2年夏学

悔しい思いをしつつも、どこか割り切った気持ちがあったのか、夏芸会での負けは尾を引かなかった。
それどころか夏学のモチベーションはぐんぐん上がっていった。

一個下の子たちにしたら初めて見るデスコアラの漫才。見せつけてやろうと。

まだこの頃はタクラマカンオーケストラや囲碁将棋に憧れてて、しゃべくり至上主義を掲げていた。自分のツッコミはしゃべくりでこそ光ると考えていた。
まっこれは今でもそうなんだけど。
題材は戦隊ヒーローが教育上、卑怯で良くないっていう漫才。
その夏ガオレンジャー見まくってたからこのネタ書いた。

初ネタ見せそこそこウケた。
そのウケがようやく漫才復帰した僕への退院祝いのような錯覚だったとはこのライブが終わってから気づくことになる。

その初ネタ見せの体感は僕を目に見える形で天狗にした。執行についてから3回目の香盤決め、演者長に対して僕は「トリじゃなく企画直後くらいならトップバッターに行ってやるよ」と、半分拗ね気味に言い放った。
今だから言う。アナログ本当にごめん。

ライブ準備の方では、初の学外ライブということもあり、会場の下見があった。
その下見の日までに毎日のように夜期ミーティングを行なっていた。
毎日部会して、ネタ練って作業して期ミーティングして寝て、また次の日には部会がっていうルーティンに誰も文句を言わなかったのは、夏合宿での件から徐々に団結を始めた証だった。

裏方二役が死ぬ気という言葉を多用してくれたことを今でも感謝している。
自信満々で始まり、自信を完全に喪失させられた僕の前期を埋めるように、みんなが徐々についてきてくれている気がしたから。

この夏学のライブテーマを「本気」にした。本当は「死ぬ気」にしたかったけど、全体で打ち出すにはあまりにむごい言葉になっちゃうので、ちょっとマイルドに「本気」
この夏のはらなおの部屋での期ミーティングの日々は一生忘れないと思う。

初めての学外ライブは正直言っててんやわんや。次にみんなが何をすればいいか常に指示しなきゃいけないけど、自分の頭の中ですべきことが大量にこんがらがる。先輩に聞けばサポートをしてくれるけど、3回目のライブ、どれだけ自立できるかに落研の今後がかかってた。もちろん成功の結果を持って。執行期の同期はとんでもなく神経を使った日々だったと思う。それでも割と頼もしい顔をしてたので楽だった。

この夏学期間は後輩たちを家に泊めてたけど、この日々も最高に楽しかった。いまでも地獄の炎天下でのご依頼を終え、熱中症気味になってる中で、永遠家でちょいアンにひょっこりはんをやらせて爆笑していた風景が思い浮かぶ。

当日になったら一日中忙しい。前日も忙しかったのに、ライブ当日ってなんであんな忙しいんだろう。
ずっと前に立っているのが当たり前なんだけど、途中ストレスがピークになると、前に立っている僕に視線を送る落研部員に「何見てんだよぶっ飛ばすぞ」っていう感情が出てくる。
だいぶ追い込まれていたんだな。

1年生はそれぞれネタ、大喜利合コンとか自分の出番を全力で練っていたように思える。矢野が本番ギリギリまで悩みきっていたのを覚えているから。
流石の3年生は夏芸会を終え、悔しい思いをネタにぶつけていたのを感じた。

そのおかげもあってか、前期の2ライブに比べると手応えのあるライブだった。

打ち上げ、本当に楽しそうに居酒屋で話している46.47.48期を見ていたらボロクソに泣いていた。全体の場で泣いている部長としていじられまくったけど、それでも涙が引かなかった。
もちろん前期の鬱憤の中で、やっとみんなが満足したライブを終えている達成感や多幸感に感動して泣いた。

けどそれだけじゃなくて、自分だけがその達成感を感じられなかったことへの悔しさもあった。
大口叩いて名乗り出たトップバッター。どちらかといえばすべった。ずっと俺すべってるな。
みんなは俺の言うように死ぬ気でやってなんとか成果を出したのに、俺は出せなかった。
夏の公約で言えば、俺はこの場で死ななくてはいけなかった。


まだまだ悔しい僕の落研生活は続く

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