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シンゲリSingeliというタンザニアの高速ダンスミュージックのジャンルとその周辺の諸情報について
追記:20240317
以下に新規で判明した内容について書きました、こっちのほうが詳しいし正しいです!
こんにちは、ミオジョウです。
定期で伝えているが、シンゲリの語源は伝説のダンサーの名前
— HW BINGO (@Bingo_Habanero) July 26, 2022
昔からアフリカ大陸の音楽が好きなのだけど、先日Dommuneで「TYO GQOMMUNE」という神回がありまして、僕の好きなTYO GQOMという東京拠点に活動するクルーがゲストでした。
トークセッションでは、南アフリカのGQOMやAmapiano、タンザニアのSingeliとか(どれもジャンル名)の話があったのですが、その中で「Singeliという単語は伝説のダンサーの名前からきてる」という情報があり、ほんとに?と気になってしまったのが、Singeliについて色々調べだしたきっかけでした。
Singeliはタンザニアあたり発祥の音楽ジャンルで、高速ビートが特徴のエレクトロニックミュージック。最初聴いたときふざけてんのかな、と思ったけど真面目にこういうジャンル笑
とりあえず聴いてみるのが早いので早速。
この曲はMVが抜群にサイケデリックでかっこよくて気に入ってるやつ。Mzee wa Bwaxというアーティスト、これ以外にもクオリティ高い楽曲多いです。
上の曲はタンザニアの真北の国、ウガンダの首都カンパラを拠点に活動するNyege Nyege Tapesというレーベル所属のアーティストの曲で、Nyege Nyege Tapesの躍進でSingeliというジャンルの知名度が世界的に爆発的に上がったのは間違いないかと。クラブミュージックメディアのRAが特集記事組んだりと、じわじわと来てます。(後述するタンザニアで普通に聴かれてるSingeliの曲と比べるとNyege Nyegeの楽曲たちはほかジャンルともクロスオーバーしてだいぶと変態進化してたりはします・・)
NyegeNyege主催のフェスティバルも毎回おもしろいアーティストをブッキングしていて、一昨年のはBoilerRoomがほとんど全部アーカイブに残してくれてて必見です。
(20201119追記)NyaeeNyegeTapesオフィシャルのSpotifyアカウントができていて、オフィシャルのプレイリストができてました。
なお、現地でSingeliはスラング的にKELELEと呼ばれてるらしく、スワヒリ語でNOISEという意味とのこと・・笑
↓現地のライブの模様。(4:30あたりからのモッシュ(?)&砂投げまくりの様子とかすごい)
で、話を戻して、"Singeliってジャンルの語源はなんなんだろう"と色々見てたんですが、ほとんど情報がなく、現地語であるスワヒリ語できないと多分検索も難しいという状況でした。
現地の人に聞いた方が早いんじゃないかな、ということで、運良く、ダル・エス・サラーム(タンザニアの首都)在住で普段はスワヒリ語-英語の翻訳とミュージシャンをやっているというタンザニア人とコンタクトが取れました。普通に謝礼払うのでSingeliについて何か書いてよ、できれば語源についてもリサーチしてよ、とお願いしたのが今回。
ということで彼からもらった情報を元に、色々調べてみたものなどまとめてみます。
Singeliについて
Singeliはタンザニアのスワヒリ話者や沿岸部の人々が住む地域で最もポピュラーな音楽。後述するmdundikoやmchirikuを現代的にしたものと考えられています。2010年頃にTaarabやbongo flava、mchirikuをかけ合わせた音楽として産まれ、ダル・エス・サラームを始めとするタンザニアのストリートで人気が出て、広まっていきました。
Mdundikoとは?
Mdundikoはタンザニアのダル・エス・サラーム地域に住むザラモ(Zaramo)族の伝統的な儀式舞踏(ngoma)の一つ。ngomaはスワヒリ語で太鼓/ 宴/ 踊りなどを指す言葉。
Taarabとは?
