失われた故郷を求めて──栞葉るり「使用人ボイス」における存在しない記憶とノスタルジー
はじめに突如リスナーの脳内に溢れ出した
存在しない記憶──
まだ首も座っていない時期にそれでも確かな笑顔を見留めたあの喜び…… 嫌がる本人をよそに小さな “あんよ” に靴下を履かせたときのあの温もり…… ランドセルをほっぽらかしてやきっぺを頬張っていたあの表情…… 制服のうえから上着を着ようとするのを必死に止めよく注意して言い聞かせたあの夕暮れ…… 寂しがるそぶりを出さないように最後まで笑顔を崩そうとしなかったあの春……
一体いつから──
私が “ばあや” だと錯覚して