草むら〜朝露と赤ちゃんバッタ〜
畑の畝間、ちいさな草むらを ゆっくり 裸足で あるきます。
朝露にぬれそぼった その畝間は ひんやりと心地よく
あるくたびに いろいろな草のにおいが 爽やかに鼻孔をくすぐります。
この梅雨の間に ぐんと伸びた オヒシバたちが
地球色の 朝露を その細い葉に たくさんのせて
ひときわ かがやきを はなっていました。
そっと かがんで その朝露たちに みとれていると
ふと 視線の奥に息づく ちいさな何かに 目をうばわれました。
(お、おちびちゃん.....!)
朝露ほどのおおきさの ちいさなちいさな 赤ちゃんバッタが
不思議そうな顔をして こちらをじっと みています。
よくみると あちらこちらに たくさんの赤ちゃんバッタたち。
そのちいさな いのちに 完全に!こころをぜんぶ わしづかみにされて
強くなりはじめた おひさまの日差しも わすれてしまうほど 夢中になって みつめていると
赤ちゃんバッタがもう1匹 その細いオヒシバの葉っぱに とんできました。
(バッタ長男)「どしたん? なに見よるん?(どうしたの、何をみているの?)」
(バッタ次男)「なんや たのしげな おっきょい いきものがおるがな。(なんか楽しそうにしている おおきな生き物がいるよ)」
そのままじっと 2匹を みていると
さらに もう1匹 ぴょんと葉っぱに とびのってきました。
(バッタ三男)「なんがでっきょん? ぼくもよせて!(何してるの? ぼくも仲間にいれて)」
このちいさな 草むらに どれだけたくさんの
うつくしいものが 息づいているのでしょう。
そして、オヒシバがどれほど 芸術的に 朝露をたたえることか。
水をあげずに 育てる このちいさな畑は
天からの雨と 草むらたちがあつめる朝露で
1年中 地中はしっとり、野菜たちも 青々としています。
注目をあびることなく とおりすぎてしまう ひとつひとつの草むらが
はぐくみ あたえてくれるものの おおきさよ......
可愛いらしい ちいさな3匹と、夏のはじまりの朝を迎えながら、そんなことを 想った日。