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理想の夢と現実⑦

気が付くと星空の下に一人立っていた。ここはプラネタリウムかと見間違うくらい、街灯や邪魔な光がないから空気が澄んでいて、沢山の星が見える。夜風が気持ちいい。
ここは夢なのかと周りを見渡すと広大な丘に僕を取り巻くように沢山の古びた扉があちこちに点在していた。その扉は宙に浮いてる物もあれば、丘に鎮座している物もある。
ふと視線を感じた為見ると、前の方に黒いローブを身にまとい、三角帽子を目深に被った人が立っていた。背格好から見るに大人だが、その格好はまるで映画に登場する魔法使いのようだ。この世界が夢じゃなかったら、コスプレか痛い人に間違われるだろうなと思った。

「あなたが見たい夢を見せてくれる方ですか?」

思わず聞いていた。その魔法使いの格好をした人は口元に笑みを微かに浮かべ頷いた。そして今度は魔法使いの格好をした人が尋ねてきた。

「あなたが“時代”さんですか?お待ちしておりました。ご存知かと思いますが、私は夢を提供する者…言い換えれば案内人です。」

僕はニックネームが思いつかず、時代劇が好きと言う事で、“時代”にした。我ながら安易な考えだ。

「“時代”さんが見たい夢をしっかり頭で思い浮かべましたか?思い浮かべているのであれば、案内致します。」

僕はこくりと頷いた。すると

「では、私に着いてきて下さい。」

と言い、ランタンのような物を片手に持ちながら幾つもある扉の中の一つを目指して歩き出した。真ん中の扉だった。その扉に辿り着いた時、最後に案内人は言った。

「もう一度言いますが、私は夢を提供する者です。ですので、私は“時代”さんだけでなく他の方の夢に干渉することはありません。夢は等しく万物に提供されるものです。ですので、来る者拒まず去るもの追わずは私のモットーと思っていただければ充分です。ただ、コレだけは理解しておいて下さい。夢は提供しますが、時に夢の主…ここでは“時代”さんの思う様な展開にならない場合もあります。それだけはご容赦ください。ご理解頂けた方から扉の向こうへ案内させて頂いております。」

この案内人の言う事はご尤もだ。人間誰しも生きていれば良い夢も悪い夢も見る。そこでは思い通りに行く夢もあれば、そうはいかない夢もある。僕はすぐにOKを出した。

「…それでは、夢の世界を楽しんでください。行ってらっしゃいませ。」

扉が開き、僕は吸い込まれるように扉の中へと入って行った。

⑧へ続く…

(私の体調が優れず、ネタはあるもののストーリー構成が上手く進まないため、時々雑談入ります。ご容赦ください。)

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