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あの資料どこだっけ?


あの資料どこだっけ?

僕が会社に入社したのは、1988年、昭和が平成に変わる直前でした。

資料は手書きが当たり前で、ワープロはありましたが、確か富士通のOASYS(懐かしい)で、部署に1台しかなく、大事な資料の清書に使っていたと思います。

OASYSの横に予定表が置いてあって、何時から何時まで誰々が使うと書いて使うのが当たり前で、まるで、会議室のようでした。

その後、少しずつパソコンが普及してきて、資料はジャストシステムの一太郎(これも懐かしい)で作るようになっていきましたが、フロッピーディスク(見なくなったなぁ)に保存するとともにプリントアウトして紙でも残すことが当たり前でした。

そこで困るのが、「あの資料どこだっけ?」でした。

資料を机の上に置きっぱなしにすると上司に叱られるので、自席の袖机(最近見かけなくなったね)の抽斗に保管したり、すぐには使わない資料はキングファイル(これも見なくなった)にファイリングしてキャビネットに入れていたのですが、だいたい何をどこに保管したかが分からなくなって、この言葉がでるのです。

例えば、年末調整の書類です。

1年前と書くことはそう変わらないので、来年の年末調整の参考にすべく、コピーを残して提出していたのですが、1年も前なので、その保管先が分からなくなり、探すのが面倒なので、1から書き始めるのですが、子供の誕生年(誕生日は覚えているのですが、誕生年がすぐ出てこない)などで躓いてしまうことがよくありました。

「超」整理法との出会い

その頃、野口悠紀雄さんの「超」整理法に出会いました。

とても有名な本なので読んだ方も多いのではと思いますが、資料の分類について課題を示した上で、資料のライフサイクル全般を最適化できる画期的なアイデアである「押し出しファイリング」(著者が命名)を提案されています。

この「押し出しファイリング」を僕なりにまとめてみます。

なぜ分類するのか?

  • 分類の目的は探すためで、分類した資料の方が探しやすいと考えられているから

  • 確かに、物を探すには、分類が効果を発揮すると著者も書かれてる

分類の課題

  • そもそも資料は物と異なり分類が難しく、それ自体に頭を使い時間がかかる
    なぜなら、資料には属性が複数あることがよくあり、どの属性で分類するかを迷うためである

  • 無理に分類すると、どの分類にしたかを忘れてしまい、探すだすのに労力と時間がかかる

  • 間違った分類をしてしまうと見つけ出せなくなる危険性まである

課題解決には「押し出しファイリング」!

  • 資料をA4サイズの封筒に入れて、日付と資料の大まかな概要をタイトルとして封筒裏の右上に書く

  • その封筒を本棚に立てて並べ、新しい資料や使った資料を入れた封筒は、必ず一番左端に並べるようにする

  • そうすると、よく使う封筒が左側に、使わない封筒が右側に自動的に集まってくる仕組み

  • 資料を探すには、左端から右に、封筒に付けた日付とタイトルを順に見ていく

  • いつ頃の資料かは割と覚えているので、封筒の日付を見ることで、これよりも右(過去)には無いなと判断できる

  • 本棚の右側には、不要になった封筒が集まってくるので、捨てる候補がすぐ見つかる

  • 資料はこの本棚だけにおく「ポケット一つの原則」(著者が命名)を遵守することで、迷子の資料を無くす

  • 新規の資料の保管から、探して使いながら捨てるまでの、資料のライフサイクル全体を最適化

「押し出しファイリング」を始めてみました

そこで、僕も「押し出しファイリング」を始めてみることにしました!

その頃は、デスクトップパソコン全盛で、本体を足元に置いても、仕事机の上は、ブラウン管のディスプレイ(そのころはCRTディスプレイと言ってました)とキーボード、そしてマウスとそのパッドで一杯になり、全ての資料を整理する本棚を置く場所はどこにもありませんでした。

そこで、僕は袖机の一番下の大きな抽斗を、「押し出しファイリング」用の本棚に見立てることにしました。

袖机は奥行き70㎝ほどあり、資料を入れた封筒を横置きにして立てて並べると50程度は保管可能でしたし、使わないときは抽斗の中に隠れてくれるので、とても良い方法だと思っています。

その抽斗を一番前まで引き出して、必要な封筒を探し出し、机に出して仕事をします。

仕事が終わったら、今まで使っていた封筒を、抽斗の一番手前に保管して抽斗を閉めます。

それを繰り返えすことで、抽斗の手前に、よく使う資料が自動的に「押し出されてくる」わけです。

もちろん資料全ては抽斗に入りきらないので、時々、奥の封筒をキャビネットに移していました。

抽斗の奥の封筒をそのままキャビネットの左側に入れることで、「押し出しファイリング」の本棚を拡張することができました。

お陰でキングファイルは使わなくなりました。

例の年末調整の資料は、このキャビネットで、いつも見つかりました。

時には、朝会社に来て抽斗の一番手前の封筒を机の上に出して仕事をし始め、その日は一日中そのまま同じ仕事をし続け、帰りに机の上に散らばった資料を束ねて元の封筒に入れて、抽斗の一番手前に仕舞うだけの日もありました。

