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ホワイト大企業に転職したければ有価証券報告書を読みなさい
ホワイト企業を見つける意外な方法
企業への転職を考える上で、「その会社がホワイト企業か?」を見極めることが重要です。しかし、インターネットやSNSには嘘か真か分からない情報が溢れ、企業の本当の姿を知るのは簡単ではありません。
そこで私がオススメしたいのが、有価証券報告書を見ることです。
近年、人的資本に関するデータ開示の「法的要請」が高まっています。というか、大企業の人事部門にいると、分かるのですが、「マストで公開」という空気感です。
そのため、転職を検討している人にも有益な情報の宝庫となっています。
以下に有価証券報告書がなぜオススメなのか?有価証券報告書の中で転職する人がチェックすべきポイントなどを解説しますので、転職検討している方や自分の企業のホワイト度をチェックしたい方はぜひ読み進めてください。
人的資本開示の流れ
2023年3月、金融庁は「記述情報の開示に関する原則」を改訂し、有価証券報告書における人的資本に関する開示の充実を求めました。
この改訂により、企業は人材の確保・育成・活躍促進、多様性の確保、従業員エンゲージメント、人的資本への投資、職場環境の整備などについて、より詳細な情報開示が求められるようになりました。
この動きは、投資家だけでなく、就職・転職を考える人々にとっても、企業の実態を知る上で貴重な情報源となっています。
なぜ有価証券報告書なのか
客観的な情報源だから
有価証券報告書は、法的に正確性や客観性が求められる文書です。ウソを書くと、投資家をだましたことになるので、事実しか書けません。企業のPR資料や採用サイトにある社員紹介なんかは好き放題書けますので、有価証券報告書を読むのは有益です。
情報が定期的に更新されるから
毎年更新されるため、企業の最新の状況を把握することができます。
企業同士を比較しやすいから
同じフォーマットで作成されるため、企業間の比較が容易です。
人的資本情報の充実
先程も触れた法改正により、人材に関する詳細な情報が含まれるようになりました。
有価証券報告書で確認すべきポイント
キャリア採用(中途採用)への姿勢
有価証券報告書を開いて「Ctrl+F」で「キャリア採用」を検索してみてください。(ヒットしない場合は「採用」だけで見てみてください)
ヒットする企業は、中途採用の本気度が高いです。
また、大企業はキャリア採用の人数や新卒入社数との比較などを詳細に公開していたりしますので、そのあたりの数字をチェックすると、企業のキャリア採用本気度がわかります。
女性管理職比率
ダイバーシティ推進の指標として、女性管理職比率は重要です。この数字が高い、または年々上昇している企業は、多様性を尊重し、公平な評価・登用を行っており、イコール働きやすい可能性が高いです。
離職率
一部の企業では自主的に離職率を開示しています。開示しているということは、離職率に自信を持っている、もしくは、人的資本開示に積極的で、ちゃんとした会社になろうと経営層が本気のケースが多いですので、ホワイト度が高いと言えます。
逆にこの数字を公開できない会社というのは、ぶっちゃけ都合が悪いからだったりします。なので、注意しながら、他の指標も確認することをオススメします。
教育投資
従業員一人当たりの教育投資額が記載されている場合があります。この金額が業界平均より高ければ、研修や人材育成に力を入れている証拠です。
働き方改革への取り組み
有給休暇取得率や残業時間も、「ホワイト企業度」を知る重要な指標です。具体的な数値目標を掲げている企業もありますから、その数字を追っていくと目標が本当に達成されているのか、絵に描いた餅なのか、も知ることができます。
ケーススタディ~三井物産のホワイト度分析~
それでは実際に公開されている有価証券報告書の情報をもとに、企業のホワイト度を分析してみましょう。
今回は、就活ランキングでも常に上位で、高い年収でも知られている三井物産を取り上げてみました。
情報源について
情報ソースはこちらの有価証券報告書に加え、企業サイトにも人事データを詳細に公開していたので、参考にしました。
名だたる大企業はこのような数字を公開している場合も多いので、合わせてチェックしてみると、より解像度が上がります。
分析における生成AI活用について
今回の分析では、生成AIに有価証券報告書を突っ込み、分析を手伝ってもらいました。便利な時代ですね。生成AIの分析に、私の現場での実感値やその他公開データを加えて、ケーススタディとしています。
※もし企業のホワイト度を診断する生成AI用プロンプトに興味がある方はスキとコメントをお願いします。ニーズが高ければ、公開したいと思います。
三井物産ホワイト度 総評
三井物産は、総合商社としてグローバルに事業を展開しており、財務状況は非常に安定しています。人的資本開示にも積極的で、多様な人材の育成・活躍推進、働き方改革、コンプライアンス等に力を入れていることが読み取れます。総合的に見て、ホワイト企業度が高いと言えるでしょう。特に、人的資本投資、ダイバーシティ推進、働き方改革への取り組みは高く評価できます。
キャリア採用への姿勢
報告書にはキャリア採用の記述があり、新卒採用とキャリア採用の比較も行われています。2023年3月期の新卒採用者数は124名であるのに対し、キャリア採用者数は85名と、中途採用にも積極的な姿勢が伺えます。また、キャリア入社比率は12.0%と、前年から増加傾向にあります。これらの数字は、三井物産が即戦力人材の確保にも力を入れていることを示唆しており、多様な人材登用の観点からもポジティブな要素と言えるでしょう。
