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「城」はいかにして築かれ、いかにして崩されるのか?

新年あけましておめでとうございます!
noteコーディネーターの玉岡です。
新年と言えば初詣、初詣と言えば神社ですね。
神社に比肩する、日本のシンボルと言えば?
そう、「城」です。
今回はこの書籍を取り上げます。

『武士目線で語られる 日本の城』



本書の著者は、数々のNHK大河ドラマにも資料提供を行う、日本中世史の専門家です。
構成はユニークで、なんと荻生徂徠の地の文に、解説がつくという形式。

荻生徂徠が著した『鈐録』城そのものに関係する「城制」のほか、城の守り方について言及した「守法」、城の攻め方について言及した「攻法」のみを訳出。(中略)構成を改めて見出しをつけ、現代の日本語として意味が通じるように意訳しているが、本文の内容はすべて徂徠自身が記したものである。

本書「はじめに」


本書は次の八章で展開されます。


第一章 「城」とは何か

「縄張」とは、城を形作る際に設計や区画整理を行うこと、あるいは行った 場所のことを指します。

城の立地を生かした縄張の形式は、現在、大まかにいって連郭式・梯郭式・輪郭式の三種に類型化されている。

本書「主な縄張の類型」

第二章 城にふさわしい土地を選ぶ

城には多くの人が住まうため、当然飲料用水の確保は必須。
第二章で解説される「水源」の確保は興味深いです。

水源は、城内にあるのが理想である。戦国時代に徳川領であった遠江国の二俣城では、城下を流れる天竜川を水源にしていたが、水を汲み上げる井戸櫓を武田信玄に破壊されたため、飲用水が入手できなくなって降伏開城している。

本書「水の利活用が城の命運を左右する」


第三章 縄張に基づき曲輪を置く

曲輪とは「くるわ」と読みます。

我が国の城を堅固にする概念として注目されるのが、「曲輪」である。曲輪とは、堀で区切った削平地のことをいう。

本書「中国由来の堅固三段と日本独自の曲輪」

第一章でも解説されているとおり、「縄張」 は、 この曲輪の配置を決める際に、実際に築城が予定されている土地で縄を張ったことに由来するのだそうです。
縄張と曲輪で守られた城も、時には自らを焼き捨て、降伏を否定する意思を表すこともあったのだそうです。

城は奪われそうになった段階で、自ら火をつけて逃亡することもある。これを「自焼」といい、城を離れる意味の「没落」と合わせ、「自焼没落」という。自らの城を焼き払うことで、降伏を否定し、敵に城を利用させない決意を伝えたのだった。

本書「最後の手段・自焼」

第四章 曲輪に設けられた軍備の数々


時代劇や映画でよくみられる、城壁にうがたれた穴から矢を射る場面。
それを「横矢」というのですね。

横矢は、曲折と同義である。曲輪の塁線などに折をつけ、攻めてくる敵を側射できるようにするのが横矢であり、横矢がかりともいう。横矢の基本は、出隅・入隅・屛風折・横矢桝形・横矢邪・隅欠・隅落などである。

本書「効果的な横矢をつくり出せ」

第五章 城郭を形づくる基礎


城のシンボルの一つとも言えるのが「石垣」ではないでしょうか。
当時は重機等も当然なく、人の手が石垣を積み上げます。
では、その名工とは?

さて、こうした石垣を積んだのは石工である。なかでも、穴太衆という石工の集団が著名で、いまや石工の代名詞ともなっている。穴太衆は、もともと比叡山の東麓にあたる近江国の穴太を本拠とした石工の集団である。

本書「築城名人の代名詞・穴太衆」


第六章 攻防に活躍する建築物


城には、敵の侵入を防ぐ様々な仕掛けがあります。「門」や「櫓」はその代表ですし、「櫓」はもともと「矢倉」と書いたのだそうです。
そして、敵の攻撃に対する最終の防波堤が「橋」です。
橋に関する解説は特に興味深いです。

橋は、城内に侵入しようとする敵を最後に防ぐ場所でもあった。そこで、できる限り時間をかけて橋を渡らせるため、橋を長くしたのが長橋である。わざと長い橋を架けることで、敵の進軍距離をかせぎ、城内から射撃しようとしたのである。館林城では、搦め手の堀が沼に面する場所に長橋を架けていた。

本書「敵を防ぐための様々な橋」

第七章 軍備を駆使して城を守る


第七章では、築かれた城をいかに守るかという視点から解説されます。
特に「兵糧」に関する記載、面白いです。

籠城に備えて、城には米蔵があり、兵糧が貯蔵されていた。最低でも三か月としているが、戦国時代には、一年から二年も続く籠城戦もあった。仮に三か月分の兵糧しか蓄えていなかったら、後詰がなければ落城ないし開城することになる。兵糧は米だけでなく、塩や海藻なども非常食として備蓄されていた。津山城や福山城には、塩櫓や荒和布櫓が存在している。荒和布というのは、海藻のことである。

本書「米と水だけでは戦えない」

第八章 堅牢な城をいかに落とすか


ここまで、膨大な考証と資料を用いて詳述されてきた堅固な「城」。
最終章では、その城をいかに「落とすか」(!)というアクロバティックなまとめが行われます。
果たして、「城」はどのように落とされるのか、崩されるのか?
ぜひ、ご自身の目で確かめてみてください!


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