この仕事がまだ終わってなかったりすると、次の日に、その日にやる仕事の資料が、抽斗の一番手前で僕を待っていてくれました。

「押し出しファイリング」を使うことで、これから何をやらなきゃいけなんだっけ?と悩ままずに仕事を始められたわけです。

無意識のうちに仕事の見える化の一部(過去と現在)ができていたのです。

そもそも、仕事に資料はつきものなので、資料の整理は、即ち仕事の整理となっていたわけです。

未来の仕事の見える化

後で封筒を作ることになるのならば、先に予定している仕事の封筒を作って抽斗の一番手前に入れておくのはどうかなと思いつきました。

未着手の仕事の封筒なので、そのことを示すために封筒の右上にクリップをつけておくことにしました。

そして、「押し出しファイリング」のルールを少し変えて、使った封筒は、抽斗の一番手前ではなく、クリップのついた封筒が一番手前になるように、その前に差し込むことにしました。

そうすると、抽斗が予定表のような役割を果たしてくれて、僕の仕事の過去、現在、未来が一目瞭然となりました。

いつの間にか仕事の見える化が出来てしまったのです。

お陰で、僕は、あの資料どこだっけ?だけではなく、これから何をやらなきゃいけなんだっけ?でも悩むことが少なくなったと思います。

仕事では、問題が起きて進まなくなったり、突然優先順位の高い仕事が降ってきてどうしようと思ったりすることがあると思います。

そんな時も、「押し出しファイリング」は、次の仕事への切替えや、元の仕事への復帰で悩まずにすみ、結果として仕事全体に余裕をもたらしてくれたと感謝しています。

紙からデータへ

時代は平成、令和と流れて、資料は紙からデータへと変わっていきました。

最初は、データだけではなく紙としても資料を保存していましたが、コスト削減や業務効率化等の目的でペーパレスが進みました。

そして、データを保存するメディア(媒体)も、フロッピーディスクからハードディスク、そしてネットワークでつながったファイルサーバへ、更にインターネット上のクラウドへと変化していきました。

その保存容量は倍々ゲームで、フロッピーディスクの頃は1枚1メガバイトとかでしたが、今や数テラバイト利用しても大丈夫になってきています(なんと100万倍です!)。

データとしてしまうと、探すのはパソコンに任せることができます。

最初は何枚ものフロッピーディスクに分かれていたり、検索機能がイマイチだったりして、簡単に探せなかったのですが、今や全資料をクラウドに保存できて、全文検索で縦横無尽に資料を探すことができる時代になりました。

これで、「押し出しファイリング」が無くても、あの資料どこだっけ?がほぼ解決しました。

でも、これだけだとちょっと物足りないのです。

「押し出しファイリング」は、仕事の見える化に一役かっていたので、僕は、それ無しには仕事が出来なくなっていたのです。

「押し出しファイリング」フォルダ

そこで、僕はパソコンの中に「押し出しファイリング」できる本棚を作ってみることにしました。

パソコンのフォルダを使えばできそうでしたので、「押し出しファイリング」フォルダとよんでいました。

「押し出しファイリング」フォルダは、「押し出しファイリング」の本棚を、パソコンのフォルダに見立てたわけです。

それぞれの具体的な対応関係を示すとわかりやすいと思いますので書いてみます。

「押し出しファイリング」

  1. 本棚(僕は袖机の抽斗)

  2. 封筒

  3. 封筒裏の右上に、日付と資料の概要をタイトルとして書く(例えば”2024年9月7日 あの資料どこだっけ”等)

  4. 資料を封筒に入れる

  5. 使った封筒は、本棚(抽斗)の一番左(手前)に並べる

「押し出しファイリング」フォルダ

  1. 本棚フォルダ

  2. 本棚フォルダの中に封筒フォルダを作る

  3. 封筒フォルダの名前は日付とタイトルがわかるようにする(例えば”20240907_あの資料どこだっけ”等)

  4. 資料ファイルを封筒フォルダに入れる

  5. 使った封筒フォルダ名を変更することで使った順に並ぶようにする(ここが肝です)