人的資本に関する記載
報告書には人的資本に関する詳細な記載があり、以下のような項目が挙げられています。
多様な「個」の集団: 多様な人材がグローバルに活躍できる環境整備やエンゲージメントの向上に努めている。
強い「個」の育成: 大規模・複雑化する事業をリードする人材の持続的な育成や社員の成長・リスキリングへの支援、スキルマネジメント・グローバルキャリア開発等を実施。
戦略的適材配置: DXによる定型業務の徹底的な効率化や高付加価値業務へのワークロードシフト、1人あたり事業資産規模の拡大等を行っている。
「個」という言葉が資料には多く並びます。三井グループの特色を表す言葉として「人の三井」というものがありますが、人の成長が事業の成長につながるというカルチャーが見て取れますね。
資料を読んでいくと、三井物産が人材を「資本」と捉え、育成や働きがいのある環境づくりに注力していることを示しており、ホワイト企業としての評価できるポイントです。
女性管理職比率
2023年3月31日現在の単体の女性管理職比率は8.5%でした。目標の10%には達していませんが、前年から向上しています。また、2025年3月末までに10%、2031年3月末までに20%の目標を掲げており、継続的な改善を目指している姿勢が伺えます。これからの推移にも要注目です。
離職率
単体の離職率は4.22%で、男性3.97%、女性4.82%となっています。前年比では減少しており、働きやすい環境が整いつつある可能性を示唆しています。また、この数字を自主的に開示している点は、人的資本開示に積極的であることの表れであり、ホワイト企業度を高める要素です。
教育投資
2023年3月期の単体従業員1人当たりの年間平均研修時間は21.0時間、年間平均研修日数は2.9日となっています。また、人材開発・研修の総費用は114億円と、人材育成に積極的に投資している姿勢が確認できます。
働き方改革への取り組み
平均年間有給休暇取得日数: 単体で13.6日と、前年から増加しています。目標値の70%弱に留まっているものの、高い水準を維持しています。
月間平均残業時間: 単体で28.0時間と、前年から増加しているものの、まあ許容範囲内といった印象です。
育児・介護関連制度: 充実した育児・介護関連制度を設けており、育児休業、看護休暇、時短勤務等の利用者数は増加傾向にあります。これらの制度の充実度は、ワークライフバランスの改善に大きく貢献していると考えられます。
結論
三井物産は、人的資本投資や働き方改革に積極的に取り組んでおり、財務基盤も強固であることから、ホワイト企業としての要素を多く備えています。今後、更なる残業時間の削減やリスク管理の強化といった課題解決に取り組むことで、より一層魅力的な企業となることが期待されます。
上級者向け:さらに企業研究を進めたい方の補完的アプローチ
有価証券報告書だけで企業のホワイト度はだいぶ見えるのですが、上級者向けにさらなる補完的なアプローチをご紹介します。
数値の背景を考える
単に数値が高いだけでなく、その背景にある企業の方針や取り組みにも注目しましょう。実際、悪い数字の部分に対して、対応する施策を明記している企業は信頼が置けます。
経年変化を見る
単年度の数値だけでなく、過去数年の変化を確認することで、労働環境が改善しているのか、放置されているのか、企業の本気度がわかります。
業界平均との比較
同業他社と比較することで、その企業の相対的な位置づけがわかります。三井物産の場合は、他の総合商社と比較するということですね。
他の情報源との照合
企業のウェブサイト、ニュースリリース、SNSなど、他の情報源と照らし合わせることで、より立体的な理解ができます。ケーススタディでは、三井物産の人事データを参考にしています。
実際の社員の声を聞く
口コミサイトや知人を通じて、実際に働いている人の声を聞くことも重要です。ちなみに、キャリア採用の際は、選考途中に、現場の社員へのインタビューを希望すれば、対応してくれるケースもあります。人事部も欲しい候補者の場合は、かなり丁寧に接してくれるはずです。(実際、私もそのコーディネートをしたことがあります)
まとめ
本記事では、ホワイト企業を見極めるのに、有価証券報告書は、ホワイト企業を見つけるための強力なツールの一つであることを解説してきました。
特に、人的資本に関する情報開示の充実により、その価値は一層高まっています。この公式文書を読み解くことで、企業の本質的な姿勢や取り組みを知ることができます。
ただし、最終的な判断は、実際に企業と接触し、自分の目と耳で確かめることが大切です。その際にも有価証券報告書を読み込んでいると、その企業の人事側も「ウチのこと本気で考えてくれているんだな」と好印象です。
また、ホワイト企業のキャリア採用がここ数年一気に増えている背景について知りたい方はこちらの記事も合わせてお読みください。
ホワイト大企業への転職を目指す皆さん、ぜひ有価証券報告書を活用して、自分に最適な職場を見つけてください。そしてもし、この記事が役に立って、ホワイト企業への転職に成功したら、ぜひ教えてください。ぜひお話をお伺いしたいですし、リモートでもいいので、乾杯しましょう(笑)。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。読者の皆さまのスキ・コメントが励みになります。よろしくお願いいたします!
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