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大和証券グループはホワイト企業か?人的資本データから分析

はじめに

本レポートでは、株式会社大和証券グループ本社を「ホワイト企業」として多角的に評価します。

単なる賞賛レポートではなく、問題点があれば指摘し、転職検討者や人的資本データを重視する経営者・人事部門にとって有益な情報を提供することを目的とします。

「ホワイト企業」の定義は、厚生労働省の「ホワイト企業認定制度」の評価基準と、以下の項目を満たす企業とします。

  • 健全な経営と優れたビジネスモデル

  • ワーク・ライフ・バランス

  • 人材育成

  • ダイバーシティ&インクルージョン

  • 労働安全衛生

  • 高い平均年収

これらの項目について、大和証券グループ本社の直近の有価証券報告書、企業コーポレートサイト、厚生労働省「ホワイト企業認定制度」の公示情報、口コミ転職サイトなどを参考に分析し、総合的に評価します。

経営成績

大和証券グループ本社は、2023年3月期の連結決算で、営業収益1兆2,774億円、経常利益1,745億円、純利益1,215億円と、いずれも過去最高益を更新しました。(有価証券報告書内「連結損益計算書」に記載)

自己資本比率は21.58%と、安定した財務基盤を維持しています。(有価証券報告書内「連結貸借対照表」に記載)

従業員一人当たり売上高は約8,600万円と、非常に高い水準です。(筆者算出)

評価

大和証券グループ本社は、健全な経営基盤と高い収益力を誇る企業と言えます。

証券業界は市況の影響を受けやすいですが、大和証券グループ本社は、リテール、ホールセール、アセットマネジメント、投資といった多角的な事業ポートフォリオを構築することで、収益の安定化を図っています。

また、デジタル化や業務効率化にも積極的に取り組んでおり、今後も安定的な成長が期待できます。

待遇面

大和証券グループ本社の平均年収は1,270万円(2023年3月期、筆者算出)で、金融業界の中でも高い水準です。

男女間賃金格差は65.1%と、全労働者では差が見られますが、これは2009年度まで基幹職と事務職を分けたコース別採用を行っていた名残で、事務職に就く女性の割合が高かったことが要因です。

近年ではコース別採用を廃止し、男女問わず総合職採用を基本としているため、今後この差は縮小していくと予想されます。
(有価証券報告書内「男女の賃金の差異」に記載)

新卒入社社員とキャリア入社社員を合わせた全社員における男女間賃金格差は65.1%で、管理職に限定すると91.2%にまで上昇しています。
(有価証券報告書「男女の賃金の差異」に記載)

大和証券グループ本社では、社員の能力や成果に応じた評価を行うため、等級制度と成果主義を組み合わせた人事評価制度を導入しています。(有価証券報告書内「2-2-4 社内環境整備方針」に記載)

評価

大和証券グループ本社は、平均収入が高い高待遇企業と言えます。

男女間賃金格差は依然として大きいものの、その要因は過去の採用制度の名残であり、今後改善していく可能性が高い点は評価できます。

人事評価制度は、実力主義を重視した透明性の高いものとなっており、社員のモチベーション向上にも繋がっていると考えられます。

ワーク・ライフ・バランス

大和証券グループ本社の平均年間労働時間は1,830時間、月平均所定外労働時間は21.6時間でした。全国平均よりも低く、ホワイト度は高いです。

有給休暇取得率は70%、男性の育児休業取得率は97.5%と、いずれも高い水準です。(有価証券報告書内「3【事業の内容】1【主要な経営指標等の推移】(1)連結経営指標等」、「(2)提出会社の経営指標等」、「5【従業員の状況】(1)連結会社の状況」に記載)

大和証券グループ本社は、社員のワーク・ライフ・バランス向上に向けて、さまざまな取り組みを行っています。

具体的には、フレックスタイム制やリモートワーク制度の導入、育児・介護休暇制度の充実などが挙げられます。
(有価証券報告書内「2-2-4. 社内環境整備方針」に記載)

