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シュロ、その黒のなかにあるもの
たまたま たちよった ちいさな公園
空に おひさまは まばゆくて
その深い 青のなか ひときわ かがやく
シュロの木たちが 葉っぱのうたを
風にのせて 手招きをしていました
耳をつんざく セミたちの 大合唱と
おひさまの 強い熱を 全身に受け止めながら
芝生を まっすぐ つきすすみ
わたしは はじめて まじまじと
天高くそびえる シュロたちを みつめました
熊手のような おおきな葉っぱを
まるで 洗濯物のように
ばっさばっさと 風になびかせ
シュロは あわい黄色のお花を さかせていました
蜂たちは 強い風も気にせずに お花のまわりを とびかいます
象の足のような したしみのある灰色の幹は
まっすぐのようでいて しなやかにうねり
その太い幹の奥で 太陽は輝きを放っています
シュロの木陰に 寝そべって
熊手のような葉っぱたちの 奏でる音を ききました
ちいさな虹が 葉っぱのうえを彩って
シュロには かがやかしい 後光が差しています
まるで それは ひかりとひとつの 生きもののようでした
シュロは ひかりを背負い
みずからを 黒に染め
ひかりを さらに 強めていきます
とても やさしい おだやかな黒。
ひかりのなかで その黒たちは
ひときわ まぶしく
シュロは 影とひとつになりました
ひかりは シュロと影を だきしめ
シュロと影もまた ひかりを 慈しんでいるようでした。