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101: 未知への飛翔〜PART.1

はじめに、私の手持ちのDVDではこのエピソードは2時間の1話として収録してある。本稿もこれに倣い前後編に分けずに書こうかと思ったが、書き出すと長くなってきたのでテレビシリーズに倣って前後編に分けることにする。ただし区切りはテキトーでいい加減であることをお断りしておく。

24世紀の暦

物語はCaptain’s log(恒星日誌、艦長日誌)という艦長の独り語りからスタートする。この始まり方は一つのパターンで、今後のエピソードでも頻繁に使われる。
記念すべき惑星連邦のギャラクシー級最新鋭艦「エンタープライズ号」の初任務はStardate(宇宙暦) 41153.7 となっている。ちなみにアメリカでのテレビ放送の日付は1987年9月28日。宇宙暦41000.0番台は西暦で言うと2364年らしい。ちなみにシーズン2の宇宙歴は42000.0番台となっており、これは西暦2365年にあたる。以降のシーズンも同様に西暦に換算できるようである。

あらためて考えてみると現在我々が使っている暦というのはいわば地球専用で、太陽と地球との関係で生じている昼夜を基本としている。宇宙に出れば昼夜はなくなるわけだし、別の惑星に行けば昼夜の間隔は異なるので、そもそも我々の時間的な感覚は通じないと考えられる。宇宙暦のような新しい暦が生まれることは必然なのだろう。
しかしシリーズを通して異星人との交渉ごとの際などに「3時間後に」と約束していたりするのは、果たして異星人に対して通用しているのだろうかと疑問に思ってしまう。もっとも新しいなんらかの基準でも見付けない限り、新しい時間の感覚など生み出しようもないけれど…。

エンタープライズ・クルー

Captain’s logを語りながら暗がりからピカード艦長の姿が映される。さすがに若い!艦長を演じているイギリス人俳優のPatrick Stewartは1940年生まれなので、1987年の放送時は47歳くらいだろうか。シェイクスピア劇を得意とする名優であり、「Sir」の称号を持つ英国紳士でもある。セリフの英語もキングス・イングリッシュ(クイーンズ・イングリッシュ?)で、「can’t」の発音は「キャント」ではなく「カァント」となる。
日本ではなぜか禿頭の男は何かとイジられたり、女性からは敬遠されることもあるが、彼は3度も結婚しているなかなかのプレイボーイのようである。欧米では髪の毛が貧弱なことは関係ないのか、それともより魅力的に映るのか、その辺はよく知らないが、ピカード艦長の役どころ通りの人物像なら眉から上がどうあれ、かなりセクシーで魅力的だなぁと思う。

ピカード艦長自身が独り語りの中で「慣れてき」ていると語っていることから、エンタープライズに配置されて少し経っていることが伺える。ただしライカー副長やラフォージといったレギュラーメンバーの一部がまだ配置されていない。ちなみにこの第1シーズンのレギュラーキャストは以下。

ピカード艦長(Jean-Luc Picard)
パトリック・スチュワート(Patrick Stewart)

ライカー副長(William Thomas Riker)
ジョナサン・フレイクス(Jonathan Frakes)

データ少佐(Data)
ブレント・スパイナー(Brent Spiner)

ドクター・クラッシャー(Beverly Crusher)
ゲイツ・マクファーデン(Gates McFadden)

ジョーディ・ラフォージ(Geordi La Forge)
レヴァー・バートン(LeVar Burton)

ウォーフ(Worf)
マイケル・ドーン(Michael Dorn)

カウンセラー・トロイ(Deanna Troi)
マリーナ・サーティス(Marina Sirtis)

ターシャ(Natasha Yar)
デニーズ・クロスビー(Denise Crosby)

ウェスリー(Wesley Robert Crusher)
ウィル・ウィートン(Wil Wheaton)