離職率は5.1%と低い水準で推移していますね。(有価証券報告書内「1【主要な経営指標等の推移】(1)連結経営指標等」に記載)

評価

大和証券グループ本社は、ワーク・ライフ・バランスの充実度が高い企業と言えるでしょう。

特に男性の育児休業取得率の高さは、男性社員も育児に積極的に参加できる企業文化が根付いていることを示しています。
離職率の低さからも、社員の定着率が高いことが伺えます。

人材育成

大和証券グループ本社は、社員一人ひとりの成長を支援するため、階層別研修、職種別研修、テーマ別研修など、豊富な研修プログラムを用意しています。
また、自己啓発支援制度として、資格取得支援や通信教育講座の受講補助なども行っています。
(有価証券報告書内「2-2-3 人材育成方針」に記載)
教育投資にかける費用は、連結ベースで年間約21.8億円、従業員一人当たり約17万円と、積極的な投資を行っています。(有価証券報告書内「教育投資にかかわる費用」に記載)

評価

大和証券グループ本社は、人材育成に力を入れている企業と言えます。
豊富な研修プログラムに加え、自己啓発支援制度も充実しており、社員がスキルアップできる環境が整っています。
教育投資にかける費用も大きく、社員の成長を積極的に支援する姿勢が見て取れます。

多様性(ダイバーシティ)

大和証券グループ本社は、女性活躍推進を重要課題と位置付けており、女性の管理職比率向上や、女性が働きやすい職場環境づくりに取り組んでいます。
2023年3月末時点の女性管理職比率は、大和証券単体で19.9%、連結ベースで16.9%となっています。
(有価証券報告書内「(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載)
キャリア採用にも積極的に取り組んでおり、2023年3月期のキャリア採用比率は27.8%と高い水準です。
(有価証券報告書内「(2)提出会社の経営指標等」に記載)

評価

大和証券グループ本社は、ダイバーシティ推進に積極的に取り組んでいる企業と言えるでしょう。
女性の管理職比率は、金融業界の平均と比較して高い水準にあります。
キャリア採用にも積極的であることから、多様な人材が活躍できる企業を目指していると考えられます。

労働安全衛生

大和証券グループ本社は、社員が安心して働ける職場環境づくりを目指し、労働安全衛生に関する法令を遵守し、安全衛生管理体制を整備しています。
労働災害発生件数は非開示ですが、健康経営にも積極的に取り組んでおり、社員の健康保持・増進に努めています。
(有価証券報告書内「2-2-4. 社内環境整備方針」に記載)

評価

大和証券グループ本社は、労働安全衛生に配慮していると考えられます。
健康経営にも積極的に取り組んでいることから、社員の健康を重視した企業文化が根付いていると推察されます。

採用

大和証券グループ本社は、新卒採用とキャリア採用を積極的に行っています。
新卒採用では、総合職採用を基本としており、2023年4月入社の社員は288名でした。
キャリア採用も積極的に行っており、2023年3月期には154名を採用しています。
(有価証券報告書内「(2)提出会社の経営指標等」に記載)

評価

キャリア採用比率は27.8%と高い水準で、多様な人材を獲得しようとする意欲が伺えます。

金融業界は、伝統的に新卒採用を重視する傾向が強い業界ですが、大和証券グループ本社は、キャリア採用にも積極的に取り組むことで、多様な人材を獲得し、組織の活性化を図っていると考えられます。

総合評価

大和証券グループ本社は、高収入、充実したワーク・ライフ・バランス、充実した人材育成制度など、多くの魅力を持つ企業です。

一方で、男女間賃金格差や労働災害発生件数などのデータは非開示であり、より詳細な情報開示が求められます。

総合的に判断すると、大和証券グループ本社は、「ホワイト企業」と呼ぶにふさわしい企業と言えるでしょう。

今後、さらなる情報開示の充実化、ダイバーシティ&インクルージョン推進、労働安全衛生への取り組み強化などに取り組むことで、より魅力的な企業へと成長していくことが期待されます。

大和証券グループ本社のホワイト企業分析は以上になります。参考になりましたら、スキ・コメント・フォローをお願いします!

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