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お風呂屋さんでできた水たまりとコンサルの話。

なんのこっちゃというタイトルになりましたが、今日はお風呂屋さんの話。
タイトル画像はイメージです!


そもそもコンサルって。。。

私の会社は温浴施設のコンサル設備販売メンテナンス設備施工を行う会社です。
その他にも中国での買付け貿易進出・撤退サポートやら、海外業務中国語教室もやっています。

こうして書くとすんごい大きい会社のように聞こえちゃいますが、4,5人が働く小さな会社です。
お風呂の業界と中国に関連する業務を中心に展開していくうえで、手広くやらせていただいています。

ちょっとした会社の経緯はこちらで書きましたので、是非。

要は私らのようなモヤシ企業は何でもやるっきゃない精神で、やりたいことも大事ですが、
日々生きていくためにやれることは全部やろう、をモットーにしています(せざるを得ない)。


私自身、サラリーマン時代を含め、お風呂の業界に飛び込んだこの15年。
お風呂業界の様々な業種を経験することができました。

シャンプーや化粧品、清掃品など消耗品の販売
ろ過装置などの設備の販売
温浴施設運営のコンサルティング
海外でのお風呂業界にも関わってきました。

日本のお風呂業界だけではなく中国やアジア、ヨーロッパなど海外でも仕事をさせてもらうこともありました。

お風呂業界で生きる私の強みは、とにかくこうした知識と経験の幅が広いことでもあります。

独立した当初はお金もないスタッフもいない状態でスタートした企業で、
そんな状態で、私の身一つでできるのが【温浴施設のコンサルティング】
だと考えました。

コンサルティング一本で生計を立てられている企業さんには大変失礼な話ですが、
今を持ってなお、私なりの知識や経験を活かせる仕事だとも思っています。


実は、このコンサルティングっていう職種であり、言葉。
私は何となく嫌いでした。

誤解を恐れずにいうと、何らか専門的な業界に属していたサラリーマン時代のコンサルティング会社に対する印象は、、、
で、結局あなたは何者なの?って感じで、
口先一つで誰でもできてしまいそうな(これも大変失礼ですが)、
コンサルティングっていう名前自体にも、何だか実態がない怪しさもあって、
元々あまり好きではありませんでした。

特に小さな温浴業界の中では、同じような考え方を持つ業界の人も少なくないと思います。

私も販売営業をしていたときには
「なんじゃコンサルって?」
「そんなん必要か?」
と、思っていた節があります。

ですが、今では実際に温浴施設のコンサルティングをさせてもらうと、喜ばれることの方が圧倒的に多いと感じます。(都合のいい話ですが 笑)

それは別に自分がすごい専門家なんだぞ!と言っている訳ではありません。

コンサルという仕事は徹底的にお客様目線で活動ができるので、
専門家というほど立派ではないかもしれませんが、少なくとも幅広く温浴知識がある私が施主側の立場に立ってプロジェクト内に存在している
それだけでも、安心感を得てもらいやすく、かつ結果として喜ばれやすい立ち位置のようにも思います。

専門知識がなければ温浴施設の施工をどう進めていいか、どこからどう購買したらいいのか、どう折衝したらいいのか、
当然素人でもあるオーナーからすれば、右も左も分からないのが当たり前です。

いくつかの取引業者は、どうしても自分や自社に都合のいいように営業トークをすることが多いです。
良い悪いではなく自社のために活動するのが営業ですから当然です。

しかし、その正誤判断をする役割として自分が存在していれば、
お役に立てることはとても多くあると自負できるようになりました。

私の大したことないような温浴業界での経験が、ダイレクトにお客様に喜んでもらえる業務でもあることが、今ではよく分かりました。

今日は少しそんな温浴施設のコンサルティングについて話をしていこうと思います。


コンサル業に向いている人。

あまり声を大にして言うのは憚られますが、
先述のようにコンサルティングが何となく嫌い、というのは、
実際には知識のない温浴コンサルを名乗る企業に何度となく出会ったことがあるからです。

