、「職能資格制度」という制度を導入しています。能力や成果に応じて、等級や給与が決まる仕組みです。
(参考:トヨタ自動車株式会社 コーポレートサイト)
ただし、評価制度の詳しい内容については、あまり公表されていません。そのため、透明性が高いとは言えないかもしれません。近年、従業員エンゲージメント調査を導入したり、社員の意見を積極的に聞き取る場を設けるなど、社員の声を人事制度に反映しようと取り組んでいるようです。
トヨタ自動車のワーク・ライフ・バランス
月間平均残業時間
残念ながら、トヨタ自動車は正式なデータを開示していませんでした。参考地として、クチコミ転職サイトを見ると、28時間とありますが、この数字が開示されていないのは不安要素でもあります。正式な開示を待ちたいです。
有給休暇取得率
有給休暇取得率は80.6% 。これは、高い水準と言えるでしょう!
(参考:トヨタ自動車株式会社 有価証券報告書 2023年3月期)
育児休業取得率
女性は100%、男性は28.8%。女性の取得率は素晴らしいですね! 男性の取得率は、まだまだ低いのが現状です。小学校卒業まで、育児のために勤務時間を短縮できる制度もあるようです。
(参考:トヨタ自動車株式会社 有価証券報告書 2023年3月期)(参考:トヨタ自動車株式会社 コーポレートサイト)
リモートワーク
一部の職種では、導入されているようです。
(参考:口コミ転職サイト)
トヨタ自動車の研修制度
トヨタ自動車では、社員の成長をサポートする様々な研修制度が用意されています。
研修制度の内容
階層別、目的別に様々な研修プログラムが用意されています。グローバル共通の教育機関として「TEL UNIVERSITY」も設置されており、社員の自主的な学習を支援しています。
(参考:トヨタ自動車株式会社 コーポレートサイト)
一人あたりの研修費用
研修費用は一人当たり約3万円。大企業としては、少し少ない印象を受けますが、近年は、「LinkedIn Learning」などのオンライン研修も充実させており、社員一人ひとりの学びやすさを重視した内容になっているようです。
(参考:トヨタ自動車株式会社 コーポレートサイト)
自己啓発支援制度
業務に関係する資格取得や語学学習の費用を補助する制度もあります。
(参考:トヨタ自動車株式会社 コーポレートサイト)
トヨタ自動車のダイバーシティ
トヨタ自動車は、ダイバーシティにも積極的に取り組んでいるのでしょうか?
女性管理職比率
女性管理職比率は、2.7%と、低い水準です。
(参考:トヨタ自動車株式会社 有価証券報告書 2023年3月期)
目標として、2027年3月期までに5%にすることを掲げています。女性管理職の育成研修や、女性のキャリアをサポートするメンター制度などを導入して、女性の活躍を推進しようとしています。
(参考:トヨタ自動車株式会社 有価証券報告書 2023年3月期)(参考:トヨタ自動車株式会社 コーポレートサイト)
外国人従業員比率
残念ながら、トヨタ自動車はデータを開示していません。
障害者雇用率
障害者雇用率は2.43%と、法定雇用率(2.3%)を上回っています。
(参考:トヨタ自動車株式会社 コーポレートサイト)
トヨタ自動車の労災件数および健康診断受診率
トヨタ自動車の労働環境は、安全で健康に配慮されているのでしょうか?
労働災害発生件数
休業災害3件(そのうち通勤災害3件)、死亡災害0件と、非常に少ない件数です。
(参考:トヨタ自動車株式会社 有価証券報告書 2023年3月期)
健康診断受診率
健康診断の再検査の受診率は100%です。社員の健康管理を徹底していることが分かります。
(参考:トヨタ自動車株式会社 有価証券報告書 2023年3月期)
トヨタ自動車の採用状況
新卒だけでなく、キャリア採用にも積極的だと、会社が「多様な人材を求めている」という姿勢が見えて、良い印象を受けますよね。トヨタ自動車は、どうでしょうか?
新卒採用
2022年度で1,104名が採用されています。これは技能職と呼ばれる専門学校卒からの入社や医務職も含んだ人数です。いわゆる4大卒で入社した人数は転職サイトによると、432名とのことでした。かなり多い人数です。
(参考:トヨタ自動車株式会社 コーポレートサイト)
キャリア採用・中途採用比率
中途採用比率は43.4%でした。これは、高い水準と言え、積極的に中途採用を行っていることが分かります。この数字から逆算すると、キャリア採用は、約330名と推測できます。
(参考:トヨタ自動車株式会社 コーポレートサイト)
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まとめ:トヨタ自動車はホワイト企業?
ここまで見てきたように、トヨタ自動車は、
世界トップクラスの平均年収
高い有給休暇取得率
充実した研修制度
など、ホワイト企業と言えるポイントを多く持っています。
一方で、
月間平均残業時間や男性の育児休業取得率は非公開
女性管理職比率の低さ
人事評価制度の透明性の低さ
などは、改善の余地があると言えるでしょう。
総合的に見ると、トヨタ自動車はホワイト企業と言えるでしょう。
しかし、まだ昭和時代の風土を色濃く残していることが数字から読み取れ、る点は気になるところです。
トヨタ自動車のホワイト企業分析は以上になります。参考になりましたら、スキ・コメント・フォローをお願いします!
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