レギュラーキャストについては今後もほぼ変更がないが、第2シーズンのみドクター・クラッシャーがいなくなりドクター・ポラスキーになる。ただし第2シーズンにおいても彼女は正式にはレギュラーでなく、毎回ゲストとしてクレジットされている。演じているのはDiana Muldaur(ダイアナ・マルドア)で、Star Trek: The Original Siries(TOS)でも2度ゲスト出演している。TOS出演時はもちろんTNGの時よりも若く、碧い瞳の非常に美しい女優さんである。

第3シーズンからは再びドクター・クラッシャーが復活する。

神出鬼没:Q

TNGにおいてQは非常に重要なキャラクターであり、その登場はいつも唐突である。なんの脈絡もなく登場させることができるのがQのいいところかもしれない。神出鬼没の全てを超越した存在として描かれるのがQである。Qにできないことはないし、どんなお話でも作ることができるだろう。「ネタに困ったときのQ」と思われていたかどうかは知らないが、どんなストーリーでもOKと言えばもうひとつ、TNGにはホロデッキという飛び道具もある。そのあたりについての話はおいおいすることになるだろう。

Qを演じるJohn de Lancie(ジョン・デ・ランシー)は少しコミカルな顔立ちのように見える。ちょっとトム・ハンクスに似ていると思うのは私だけだろうか。その顔立ちとQのふざけた振る舞いがとてもマッチしているように思う。このTNGにはもちろんQ役として今後ちょくちょく登場して楽しませてくれる。190cmを超える長身で見栄えがする役者さんである。アメリカでは主にテレビ俳優として知られているようである。

このエピソード中でもQは突然に派手に登場する。登場時には人間の昔風の衣装を纏っているが、その衣装の詳細はちょっとよくわからない。これより後のエピソードでナポレオンの衣装が登場するのだが、どうもそれとも様子が違っている。金属らしき胴をつけているところを見ると騎士の時代のものと想像できる。
そして最初の服装から突然変身し、次は第2次世界大戦の時のフランス軍の軍服らしい。左胸にフランス国旗のトリコロールのワッペンがあるのでフランス軍で間違いなさそうだ。胸にたくさんつけている部隊章はこのお話用に創作されたもののようである。最後は21世紀の軍人の衣装らしい。21世紀は「薬物によって軍を支配した」らしく、胸に薬物を吸引できるノーズがついている。
このあたりの展開も衣装を時代順に変えながら地球人の24世紀までの変遷を説明している。私たちの暮らす現在から24世紀までの地球はどうやらかなり暗黒の時代っぽいことが伺える。

Qが出てきたのは無知で残虐すぎる人間を地球に帰すためらしく、思いつきで人間の残虐さを裁判で裁くことになる。法廷のシーンでは被告人席のバックに赤地に黒の猛禽類の鳥のマークがある。鷲のデザインはローマ帝国時代から使われ、ヨーロッパを中心に諸国で国章や紋章に使用されてきた。ドイツではライヒスアドラー(ドイツ語:Reichsadler)として古くから使用され、現在でもドイツ連邦共和国の国章として使用されている。第2次世界大戦時にはナチスが、ライヒスアドラーにハーケンクロイツを掴ませたデザインを赤地に黒で抜いて使用した。ここに登場するこのマークはそれを連想させ得るに十分な要素を持っている。同時にどうやら理不尽な展開になりそうな予感を与えている。
このシーンはピカード艦長のセリフによれば「21世紀半ばに核戦争があった後の法廷」で、その後のシーンでQが「2079年の法廷」であると言っている。なるほど登場する警備兵は登場時のQが変身した21世紀の軍人と同じ軍服を着用している。さらに殺される直前には胸の薬物吸入器(?)から一服するというブラック・ユーモアのおまけ付きである。

新スタートレック パイロット版

このエピソードはパイロット版として制作された側面もあり、エンタープライズ号や24世紀の世界(宇宙?)を紹介する面が強い。過去(私たちが暮らす現代のことだが笑)から学び、成長したということらしい。またエンタープライズD号(NCC-1701-D)はワープ9.8まで加速でき、円盤部を分離できる仕様になっている。特に円盤部の分離については驚異の機能といった感じで時間をかけて紹介されている。

