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【フォト・ドキュメント】パンクムーブメントの軌跡【第19回】
東京ロッカーズと呼ばれるパンクムーブメント以降、ポスト・パンクの精神を受け継ぐ様々なバンドが誕生した。その中でも一際異彩を放ったバンドがあった。「ノン・バンド」だ。70年代末の結成初期から現場を目撃してきた地引雄一氏がその魅力を語る——
80年代初頭、絶頂期で消えた伝説のバンド
NON・BAND
消滅と復活
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女性ロッカーの旗手
どんどこどんどこ鳴る青森ねぶた囃子のリズムからはじまるドラム、フリージャズのように音階を縦横無尽に遊ばせるヴァイオリン、そして甘え声にも似た独特の歌声と豊かな表現力で魅せるボーカル。
ノン・バンドのファーストアルバム「NON BAND」(82年)の冒頭曲「ダンカン・ダンシン」である。土着性のある世界観でありながらも、アドリブに近いその先鋭的な表現はロックという概念を逸脱していた。
「80〜81年の時代、日本のパンクシーンの土台を築いた東京ロッカーズの活動がひと段落した頃、新しい第2世代のバンドが色々と出てきてさ、その中には女性ロッカー達もいて、特に突出したバンドがノン・バンドなんだ」
ノン・バンドは女性ボーカル兼ベースのノンを中心に79年に結成されたパンク・ニューウェイブバンドだ。80年代初頭、女性ロッカーの旗手としてインディーズシーンの先頭に立っていた。
「今でこそ女性がギターを弾いたり、ドラムを叩いたりするのは当たり前の時代だけど、70年代は女性が楽器を弾くことってまずなくてさ、ボーカルがほとんどで、あってもせいぜいキーボード。ベースを弾く女性なんてほとんどいなかったんだよね」
77年に近田春夫がプロデュースした「ガールズ」というバンドがいわゆる日本のガールズバンドの元祖とされているが、それはあくまでも仕組まれたバンドだった。本当の意味で女性がバンドシーンに登場するのは東京ロッカーズ以降のことだった。
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