お年寄りに「役割」を与えるのは難しかった。でも、ポジションを取ってもらうのは意外と簡単。
僕らが介護施設を始める前に、いくつかの先進的な取り組みをしている施設へ見学によく出かけていました。
そこでよく聞いたのは、「立つ瀬」を与えるとか、「役割」を与えるという話でした。
取り組みを見ていて、本当にその通りだと思い、僕らもそれを意識してデイサービスをスタートさせました。
でも、「役割」を与えるといっても何をすればいいのか?
何を提供すればいいのか?と、正直すごく悩みました。
赤ちゃんのいる老人介護デイサービスをやろうということは、もともと決めていたので、それならば、お年寄りには子育てをお手伝いしてもらう役になってもらおうと、始めは考えていました。
ただ、具体的な作業などは特にあるわけもなく、一緒に過ごす時間だけが増えていきました。
僕は、物足りなさを感じていました。赤ちゃんとお年寄りが何かやった方がいいのではないか。赤ちゃんと一緒にやれるレクはないか?赤ちゃんと一緒にやれる体操はないか?
そんなことを必死で考えていました。
赤ちゃんを利用して、お年寄りに役割を与えようということに必死でした。
そんな気持ちとは裏腹に、時間は過ぎて行きました。
時間の経過によってもたらされるものも確実にある。
そんなある日、おばあちゃんのひとりがこんなことを言いました。
「なんだか今日は、妙に静かだねぇ」
そういえば・・・、
なんとその日はシフトの関係で、赤ちゃんや子どもが一人もいなかったのです。すぐさま、そのおばあちゃんに、
「今日は、こどもたち誰も来てないからかも!」と伝えました。
施設全体が、「そういわれてみればそうだ!」みたいな空気になりました。
その出来事は、確か、3年目に突入したくらいの時期だったと思います。
もはや、赤ちゃんがいることが「自然な状態」になっていたようでした。
家族的なポジショニングが適用されやすい集まり。
僕の経験上、学生時代の自分のポジションみたいなものって、クラス替えをしても、小学生から中学生になっても、中学生から高校生になっても、なぜかそんなに変化しないですよね。だいたい同じようなポジションに収まる。
それって、クラスの構成要員のタイプが、ある一定数集まる場合、だいたい同じような感じになるんじゃないかと。だから、自分も同じようなポジションに収まるみたいな。
で、もしかして、「赤ちゃんがいる」ということだけで、お年寄りは自動的に「お年寄りのポジション」を取るのではないかと思うようになりました。
というのは、うちの施設では、テレビのニュースで見かけるようなお年寄りをうまくコントロールできないことが原因なのかもみたいな介護現場のトラブルがほとんど発生しておらず、それは何故なのか?と、考えることが多々あったためです。
きっと、こういうことなんだなと。
家や家族をイメージしやすい介護の現場で、
赤ちゃんや子どもがいない状態というのは、たぶん、「わがままを言うポジション」というか「こどもとして扱われるポジション」が空いてしまうんだなと。
スタッフとお年寄りのどちらがそのポジションを取るか?というと、100%お年寄りですよね。
そうなったときに想像できる、トラブルというか仕事量は、すごく多そうですよね・・・。
もしかして、赤ちゃんがいることによって、仕事量が減るなんて可能性もありますね。面白い。
ポジションの理論は、結構最近、気に入ってます。
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