もちろん、いいコンサル企業もあります。
それに、コンサルといえど、建築から内装から運営まで、温浴施設の全てを知り尽くしている訳ではありません。
私とてそうです。

が、特に近年では、たまたま一つか二つか有名温浴物件に携わっただけのインフルエンサーだったりとか、
ある一部分だけ知識があるような他業者出身だったりとかが温浴コンサルを名乗っていたシーンに出くわしたことがあります。

ちょっとした愚痴です(笑)


それから、あくまで個人的な意見ですが、大前提としてコンサルに向いている人っていうのは、
熱い人、情熱的な人が多い、という印象があります。

喜怒哀楽が激しいとか、そういう情熱的、ではなく。
プロジェクトに対して、どれだけ本気になれるのか、という点です。

先述の通り、建築も内装も設備も運営も全部の知識が専門家レベル、なんて人は、まずいません。
恥ずかしながら、実際には分からないことも多いんです。

例えば私の場合、設備には詳しいぞ!と謳っていますが、ろ過やボイラーといった設備には詳しいものの、
電気は苦手ですし、給排気も苦手です。

ですが、お風呂全体を知っているだけに、お風呂やサウナを施工するにあたって、
どういうポイントで慎重になるべきか、どういう問題が発生しやすいか、はそれなりに理解しているつもりです。

懸念されるポイントが事前に察知できれば、それを聞くことが出来る仲間もいますし、最低でもインターネットで調べることもできます。
そして、専門家である以上は、それを理解することも早いと思っています。

コンサルを名乗る資質の最大の要素は、
それは俺は分からん!ではなく、
分からなくても解決する、合理的なゴールを見つける労力があるかないか
だと思うんですね。


また、お風呂のコンサルをやっている、というと、自分ではお風呂屋さんをやらないんですか?と、よく聞かれます。

私の場合、めちゃくちゃやりたいです。
いつか、自分のお風呂屋さんを経営してみたいとも思っています。

ただ、それには資金力であり、不動産であり、莫大な時間も必要です。
簡単なことではないことを理解しています。

ただ、その質問の核心っていうのは、なぜ人の商売を手伝うのに、自分でリスクを冒してやらないの?という無意識な懐疑にもあると感じます。

先述したように、このプロジェクトに必要あるのか?と思わせられる口だけコンサルには確かにそう言ってあげたい気もします。

他人のお金で作る施設なんですから、極端に言えば成功しようが失敗しようが関係ない!って投げ出すことも可能です。

ただ、自分が労力を極限まで費やし開業に携わった施設で、施設の引き渡しが終わり、開業をし、その後何年も続いていたり。

その時々にオーナーやスタッフさんから感謝されることの喜びを味わってしまえば、
熱い血が流れている人にとって、他人事のようなコンサル仕事なんてできないはずだからです。


温浴のコンサル名乗ってもいいよ。

少し余談ですが、自慢話を挟ませてもらいます(笑)

独立をして間もないころ、以前からお知り合いだった某設計会社の社長に「お前独立して何すんの?」と聞かれたことがあります。
私が最も尊敬する業界の大御所です。

彼とは公私に渡ってお世話になりましたが、経緯を説明しながら「温浴コンサルやります!」と答えました。

以前はいくつもの物件を一緒に携わらせてもらいました。

立場も関係なくダイレクトな意見を忖度なく度々ぶつけてしまう私なので、
何度かその大先輩とも言い争いになったこともありました。

もちろん、私もその大御所も全てはオーナーである、お客様のためでした。

ぶつかり合いはあるけれども、彼はそれを理解してくれていました。
「お前ほど生意気な奴はいない」
「施主とケンカしてる業者を初めて見た」
「現場でお前が一番偉そうだ」
と笑いながら、ときにフォローもしてくださって、かつ何でも許してくれる、暖かい先輩でもありました。

そんな経緯もあって、その大先輩から
「俺もいろんなコンサルに出会って一緒に仕事したこともあるけど、お前なら温浴のコンサル名乗ってもいいよ」
って言ってもらったことは、今でも励みになっています。


