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ギャグ・パロディ・名作が盛りだくさん!江戸時代の娯楽本をマンガで楽しむ

「江戸の名プロデューサー」として、多くの浮世絵師・作家の才能を見出して世に送り出した出版人「蔦屋重三郎」。一部の知識層が読むだけであった書籍を広く親しまれるものにした立役者であり、2025年の大河ドラマのモデルにもなっています。

蔦屋重三郎も手掛けた多種多様な江戸時代の「出版物」の魅力を、現代のマンガでわかりやすく解説した一冊が、「マンガでやさしくわかる 江戸の娯楽本」。教科書で名前を聞いたことがある名作から、現代に通じるような斬新な作品まで楽しく知ることができます。

一番初めに紹介されているのが『江戸生艶気樺焼』(えどうまれうわきのかばやき)

タイトルの「江戸生」は江戸っ子、「艶気」は浮気=浮ついた気持ちや恋愛体質を指し、主人公・艶二郎の名前にもかけています。蒲焼は当時の代表的なグルメ「うなぎ(の蒲焼き)」と、「うわき」のだじゃれをかけています。

大金持ちの一人息子である主人公・艶二郎。なかなかさえない男がモテモテのエピソードを流して話題になるためにあれこれ工作を行いますが、エピソードは笑えるものばかり。主人公・艶二郎は、ダンゴ鼻に丸顔の人物として描かれていますが、文章では中盤まで容姿に関する説明は無く、文で語らず絵で見せることで読者にわからせるテクニックも面白く、マンガや絵本と通じるものがあります。艶二郎の浮気心や当時の風俗を面白おかしく描きつつ、彼を支える花魁の「浮名」などのキャラクターも魅力的。

「江戸生艶気樺焼」は天明五年(1785年)に発刊された全三巻の黄表紙です。黄表紙とは、蔦屋重三郎も数多くかかわった大人向けの娯楽本。パロディやギャグもきいており、荒唐無稽な作品も多数見られます。挿絵にしかない情報がたくさん散りばめられており、人々は文章だけではなく絵で見て物語を楽しんでいたようです。

このほかにも、「桃太郎」の後日談を描いた『桃太郎後日噺』、千手観音が不景気のために手を貸し出す『大悲千禄本』や、『東海道中膝栗毛』、『南総里見八犬伝』、『好色一代男』、『雨月物語』などの有名な作品も取り上げています。

マンガパートでは原書の挿絵要素も取り入れ、解説部分ではマンガの補足や作品の背景も解説しています。当時の文化や世相に触れながら大河ドラマをさらに楽しめます。


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