叱ってもらいたい大人たちよ、富野監督に訊け!(とっておきの一書・一節④)
「富野に訊け!」(富野由悠季・著)
「おとなってかわいそうだね。しかってくれる人がいないんだもの」
ドラえもんが、かつて、そんなことを言ってた。
そんなさびしい、現代のおとなたちよ。
叱ってもらいたいなら、これだっ!
(って、かなりジャンルが限られてますが・・・汗)
そう、ガンダムでお馴染みの、富野監督です。
・・・いや、語り口調は、ホントにこうなの。
現実は甘くないぞ、地に足をつけろ!!
アニメばっかり見てるな、体を動かせ!!
ガンダム1本、たまたま当たってくれたから、のたれ死ななかっただけ。
そんな無能な私くらい越えられなければ、アニメでなんぞ食えんぞ!!
・・・とまあ、そういう風なセリフの箇所は無いのですが。
でも、おおむね、ハズレてないはずですよ。
そう言うこと。
大人への「喝!!」を、家庭でも学校でも入れてもらえなくなっちゃった現代。
この方は、バンバン入れまくっちゃいます。
・・・ただね、本書。
再販というか再編集版なんだろうけど。
気のせいか、ちょっとマイルドになっちゃったかな、って感じ。
初版の方が、もっととんがってた・・・気がする。笑
回によっては、けちょんけちょんに叩きのめしてたから。
一応、参考までにですが、初版の方もリンクを。
ただ、紙の本ですけどね。電子版は無し。
プレミア価格になってますね。
今回の、言いたいことは、ここで終わりです。
以下、蛇足です。飛ばしていただいて結構です。
2024.11.18
さてさて、ここからは蛇足の巻。
・・・でもねえ、改めて思うことがある。
前々回の安藤忠雄さんも、同じこと感じたんだけど。
「本当の事」、「耳の痛いこと」を、我が身をかえりみず、ありのままに語ってもらえるというのは、幸せなことなんだ。
ってことだ。
本当のことを語ろうとするとね、
傷つくんだよ、語った自分が。
おとな相手でも。こども相手でも。
目先の損得だけ考えるんだったら、黙ってた方がいいんだ。
まさに「沈黙は金」なんだ。
でもね。
富野さんとか、宮崎駿さんは、そんなこと、十分にわかってるんだよ。
あれだけの知性の持ち主なんだから。
わかってて、あえて語ってるんだよ。この人たち。
その優しさというかな。
肚の座り具合というか。覚悟というか。
そういうのが、わかってくる。
この人たちの、話を聞いてるうちにね。
人間として慈悲深い人はね、正直に言っちゃうんだよ。
ホントのことを。時に、残酷なまでに。
やはりそれは、自分一人のことだけじゃないんだろうな。
公憤と私憤の違いというのかな。
そこに、人としてのスケールの大きさを感じるんだ。
繰り返しになっちゃうけど、もう一回言うよ。
甘い言葉が、優しさじゃないんだよ。
どんなに耳の痛い言葉だって、自分が傷ついたって。
ホントのことを、利害損得抜きで、若い人に伝える。
そういうのが、真正の優しさなんじゃないかな。
宮崎駿さんも「若い人間たちに何人も引導渡してきた」って、時々語るけど。
残酷なことのようだけど、実は、優しいからできることなんだよね。
アニメなんて芸事で、メシが簡単に食えるほど、現実は甘くないんだから。
生半可な才能で生き残れるほど、甘い世界じゃない。
それを知り尽くしてるんだよ。
じゃなけりゃ、言えないよ、人になんて。
人の人生に、そこまでしゃしゃり出るなんて。
責任なんて持てないし、持つ必要もないんだからね。
その場かぎりの思いつきや、薄っぺらな覚悟で、出来ることじゃない。
どんな目上だろうと、社会的地位があろうと、ね。
きょうび、コンプライアンスだ、プライバシーだって。
もちろん、人間個人のそれはそれで尊重するとして、だ。
ただね、他人行儀が、あまりに重なりすぎちゃうと。
若い人たちや未経験者は、どうしていいか分からない。
どっちに向かっていけばわからない。
だから途方に暮れてるんでしょ、みんな。
生暖かい言葉で人をやんわり見放すって、実は簡単に出来ちゃうんだ。
だって、その方がリスクないから。
富野監督について、惜しむらくは。
世にでる時代が早すぎる。
あまりに早く、時代を先読みしすぎてしまっている。
作品のクオリティの高さに関わらず、それに見合った評価がついてこない。
時代のほうが、彼についていけてない。
事実、彼の作品はリリース後、何十年も経ってから評価されたりする。
「閃光のハサウェイ」なんか、その最たる例だよ。
あまりに見事に、今やこれからの日本を、世界を、予測して描いてる。
ゾッとするよ。改めて読むと。
「あのバブルの時代に、これ書いたの?」って。
リンク、貼っておきましょうか。
ただ、ガンダムファーストと、逆襲のシャアくらいは知っておかないと、なんのこっちゃか、全然わかりませんので、ご注意を。
ハサウェイは、映画が原作に相当忠実なので、まずはこちらがオススメ。
アマプラ会員でしたら、タダで見られるかも、今なら。(2024年11月現在)
富野氏の原作小説はこちら。全3巻ですが、1巻目だけリンクを。
「時がみえている」のはララア・スンでなく、富野氏自身かと。
「先読みのシャア」もまた、富野氏自身かと。
そして、「世界に心の光を見せなきゃ」と悲願するアムロもまた、
富野氏ご自身の、希望と理想の投影なのかもしれない。
2024.11.18