見出し画像

医療機関が抱える課題と 病院経営をIT利活用で健全化するアプローチ

こんにちは。VMwareで西日本の公共分野のお客様を担当しているプリセールスSEの伊藤です。医療分野に関連する情報を発信していきますのでよろしくお願い致します。

まずは、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、医療従事者の皆様が日夜大変なご尽力をいただいていることに感謝と御礼を申し上げます。
本当にありがとうございます。

私は過去に約9年間病院の医療情報担当職員として業務に従事していたこともあり、そのときに考えていたことも踏まえて医療機関が抱える課題の整理と中長期的な医療ITがどうあるべきかについてお話できればと思います。

さて、昨今医療機関を取り巻く状況としては、様々な課題があり、非常に厳しい状況であると理解しております。

・医療従事者不足の深刻化
・団塊の世代が後期高齢者となる2025年問題
・医師の時間外労働上限規制が2024年に開始
・診療報酬改定による病院経営状況の悪化
・COVID-19の影響

これらの課題をまとめますと、「業務負担増、マンパワー不足、経営基盤の健全性低下」と言い換えることができます。そして、これらの問題の根本を解決するには、ITの力を活用するのが必要不可欠であると考えております。
それでは、これらの課題についてどのようにITが寄与するのかについて整理していきたいと思います。

1.業務負担の軽減

業務負担の軽減の基本的な考え方は、「なくす」「減らす」「転嫁する」といった考え方となります。例として、業務プロセスの抜本的な見直し、本質的でないタスクの削減、手続きの自動化、コミュニケーションの効率化、システム運用・更新の負担軽減などが挙げられます。こちらは一般的な「効率化」としてイメージされる内容でよいかと思います。

2.マンパワー不足

マンパワー不足への対応としては、人のパフォーマンスの最大化、マシン利用による作業効率の最大化と、さらにアウトソースも活用して組織全体としてのパフォーマンスを向上させるようなことが必要になると考えます。

まずは職員の作業効率化という観点で、働き方の自由度を高めたり、業務環境を見直すことで生産性を向上させる事が必要です。そのうえで、RPAやAIを活用する事により、転記作業や、データ分析・意思決定支援など、単位時間あたりの処理できる作業量の向上が期待できます。業務プロセスの見直しなどで、最終的に残った単純作業などはアウトソースするのも一つの考え方でしょう。

3.経営基盤の健全化

経営基盤の健全化には、過剰な勤務時間の削減や、IT導入・運用・維持に係る様々なコストの低減、意思決定のスピード向上などが挙げられます。例えば、収益やコスト、患者さんの来院・入院状況、手術の実施状況やベッドコントロールの可視化ととるべきアクションの自動的な提案などによる意思決定速度の向上を図り、現場の行動や会計算定などの細かい部分にもこうした仕組みを取り入れ高度化できれば、経営の健全化を進めることができるものと考えられます。

画像1

しかしながら、これらの視点はそれぞれの関係性が絡みあう部分もあり、進めていく上でジレンマも多く、なかなか進めづらい部分であると考えます。
このような取り組みを進めるためには、ひとつひとつの大枠の業務単位で見直しをかけ、「やらないこと」を決め「やること」は徹底してプロセスの最適化をするといった観点に置き換えると考えやすくなるのではないでしょうか。プロセスの最適化の過程で上記3つの観点を意識しつつ、共通項を他の業務と共有してプロセスをデザインすることで全体としての最適化にもつながっていくものと思います。

この見直しの中で「プロセスの見直し」「自動化」においては特にIT利活用ができるかどうか、が重要になってきます。

医療ITのジレンマ

こうした見直しの要として医療情報システム群が広く活用できることが理想です。しかしながら、現在の医療情報システム群は一つ一つの業務の効率化はできても医療業務の包括的な効率化に大きく寄与できるものにはなっていないと思われます。

これらのシステム群が現場だけでなく院外からの利用や、サービスを介して他の医療機関や患者さん、国や行政などとダイレクトに繋がるような仕組みを想定して考えられていれば、大きく効率化できるのではないでしょうか。

画像2

経営層がITに求めること

一方、経営層がITに求める視点に立っても、現在の医療情報システム群がなかなか貢献できていない実情があります。経営目線で考えるとポイントは下記であろうと考えます。

1.コスト削減
IT費用全般の削減、電力・スペースの削減、キャッシュフローの改善、保守運用コストの削減、あとは人材を運用保守のタスクから価値創造のタスクへシフトすることなどがあると考えます。

2.病院価値向上への寄与
イノベーション誘発の体制や仕組みづくり、医療サービス拡充、高度な研究促進など。結果として、職員や患者さんの満足度を向上し、ファンをより増やし、ひいては地域社会からの評価の向上を求めているものと思います。

3.変革の高速化
病院価値を生み出すバックエンドとして、変革を高速化するためのインフラは重要です。新しい施策や仕組みを「検討」「試す」「開始する」ためのリソースをすぐに払い出したり、実行できる環境が必要であると考えます。

他にも意思決定を高速化するための仕組みづくりや、リアルタイムな可視化の提供、すぐに組み込んで提供できるようなプラットフォームや体制があると喜ばれるものと思います。このように、経営層の要望に答えながら、ITを前進させることも必要です。

中長期的な医療ITのグランド・デザイン

これまで述べさせていただいたような観点は、現在の医療情報システム群ではあまり考慮されておらず、システムの側面からこれらをすぐに実現することは容易ではありません。

目前に迫った課題への対応を現実的進めるためには、現在の医療情報システム群のサービス提供形態に依存せず、よりモダンな働き方や高度な仕組みを実現できるよう、インフラの側面から業務環境をデザインし直していくことが必要ではないでしょうか。

画像3

まずはいつでも、どこでも、どんなデバイスでも、安全に業務環境にアクセスできる環境づくりが必要です。そのうえで、レガシーなアプリケーションから、最新のクラウドサービスまで組み合わせて利用できる環境であったり、業務システムで足りない部分をAIやデータ解析サービスなども利用しながら、既存の仕組みと連携しつつ組み込んでいく。このような取り組みが、現状の課題解決の近道であると考えます。

次回以降で、具体的にVMwareが医療ITにどういった価値を提供できるのかについてご紹介したいと思います。