コンサル駆け出しの話。

いつも通り前置きが長くなりました。
いよいよ本題です。

いくつかの温浴施設の現場で施工や運営のコンサルティングをさせていただきましたが、
それぞれの現場で出てくる問題点や課題は似ているようで全然違うことばかりです。

まだまだコンサルとして駆け出しの頃の、とある現場の話です。

オーナーも設計会社も、初めての温浴施設。

オーナーに請われて現場でのコンサルティングを始めましたが、その設計会社さんは同時にいくつかの案件を掛け持ちされていて、多忙を極めているようでした。

そういう経緯もあって私が請われた訳ですが、設計会社さん側もお忙しいこともあってか、
修正点を指摘しても設計図に反映されていないことが何度かあり、この現場は大丈夫かなと心配していました。

思えば駆け出しの私自身も明らかに気合いが入りすぎて空回りをしていたようにも思います。
が、それ以上の大前提で、大きなミステイクがあったようでした。


写真はイメージです

意外と専門性の高い温浴施設の施工。

設計会社さんが私に嫌がらせをしている訳でもなければ、私もこの設計会社さんを否定している訳でもありません。

紐解けば実はとても簡単な話で、設計業務を受注されるタイミングでは
お風呂やサウナ施設の設計がこんなに難しいものだと思っていなかったようでした。

こうした問題は設計会社だけではなく、施工会社、設備会社も同様です。

特に個人オーナーだったり分離発注だったりのケースでは、安かろう悪かろうで選定を進めてしまったり、
小回りの利く地元だからという理由で業者選定をしてしまったり、見積内容が異なるのに正誤性が判断できずに総額で判断してしまったり、
というトラブルは枚挙にいとまがありません。

何百メートル級のビルを設計したり、何万平方メートルのショッピングモールを設計したり、
オシャレなデザインで賞を受賞されたり、会社の歴史があったり、海外でも実績があったり、
だからといって、お風呂屋さんの設計・施工は朝飯前だ!とはなりません。

もちろん、専門会社ばかりを集めればいいという訳でもありません。
だからこそ、私のような中立的なコンサルの需要があるのだと思っています。


また、私の場合は設計会社さんとタッグを組ませていただくことも少なくありません。

自慢ではありませんが(自慢です)、めちゃくちゃ有名だったり、超大手だったりの某設計会社さんから
お風呂部分のコンサルご依頼をいただいたことが何度もあります。

どんな大手の設計会社さんでも、お風呂の設計経験がないような場合、
お風呂の設計がこんなに難しいと思わなかった
と口をそろえて仰られます。

もちろん設計会社さんは設計の専門家ですから、違和感に気が付くのも早いです。

受注はしてみたけれども、設備室ってどうするんだ?ボイラー?ろ過?バックヤード?防水?あれ?これは結構難しいかもしれないぞ。
と、いち早くその専門性に気が付くものです。


「水」

現場によって出てくる問題点はそれぞれ違うとお話ししましたが、
押さえておくポイントはだいたい似ていたりもします。

専門的だなんだと語ってしまいましたが、めちゃくちゃ噛み砕いて書きますと、
要は浴場内に「水」がたくさんあるのがお風呂屋さんなのです。

防水、給排水、浄化、消毒、昇温・降温、給排気、荷重。
「水」にまつわる設計・施工のポイントは意外と多く存在します。

これらは例えば大きなオフィスビルの建築にも、広いショッピングモールにも存在しない注意点でもあるのです。

いくつかある最も問題になりやすいものの一つに、
            浴場内の排水勾配
というものがあります。

一日に何百人もお客さんが訪れて、何十トンもの水を使うお風呂屋さんの浴場です。

特に洗い場や浴槽や掛け湯周り、浴場の通路部分の排水については、
大げさな勾配がないと床の排水がスムーズに排水溝に流れないことがあります。

実は家庭のお風呂場でも、排水溝を目掛けて床が傾いています。

なかなか気が付きにくいものですが、意識をして見ると、特にお風呂屋さんの排水勾配は歩いていて酔っぱらいそうなほど傾いていることがあります。

写真はイメージです。
写真では見づらいですが、写真奥に向けて勾配ができています。

ハッキリ言ってしまうと、レイアウトや内装デザインは温浴未経験者でも理解がしやすい部分です。

一方で特にウエットエリアの工事や設備回りについては、オーナーもさほど気にされることがありません。
なぜなら、ほとんど成功例しか見ることがないからです。
また、設備部分は施設の内部でもあり、目に触れる機会がないというのもあります。