「押し出しファイリング」フォルダで、どうすれば「押し出しファイリング」と同じ効果を出せるかが肝です。

そうなんです、本棚フォルダに入っている封筒フォルダは、そのままでは使ったもの順には並ばないのです。

え、更新日付でソートすれば良いのでは?と思われた方もいると思いますが、そう単純ではなかったのです。

実は、封筒フォルダの中の資料ファイルを更新しても、封筒フォルダの更新日付は変わらないのです。

それで、使った封筒を抽斗の一番手前に入れる動作の代わりに、封筒フォルダの名前を変更することにしました。

具体的には、封筒フォルダの名前の一番後ろに、使った回数を入れることにしました。

例えば、”20240907_あの資料どこだっけ”を”20240907_あの資料どこだっけ_1”に変更しました。

もちろん、もう一回使ったら、”_2”とします。

こうすると、封筒フォルダの更新日付が変わり、本棚フォルダを開いて更新日付でソートして表示すれば「押し出しファイリング」と同様の効果を得られます。

更に、仕事の見える化で触れた未着手の封筒は、未着手であることをクリップで示したように、本棚フォルダの中に未着手フォルダを作って、そこに入れておき、着手したら本棚フォルダに移すようにしました。

僕が、紙からデータへの時代の流れに乗り遅れることなく仕事を続けられたのは、「押し出しファイリング」フォルダのお陰かもしれません。

いつぞやは、同僚も同じように悩んでいるに違いないと思い至って、レクチャーしてみましたが、僕の説明がしょぼいせいか殆ど普及しませんでした。。。

パソコンに元々あるフォルダだけでできてしまい、簡単に使い始めることが出来るので、もう少し普及するかと思いましたが、皆んな、俺には俺のやり方があるって方が多かった気がしています(笑)。

そうこうしているうちに

そうこうしているうちに、巷ではMicrosoft Teams(以下、Teamsとします)といった新たなツールが出回り始め、あの資料どこだっけ?とか、これから何をしなきゃいけないんだっけ?の悩みが最初から解決されている環境が整ってきました。

ちなみに僕は、仕事ではTeamsを使っています。

Teamsの一番のお気にいりは、いちいち封筒フォルダを作らなくても仕事と資料が最初から結び付いていることです。

例えば、Teams会議(一種の仕事)には、その資料(アジェンダや会議資料、議事録等)を参加者に共有するための保管場所(Teamsでは「ファイル」といいます)が元々組み込まれています。

「押し出しファイリング」と対比すると、封筒が「ファイル」で、封筒裏右上に書かれた名前が会議、つまり仕事に当たるわけです。

その他に、チームメンバに仕事を依頼するためチーム掲示板に投稿したり、チャットで分からないことを問合せしたり出来ますが、両方とも「ファイル」が組み込まれていて、依頼文書や問合せの詳細資料を添付することが出来ます。

封筒の代わりがあることは分かったと思いますが、本棚はどうでしょうか?

実は、Teamsには、「カレンダ」や「プランナー」が組み込まれいて、それが本棚の代わりになります。

会議は何もしなくても「カレンダ」に表示されるようになりますし、投稿やチャットは、一手間必要になりますが、「プランナー」でタスク(仕事そのもの)を作って、投稿やチャットをリンクすることが出来ます。

ただし、本棚代わりの「カレンダ」と「プランナー」が二つに分かれているので、前述した超整理法の「ポケット一つの原則」は叶えられていません。

実は、Microsoft Outlook(以下、Outlookとします)と「プランナー」のタスクは連携していますので、Outlookの予定表の下にタスクを表示する設定にすると、会議とタスクをいっぺんに見ることが出来るようになり便利です。

終わりに

このブログを書くにあたって、野口悠紀雄さんの「超」整理法を読み返してみました。

恥ずかしいことですが、僕が仕事でこうした方がいいよと、さも自分で考えたことのように得意げに言っていたことが、この本の中にそのまま書かれていました。

決して故意にではありません(笑)。

恐らく、この本に書かれていることが無意識に刻み込まれていて、何かの拍子に自分の考えだと勘違いして出てきたのだと思います。

この本が、僕の考えの基礎になってくれているのだと思いますし、加えて、前述の通り仕事に余裕をもたらせてくれたのでした。

全く感謝以外にはありません(真剣)。

それと、この本を読んでくれた、あの頃の僕にも感謝したいと思います。

読者の皆さまも是非手にとって読まれることをお勧めいたします。

時代を経ているので、「あぁ、こんなことしていたなぁ」と懐かしんだり、「え、こんなことしてたんだ」とびっくりしたりしながら、凝ったアイデアや興味深い具体例に、たくさんの知見やエピソードに、そして論理的ななかにも機知に富んだおもしろさに引き込まれてしまうと思います。

更に、この本の最後の方の「アイデア製造システム」や「高度知識社会に向けて」に書かれていることは、今の時代を予見していて、時代を経ても変わらない何かを感じ取ることが出来ます。

最後までお読み頂き誠にありがとうございました。

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