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同じだけど違う私たち、違うけど同じ私たち

アメリカのミネソタ州ミネアポリスでジョージフロイドさんが警察から過剰な拘束をうけ亡くなられた事件について。

この事件を発端に、全米各地で多大なデモおよび暴動へと発展している。

このような人種差別について、日本人が自分のコミュニティ内で経験することはほぼないだろう(留学生バイトや外国人局での自殺・ハンストなどはあるが、日本人は差別や暴力をする側である)

人々がこれほどまでに怒り、声をあげ、行動する理由や背景には長い歴史があり、今何が起こっているのかわかりにくいかもしれない。

私自身勉強不足な部分もあるかもしれないが、私の知っていることや経験したことをベースに書いていこうと思う。

もしこの記事を読んで何か心が動かされたなら、最後に人種差別に関する説明や記事、参考資料のURLを載せるので、ぜひ一つ見てみてほしい。

これをきっかけに色々なことを知ることで、差別を身近な出来事にしてもらえたら嬉しい。


繰り返される事件

まず、今回のフロイドさんの死だけで人々は怒っているわけではない。

このような事件は、全米各地で年間何件も起きている。

ケンタッキー州では先日誤った住所に踏み込んだ警察官数名によって、住民が射殺された。

2014年は今回のフロイドさんのように警察官から過剰な拘束と暴力をうけて窒息死した事件や警察官に撃たれたり、轢き殺された子どもの事件もある。

そのたびに警察官によるマイノリティへの過剰な拘束や暴力についてニュースになるが、実際に過失致死をおかした警察官は厳重な処罰をされたとはいえず、「その場限りの対処をした」感があったのだ。

「急に動いたから」「ポケットに手をいれた」「不審な動きをした」「暴力的な対応をしそうだった」

そんな理由が記事になる。

今回は周囲の人が悪質と判断し、鮮明な動画が早い段階で拡散されたことにより、明らかに警察官側に過失があることが判明した。

また、所属していた警察署自体も問題のあった警官に事情聴取などをする前に早々に解雇し、関係のなさをアピールしたことも火に油を注いだといえる。州政府も警察署も人々のデモが過激化してから殺人での立件を検討し始めたのだから、完全に後手に回っている。

今回のデモがここまで激化しているのは、警察や州政府などの公的権威が明らかな職務乱用と理由のない暴力に対する原因究明やその責任をうやむやにして終わらされることに人々が我慢しきれなくなったのだろうと推察する。

格差社会とマイノリティ

また、これは個人の見解だが、コロナが感染爆発を起こしたことで一番身体的・経済的にダメージを受けているのは、アメリカンアフリカンやヒスパニックなどのマイノリティだと言われていることも無関係ではないと推察する。

隔離日記で書いている通り、リモートワークできない職業に就いている人は圧倒的にマイノリティが多い。

隔離期間中のホールフーズにいくと、スーパー内で買い物しているたちのほとんどが有色人種かつアマゾンのカードをぶら下げていて、オンラインで買い物代行をやっている人だったということもある。

虐げられた人たちの怒りはまた弱い方へ向かう。

子ども、女性、ヒスパニックやアジア人などの別のマイノリティ、LGBTQの人たち。

自分たちがされたことをやり返すように、明確な理由などない攻撃と暴力が繰り返される

私はドイツにいて、白人から中東系やアフリカ系への差別や、中東系・アフリカ系からアジア人への差別を経験しているので、ニューヨークはあまり差別がない場所だと最初感じた。

しかし、ミネソタやケンタッキー、ウィスコンシンなど田舎に行けば行くほど、有色人種は街中にはいなくなり、郊外に小さくコミュニティを作っている。

それぞれが生きる場所が分断されていると明らかに感じる。

日本人の上司と私は、そのような地域ではただのよそ者だが、二人で外食するために街のレストランに入るとジロジロみられたり、変なはやし声をかけられることもある。

気にしすぎかもしれないが、奥まった席や周りの地元民のグループから離された席に通されることもある。

毎日毎日これが続くとして、私たちはまっすぐに生きていけるだろうか。

日頃燻っていた不満や反抗心などの負の感情が、この事件をきっかけに爆発したのではないだろうか。


This is America, but is this ideal America?

アメリカは広く、いろんな人たちが住んでいる。

合衆国というだけあって、州ごとに法律が違い、市によってルールが違い、コミュニティによって住み分けされている。

一方で、私たちは同じ人間で、愛すべき家族や友人がいて、この世界に住んでいる。

違う言語や文化、価値観、信じるものを持って、それぞれの幸せを追いかけて生きている。

私たちの肌の色や出自や信じるものが偏見や暴力性と結びついて、個人のアイデンティティになっていくべきではない。

少し離れた日本にいる私たちができることは、最初に書いた通り、知ることだ。

差別のない社会は理想だが、日本だって様々な差別に苦しむ人はいる。

私は日本にいればマジョリティで差別する側だが、自分が差別されない環境と立場にいるからといって、横で起きていることに対して関係ないフリや見ないフリをしていいわけではない。

私自身、そんなに大した人間でもなく、自分の中にある偏見に驚くことがある。

いくつになっても、どこにいても、昨日まではそうだったと知って、明日は昨日よりほんの少し、隣の人に優しく生きていきたい。

私はそう思うけれど、あなたはどうですか。


<差別に関する資料一例>

*あくまで個人的なおすすめ

●アメリカの歴史についてわかりやすくまとめている、Tetsuro Miyatake さんのnote記事

→記事長め。今回の騒動の内容を包括的に知りたい人、しっかり読みたい人向け。資料も網羅されているので、とてもおすすめ。

https://note.com/offtopic/n/n77a5f9de2587

●ニューヨークのセントラルパークで起こった暴行事件をもとに作られたNetflix配信ドラマ「ボクらを見る目」

→パート4までで、1パートあたり1時間程度なので見やすい。stay homeのお供に。こんなことがあるという一例として。


●Netflix「クィアアイ」シーズン1 エピソード3:警官による黒人への職質に対する反応と両者の会話

→色々知りたいけど、ショッキングな映像や文章を見るのが辛い人やライトに知りたい人向け。日本と異なる職質の様子や、それをマイノリティがどう感じているかがよくわかる回。


●News Week Japan 渡辺由佳里さんの「アメリカで黒人の子供たちがたたき込まれる警官への接し方」

→2017年の記事だが、今の出来事と通じるものがある。2019年に映画化されている小説「the hate you give(邦題:ヘイト・ユー・ギブ)」についても言及。

https://www.newsweekjapan.jp/amp/watanabe/2017/11/post-39.php?page=1



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