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相場半額の民宿、北陸唯一のストリップ劇場(福井旅行 中編)┃ヤスデ丸の1万逃歩日記 #13
なかなか運動する機会もないため、毎日1万歩は歩くように心がけている編集部員ヤスデ丸(27歳・独身女性)。健康増進というだけでなく、散歩は日々の現実逃避にうってつけ。その道中で見たもの聞いたものは、こんなもの──
世界的にも珍しい成り立ちの景勝地にも関わらず、世間からの「身投げスポット」の印象からなかなか逃れられない東尋坊。そりゃ「悪い坊さんが酔っ払った隙に突き落として殺した場所」なんだから仕方ない気もする。
寒空がより一層寒く感じる日本海の潮風を後にし、この日予約した民泊へと向かう。
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近くにあわらという温泉地街があるが、ここらは1人宿泊費が少なくても2万円以上。しかし東尋坊寄りの坂井市三国エリアに1件だけ民宿があるのを見つけた。ここは1人7千円ほど。あわらの相場と比べればかなり安いので迷うことなくここに決定した。
16時ごろ、民宿「ニュー越前」に到着。どんよりした雲がいい雰囲気を出している。
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泊まっている車は私たちのレンタカーのみ。ガラスのスライドドアを開けるが、フロントは真っ暗で誰もいない。
「すみませーん! 予約した◯◯でーす!」
5、6秒するとタッタッタと小走りする音が廊下の奥から聞こえる。よかった、宿なしにならずに済んだ!
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「今日予約どんな感じなんですか?」との私たちの問いに「いやーまあ普通ですよ」とオーナーのおじいちゃん。今日は土曜だけど、ワンチャン私たちだけの可能性もあったりして?
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チェックインも済んだところで、初日の2つ目のお目当て「ストリップ あわらミュージック劇場」へ。
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客は最初は私たちを入れて4人。演目が進み、あたりを見回すと8人近くに増えていた。思いのほか高齢の方は少なく、中年男性が多い。
正面ステージの端にある、2階へと伸びる螺旋階段の先には、1階観客席から踊り子を見上げることのできるアクリル板の床のステージ。後ろを見てみると、観客席もツーフロア仕様だ。
あわらミュージック劇場は50年の歴史を誇る老舗ストリップ劇場。やっぱり思い浮かべるは社員旅行全盛期なわけだが(この時代のイケイケ感が好き)、温泉地街としてあわらがもっと賑わっていた頃は、ここの盛況ぶりもすごかったんだろうな。
この日ステージに上がった踊り子は3人。1人のショーが終わるたびにチェキタイムがある。私もその都度並んだ。
「日本のストリップは、大枠2つに分かれててね。一つはAV女優の人が多く出演するもの、もう一つは生粋の踊り子さんとして活動する人が出演するもの。あわらは後者なんだよ」
チェキの列に並んでいると常連さんが教えてくれた。他の客のチェキタイムが終わるまで、毎回何人かの常連さんたちと話していた。
全国津々浦々、推しの踊り子さんのショーを追っかけしている人(この人はショー中にタンバリンを叩いて盛り上げる)や、キラキラした衣装が好きで、ストリップの衣装を参考に作った手製の衣装をまとって来場する人(これまたすごく綺麗で上手)もいた。
踊り子のみなさんもまたそうで、初顔の客である私たちを快く歓迎して気さくに話してくれた。これまで幾度かストリップショーを見たが、相当練習を積んだであろうアクロバットな動きや柔軟性、独創性のある演目・衣装は、若手ストリッパーとは一線を画している。
「今日はありがとう。東京の劇場にもよく出演してるから、また来てね!」
正直、東尋坊に行く予定がなければ、このストリップ劇場の存在も知ることはなかった。
北陸の地に唯一あるストリップ。ニャンコもいるし、人はいいし、いいとこがあるんだなぁ。
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夜も深まったということで夕食に出る。ストリップ劇場の裏はわずかだが飲食店が並ぶ。徒歩2分ほどの場所には芦原温泉駅。周辺の飲み屋はどこも混雑していて、入れそうにもない。
ということで近くを散策。道路の脇にポツポツと点在する高そうな旅館。こりゃ1人2万じゃ済まないかもな。
すると、「すみれ」という居酒屋を発見。余計な洒落っ気のない、昔ながらのこざっぱりとした個人店だ。私たちの部屋名と同じだし、ということでこの店の暖簾をくぐる。
【後編に続く】
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<著者プロフィール>
ヤスデ丸(やすでまる)
「実話ナックルズ」の女編集部員。埼玉生まれ中東ハーフ。いよいよアラサー。YZF-R3を手放して、車検のないニーハンに乗り換えたい今日このごろ。好きなプロテインは「ウマテイン」ミルクティー味。最近は昔から続けている篠笛に再燃中。「1万逃歩日記」「裁判傍聴ファイル」など不定期で掲載中