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ライター根本直樹のTOKYOバカ一代 外道伝#5 「かっぱらいのプロ」逝く。アル中泥棒マナブの人生(その5)

なぜか昔から、市井に暮らす、名もなきバカが好きだった。マナブもそんなバカの1人である。これまで多くのバカと付き合ってきたが、こいつはその中でも最上位に位置する“本物”だった。
(前回の記事はこちらから→https://note.com/jitsuwa_knuckles/n/n8f225d1545ad)

最後の宴

 JR新小岩駅周辺の飲み屋街で“ひっつき水風船”を売り歩きはじめて10日ほどが過ぎた。慣れてきたこともあり、1日平均10〜20個はなんとかさばけるようになり、私とマナブは調子に乗っていた。その日の売上数千円を持ってフィリピンパブなどに遊びに行くと、店のお姉さんたちが面白がってさらに風船を買ってくれて飲み代が浮いた日もあったが、残った金でまた飲みに行ってしまうので一向に貯まらない。売上金を使い果たしても、また風船売りに行きゃいいやと考えてしまう思考回路が完全に出来上がっていた。愚かな商人の典型である。

 昼間、K君の部屋でオリジン弁当を食いながら今後の商売について語りあった。

「このまま真面目にやればけっこう稼げるんじゃないですか」

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