サラリーマンの感覚イノベーション
6月まで15年間、
製薬業界のマシン・サラリーマン(社畜)でした。
患者情報や薬剤情報などを扱うため、
紛失・盗難などのリスクを鑑みて、
PCの社外持ち出しは絶対禁止。
書類の持ち出しも禁止。
報告されて来た患者や薬剤情報のデータベースへの入力は、
情報漏洩の観点からWi-Fiは原則禁止、有線使用推奨。
「お分かりのように、この部署でリモートワークはもちろん、
フリーデスクすら不可能です。」
と相当昔から言われてきた部署です。
他部署でオリンピック開催に先駆けて、
リモートワーク導入がどんどん進んでいても、
自分たちはそういう特殊な部署で働いているからしょうがない、
と諦めて、いかに有事でも出社するかという対策に重きを置いてきたわけです。
なんなら「有事にでも出社する使命感」みたいなものもあった気がします。
いわゆるイノベーションの敵となるダメ使命感ですね。
このように絶対にリモートワークなど不可能と言われていた仕事、
蓋を開けてみれば、
一番遅くなったチームでも4月の第2週目から全員リモートワークになり、
部署300人程度が全てリモートワーク可の状態に。
VPNなどの仮想環境を利用して、
在宅不可能の大きな原因とされていた個人情報保護対策もクリア、
クライアントのデータベースにも接続可能で入力作業もクリア。
印刷は禁止にすることで、情報漏洩についてもクリア。
普段からPCリテラシーがそこまで低い人がいないということも、
リモートワーク移行成功の一因だったと思います。
結局、6月末まで原則全員リモートワークで乗り切りました。
けれど、完全に成功だったとは、
残念ながら言えないのじゃないかと思うのです。
リモートワーク自体は成功したけど、
リモートワークについてイノベーションは起きなかった。
例えば、仕事の進め方については完全に出社ありきの考え方で、
いかに出社時と同じことができるかを考え、
出社時よりも3倍も時間がかかる手順を導入して、
出社時と同様のクオリティを死守しました。
クオリティを下げてもリモートワークに合った基準にしたい、
とはクライアントに提案しにくいですし。
結果、コロナの影響で仕事量は減ってるのに、
残業は減らないという事態になったのです。
私は面倒くさがりの大雑把な性格なので、
出社時の仕事すらオーバークオリティだと思ってしまいます。
ポイントさえ押さえれば、多少の齟齬は構わないと思うのですが、
ちょっとそれは言ったら滅せられてしまう・・・。
(正し、外資系のクライアントは結構積極的にクオリティーよりポイント重視になりました。)
とにかく、出社できるようになるまで乗り切るための方法を考えよう、
という脳の使い方をしてしまったわけです。
リモートワーク、やっぱり良いです。
業界全体で見ても、仕事柄、都内にしか置かない部署なので
神奈川、千葉、埼玉から通ってきている社員は、
通勤の苦行がなくなっただけ、心身の健康を取り戻せた人もいます。
女性が9割の職場のため、家庭との両立もしやすくなるかも!
という期待もありました。
けれど、「3倍手順」導入の結局、残業が減らなかったので、
家のことはこれまで通り出来ないという結果に。
今回、リモートワーク騒動を通過してみて思うのは、
リモートワークを実行する・しない以前に、
仕事に関する感覚のイノベーションが必要なんじゃないかということです。
感覚のインストールの直しが。
例えば、リモートワークが可能だと分かった時点で、
『これからの世界リモートワークありきだ!
新しいやり方を生み出せないか考えてみよう!
新しい世界が見られるかもしれない、楽しそう!
通勤のない働き方が出来るチャンスが来た!』
こういう感覚の使い方が出来たなら、
日本のサラリーマン、世界最強になると確信しています。
新しい「サラリーマン社会」を生み出していく感覚そのものが、
世界に誇れるものになるはず。
これは楽しそう!
想像するとニヤニヤ出来る。
こういう感覚をインストールすることが、
もしかしたら一番難しいことかもしれないわけですが、
難しいとか言ってないで、
・オーバークオリティに固執せず(保てるならそれが一番いいですが)、
新しい基準を生み出すことを楽しむ
・下請けやアウトソーシングという言葉をなくして、
その業務の0~完了まで関わる人・会社をワンチームと考え、
イノベーションを起こしやすくする
こういう感覚をインストールし直して、
サラリーマン社会を楽しい環境にしたい。
物理的に画期的な技術やツールを導入することと一緒に、
感覚のイノベーションも起こしていかないといけないんだな、
と思った次第です。
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