山本文緒さんのこと
ツイッターを眺めていたら翻訳家の村井理子さんがしきりに山本文緒さんの新刊をお勧めされていた。
読みたくなったので電子書籍で購入した。
一気に読んだ。
最近、読書がちょっとだけ億劫だった、というか文字を追いかけてもなかなか集中できなかったのだが、これはもう一気読み。
私の子供時代はコバルト文庫全盛の時で、私は唯川恵さんの青春クロスピアという作品が本当に大好きだった。内容は忘れてしまったけれども、みんなが氷室冴子さんや新井素子さんに夢中になる中(赤川次郎さん派もいたな)私は唯川さんのファンだった。
山本文緒さんのコバルト文庫は読んだことがない。
でも私はこの二人の一般小説に共通する何かを感じて、日本にいるころはほぼ全作読んだ。二人の文章はわたしを夢中にさせた。通勤電車の中で読むことが多かったけれども、続きが気になって歩きながらエレベーターの中でも読んだこともある。
そんな二人がお友達だったのだ、というのはファンとして嬉しかった。
妙に納得、というかなんというか。
山本さんの作品で一番すきなのが恋愛中毒。薬師丸ひろ子の顔がちらついてしまうけれど、あれは面白い。もう一回読もうかな、うん読もう。
淡々と進む本作は、読む人それぞれ悲しくなるポイント、心がわしづかみにされるポイントは違うだろうなあ、と思う。
私は、やっぱり妹と重ねてしまった。
妹のゆっくり進行したその症状と山本さんの一気に進行したその症状が、ああ、そういうことなのか、と思うくらいに重なっていて、
ステロイドがどうこう言ってたなあ、とか、
さっきまで普通だったのに、急に熱を出して意識朦朧となったりしてたなあ、とか、
そして何よりも、山本さんのご主人と、妹の夫である義弟、彼らの献身的な姿、とか、
頭がぼんやりしていく山本さんとか、
あの時妹はこんな感じだったんだ、と今更しみじみと感じる。
しんしんと心に何かを訴えてくる。
こんな風に、感じるって、どんな感じなんだろう。
本当の孤独はこういうことを言うのだろうか。
久しぶりに電子書籍とはいえ本を読んで、そして涙して、そして感想が書きたくなった。
心を動かす力って、こういうことなんだろう、と思う。