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【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】沖縄県西表島の「兵隊の霊が出るビーチ」

美しいはいみだ浜の悲しい歴史

 沖縄本土に次いで沖縄県で2番目の面積を誇る西表島は、全国のダイバーの憧れの的となっている。紫外線をたっぷりと含んだ太陽光が降り注ぎ、海の色が碧色に輝く初夏を迎えると、ダイビング・ポイントには数多くのダイバーがやって来る。ダイバーの目当ては、島の北側に拡がる珊瑚礁やカラフルな色をした熱帯魚だ。しかし、ダイバーに人気のある北側の海とは対照的に、島の南側にあるビーチでダイバーの姿を見ることはない。

人も少ないビーチ

 ある日、石垣市内にあるスーパー・マーケットで地元の人たちと会話をしていると、西表島出身で5歳の頃から素潜りをしているという与那嶺勇二(仮名)さんが信じられないような話を始めた。

「西表島の南側に行くと、はいみだ浜というビーチがあります。このビーチは白浜が延々と続いているので、観光客に人気のあるところです。しかし、ここには土地の人しか知らないいわくがあるのです。今から70年以上前のことになりますが、戦時中、西表島ではマラリアなどで多くの兵隊さんが亡くなりました。当時、島にはマトモな火葬場がなかったので、遺体をこのビーチに埋葬していたのです。実は、夏にもなれば観光客の溺死体がビーチに打ち上げられているのですが、首がないものや、両腕がないものばかりなのですよね…。年配の人たちは、『亡くなった兵隊さんの霊が、観光客をおびき寄せているんだよ....』と言っています。私たちは、オジィやオバァの言いつけを守っているので、はいみだ浜では絶対に泳ぎません!!」

浜へ向かう道
ここへ遺体が打ち上げられていたという
現在は休憩所もある地元に愛される場所に

 兵隊の霊が、本当にいるかどうかは定かではないが、地元の人たちの言葉には、耳を傾けた方がいいだろう。『自分は大丈夫!!』というのが一番アブナイ。

写真・文◎酒井透(サカイトオル)
 東京都生まれ。写真家・近未来探険家。
 小学校高学年の頃より趣味として始めた鉄道写真をきっかけとして、カメラと写真の世界にのめり込む。大学卒業後は、ザイール(現:コンゴ民主共和国)やパリなどに滞在し、ザイールのポピュラー音楽やサプール(Sapeur)を精力的に取材。帰国後は、写真週刊誌「FOCUS」(新潮社)の専属カメラマンとして5年間活動。1989年に東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(警察庁広域重要指定第117号事件)の犯人である宮崎勤をスクープ写する。
 90年代からは、アフロビートの創始者でありアクティビストでもあったナイジェリアのミュージシャン フェラ・クティ(故人)やエッジの効いた人物、ラブドール、廃墟、奇祭、国内外のB級(珍)スポットなど、他の写真家が取り上げないものをテーマとして追い続けている。現在、プログラミング言語のPythonなどを学習中。今後、AI方面にシフトしていくものと考えられる。
 著書に「中国B級スポットおもしろ大全」(新潮社)「未来世紀軍艦島」(ミリオン出版)、「軍艦島に行く―日本最後の絶景」(笠倉出版社 )などがある。

https://twitter.com/toru_sakai