Taarabはアフリカ沿岸部の音楽ジャンルで、タンザニアやケニアで人気。多くの文化の影響、とりわけアラブやインドの音楽からのインプットを受けています。基本的にはバンドが伴奏する詩的な歌唱です。
↓この動画は250万再生されてる。
Bongo Flavaとは?
Bongo Flavaはタンザニア人がUSのヒップホップやR&Bを取り入れて産まれたジャンルで、1991年に初めてスワヒリ語でのラップがSaleh Jaberによってリリースされて以降大きなムーブメントになりました。USヒップホップを軸にして、レゲエやR&B、アフロビートやダンスホール、その他様々なタンザニアの音楽が取り込まれています。リリックは政治や社会的な内容も多く、Bongoはスワヒリ語で"脳"を意味するubongoから来てるそう。スワヒリ語は非常に韻を踏みやすいらしく、ラップとの相性が良い模様。
↓ Lady Jaydeeは人気のBongoFlavaアーティストの一人で、初めての女性BongoFlavaシンガーの一人。
タンザニアの様々なカルチャーを取り込めるのもBongo Flavaの特徴。マサイ族の歌を取り入れたX Plastazのようなグループも。
誰がSingeliを作ったのか
多くのアーティストが自分がこのスタイルを作った伝説の存在だという主張をしている中、"Singeliのゴッドファーザー"といえるのがMsaga sumu。彼が、Taarabの伴奏部分を切り刻んだ上でBPMと音量を最大に上げたトラックをかけ、その上でフリースタイルで歌うという爆音ライブスタイルを初めに始めたと言われているそう。カセットテープの早送りみたいなサウンドの上にノイズまみれで最初のうちはかなり不快なサウンドだったのではとのこと。
最初のうちは主にストリートや結婚パーティーで演奏されていて、特にこのジャンルの自由に踊って自由に歌うというルール無用な部分に惹かれた若い世代を中心に人気が広がっていきました。
人気のSingeliアーティスト
Singeliは最初は演奏者やシンガーたちがスラム出身のケースが多く、ゲットー・ミュージックとみなされていました。
時代が進むにつれ、制作者やプロデューサーの手が加えられ、Singeliのためにオリジナルのサウンドが作られるようになると、徐々にメインストリームに広がりを見せ、商業的な音楽になっていきました。
Rayvanny
Meja kunta
ManFongo
Mc Sudy
Dogo niga
Dogo Midundo
Sholo Mwamba
このSholo Mwambaという人は客演だったりフィーチャリング楽曲がかなり多い。Progesor Jayはベテランラッパー。1個上のMesen Selektaはかなり人気のプロデューサーとのこと。
Mzee Wa Bwax
関係ないけど関連サーチで偶然見つけてかっこよかったマサイのSingeliシンガー。当然マサイの人たちにもSingeliが入ってきてる。
Singeliの語源は?
やっと語源の話です、スワヒリ語にはSINGELIという単語はないらしく、スワヒリ話者の彼でも語源は不明とのこと。伝説のダンサーの名前かどうかは判明せず・・
ただ彼の説としては、タンザニア南部に住むYao/Yawo族の女性の成人の儀式、unyagoでの踊りがスワヒリ語でSINGENGEと呼ばれていて、語源として関連があるのではとのこと。
SINGENGEの様子
SINGELIのダンス
国産事例
水曜日のカンパネラの作曲/編曲してるケンモチヒデフミさんがかなり積極的に海外エスニックサウンドを国内に持ち込んでいて、シンガーのxiangyuさんに提供楽曲でSingeliもやってます、クオリティ高い。
あとこれは偶然発見したけど完全にSingeliの影響な楽曲、HOPE:Dさん。上モノのシンセ使いキレイでトラックかっこいい&良いパンチライン "辺境のビート見つけ取り入れる カメラマンじゃなくて戦場のビートメイカー"
おわり
ということで長くなりましたが以上です。
Singeliサウンド広がっていって世界的な取り入れられ方と現地の進化と発生していくはずで、今後もかなり面白いジャンルだと思うので継続色々digしていきたい所存。
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