「この車、走れるの?」「マフラー長すぎん?」街道レーサーに初めて会った日
取材・文=ヤスデ丸
いまでこそYouTubeの撮影なんかで旧車會やカスタムカーの取材に伺う機会は増えたものの、ナックルズに入ったばかりの頃はその存在すらも知らなかった。
見たことのある改造車といえば、地方の祭りの日にどこからともなく現れる、ボコンボコンと飛び跳ねるアメ車くらい(いつもは見かけない車たちがなぜ祭りになるとわざわざ現れるのか謎だった)。
そんな時代に初めて目にした〝街道レーサー〞(これまた初めて聞くコトバだった)は無知な私には超衝撃の連続だった──
待ち合わせの場所へ向かうと、ここを通った人間は必ず目を向けるであろう、ド派手な改造車が目に留まる。
フレーク塗装の光沢がまぶしい全身パープルにシルバーのファイヤーパターンがペイントされたボディ。 私の身長もゆうに超えるほど高く突き出た〝タケヤリマフラー〞。
これは一体どーゆーこと? この長い筒って一体なんの意味があるの? そもそも、この車は走るの? と押し寄せる疑問の波にひとり溺れかけている私を快く出迎えてくださったのは、この車のオーナーであり、栃木県の「益子レーシング」に所属する大槻さん。
縁あってこのGZソアラを所有することとなり、前オーナーが仕上げた全体のスタイルは継承し、外装ペイントを2週間で仕上げたという。とにかく早く乗りたくて、仲間たちと朝晩フル稼働で塗り上げたボディ。
古い車、脈々と受け継がれる、みんなで走れるように作る。まだよく知らない世界だけど、なんかそういうのいいなぁ。
それにしても素人はもちろん、プロも認めるほどの丁寧な仕上がり。手間のかかる工程を何度も繰り返して出来上がった一台は、どこを撫でても滑らかで美しいカーブを描いている。
実際に運転席に掛けると、とにかく車高が低い(もはや地面に座っている気分)。エンジンを掛ければ爆音と振動がハンパない(未経験の爆音に一瞬身が縮む)。私には運転する勇気もないし、自分の趣味はもっと地味でシンプルなものなんだけど、沼っちゃう気持ちもなんかわかる。これがこの車のキャラクターで、オーナーの入れ込んだ相棒なんだなぁ。
……とまあ、当時こんなことを思ったことを覚えてる。現在も取材でお世話になっている益子レーシングさんは、今もやめられない止まらない、街道レーサー道一直線! これからもたくさん走ってください!