当初、制作側は1時間ものでいきたいという意向であったが、パラマウント側に2時間の枠で押し切られたという背景もあったらしいので、1時間分は付け足しということになる。幾分冗長な感じがするのは致し方なしというところか。
おそらくこの前編はほぼ付け足したものではないだろうか。ほとんどの場面が説明的な感じがする。登場したQの変身シーンも特に必要そうではないし、Qの鎖帷子との追いかけっこもちょっとよくわからない。Qは神出鬼没。鬼ごっこをする必要はまったくない。

だが冗長な部分に面白みがまったくないかというとそうでもない。最初期ならではの面白みが見られる。

クリンゴン帝国
Star Trek: The Original Siries(TOS)ではクリンゴン帝国は宿敵とされていたが、24世紀では同盟が結ばれており、クルーとしてウォーフが乗船している。もっともウォーフの生い立ちについてはちょっと特殊(後に明かされるが、孤児になり人間に育てられている)なので、クリンゴン帝国と同盟が結ばれていなくても艦隊に入っていたかもしれない。そのウォーフの特殊メイクもシリーズを通して変遷していく。このエピソードでは後期のメイクより控えめで、ちょっと目元のメイクが異なるのか、眠そうな印象の仕上がりになっているように見える。後期の方がより精悍になっているので、こうして遡って見てみると可愛らしい印象すらある。

ナターシャ・ヤー
クルーとしては第1シーズンにしか登場しないターシャも良い。TOSと比較するとクルーに女性が多く入っている。主要メンバーの女性はみな美人で、ターシャのみ髪が短くボーイッシュだがやはり美人には変わりない。演じているのはDenise Crosby(デニーズ・クロスビー)。名前を見てピンとくる人は結構な昭和人だが、そう、Bing Crosby(ビング・クロスビー)のお孫さんである。彼の歌う「ホワイト・クリスマス」は今でもクリスマスソングの定番だろう。毎年クリスマス時期になると、自分のおじいさんの歌うクリスマスソングが聞こえてくるなんていったいどんな気分なんだろうか。

レギュラーメンバー以外の乗員たち
円盤部の切り離しに伴う乗員の移動のシーンでは、ミニのワンピースのような制服を着ている男性クルーが映っている。かなり涼しそうな制服だが、如何せんミニのワンピースなので、少し髪が薄くなりかけた男性が着用していると、私なんかは昔大阪の地下鉄で見かけた女装趣味の男性が思い出されて、決してお似合いだとは思えないのだが…。
またこの避難シーンではバルカン人と思われる容姿の親子が出ていたり、クルー以外の人の服装が薄っぺらいヒラヒラの服が多くて1970〜80年代の一部のミュージシャンのようだったりする。廊下で誘導している野生的な顔立ちの黒人クルーは今後のエピソードでもよく見かける顔で妙に親近感があったりする。彼は準レギュラーと言っていいと思うのだが役の名前も役者の名前もわからない。保安部員としてよく見かける。

スタートレックの世界観

全体的にはやっぱり古臭い感がするのだが実際に古いドラマだから仕方ない。セットや服装、映像の技術はそういったところはあるものの、役者の芝居や物語が持つ世界観などには古臭さは微塵も感じられない。
この雰囲気を作り出す世界観は、スタートレック・シリーズの総指揮を執ったGene Roddenberry(ジーン・ロッデンベリー)によって、かなりしっかりと細かい部分まで創られている。彼はこのスタートレック・シリーズの生みの親である。未来は差別、貧困、偏見はもちろんなくなり、人々は物欲や名誉欲などからも解放されているという薔薇色の世界観である。残念ながら彼はこのTNGシリーズの完結を見ることなくこの世を去っている。

とまれ、このエピソードの本当のストーリーはこの後にあることは間違いない。

Engage.

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