浴場にできた水たまり。

タイル張りが始まる前に浴槽や浴場で満水試験を行いました。
防水工事のタイミングでは、床が乾くまで浴場の出入りができなくなります。

防水施工が終わった後にその漏れをチェックする満水試験。
重要な工程の一部です。

たまたま私も中国行きの用事があり、事前にお伝えはしていましたが、しばらく現場を離れる事情がありました。

その出発前に、私は懸念された浴場の床に、大量の水をまきました。

数日後に、もし水はけが悪いのであれば、勾配をもう少し付けてください、と伝えて、
施工が佳境に入ったにもかかわらず、2週間ほど現場を離れました。

防水後は防水層を保護するモルタルを埋めますが、そのタイミングであればまだ排水勾配を付けることが可能だと考えていました。

防水に失敗して漏水が起これば、よほどのことがない限り誰が見て気が付きます。
ですが、排水勾配は開業してからでないと、なかなか気が付かない部分でもあります。

しばらく現場を不在にすることもあって、とにかく私は事前にほとんど一点集中で、
その部分の施工に目を付けて施工側にも伝えていました。


2週間後、中国から帰国して現場に戻ると、既に床の仕上げに取り掛かろうかというタイミングでした。

浴場の床が仕上がるタイミングになれば、もう開業間近です。

排水勾配の件は、常に頭の片隅にはありましたが、私が任されている設備の試運転などが既に始まろうとしています。

言い訳になってしまいますが、コンサル契約で現地にいる時間では全てに注視しているだけの時間がありませんでした。

それからさらに10日ほどが経過し、いよいよ開業が目前に迫りました。

オーナーやその知人、私も含めてお風呂に入ってみよう、となり、私も体験してみることになったタイミングで、
はっと、排水勾配について思いだしました。

私も少なくない経験があるので、素足で歩いてみると、何となく勾配が足りないことが分かります。
冷や汗が出て、全身に寒気が走りました。

掛け湯の前で大げさに掛け湯をしてみたところ、直径1mほどの水たまりが浴場通路に出来上がってしまったのです。

オーナーは水たまりも深くないし、そこまで気にならないよ!
と、なかばフォローしてくださりましたが、私にとっては、自分の存在意義がなくなったような、
ただただ呆然としたコンサルデビュー戦でした。

思えば私の伝え方が良くなかったかもしれません。
危惧を伝えきるような話し方ができていなかったかもしれません。

苦々しい思い出ではありますし、何でもかんでも完璧に事が進むわけではありませんが、
この経験は絶対に成長の糧にする!と、強く決意したコンサル事業の最初の思い出です。


さいごに。

設備もそうですが、浴場内の内装も、開業後には修正することが非常に難しく、お金がかかる部分です。

誰が良い、悪いと批判したいわけではなく、あの当時、もっと自分が責任感を持って、強く主張していれば、と
痛感し後悔した出来事です。

結局その後、開業目前でもあり水たまりは今も残ったままです。
あえて自分をフォローするならば、その点以外はおおむね成功した事例でもありましたし、
いつも一生懸命取り組んでいたことはオーナーも評価してくださっています。

いつか改善しようね、とオーナーからは優しいお言葉をかけてもらっています。


コンサルが嫌いだ、と冒頭で話しましたが、確かにガミガミガミガミと指摘事項ばかりを並べれば、
それぞれの業者さんから嫌がられることもあるかもしれません。

ですが、たとえ嫌われたとしても、
それを伝えることこそがコンサルとしての意義でもある
と、その経験を通して教えてもらった気がします。

そりゃ以前は業者の立場で、コンサルから重箱の隅をつつくようなことばかりを言われていた印象しかなく、
いまさらながら、それでは確かにいい印象も持たないわな(笑)と。

伝え方も大事ですね。

まだまだ私自身足りないことばかりですが、やっぱりお客さん目線で取り組めるコンサルという仕事、
奥が深くてやりがいのある仕事だと、今では誇りを持っています。

温浴施設のコンサルティング、設備の相談等々
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