日々是暴食★トラウマめし【第16食】花巻市民のソウルフード「マルカンのラーメン」
私、バーガー菊池は岩手県花巻市出身であります。しかも湯本という奥羽山脈に食い込んだ山の裾野の地域で、花巻温泉と台温泉が有名なガチの田舎。小学生の頃もよく熊が出ていたが、今はもっと出るらしい。
田舎を捨てた人非人ながら、現在は年に一度帰れるくらいに実家と関係回復している。いや、本当はもっと帰りたいんだけど忙しいんですよマジで。
花巻の良さを知らしめたい。というほどの熱意はないのだが、なんというか本当に何もないのである。数年前に帰省した写真を見てみたが全体的に緑だ。驚くべき緑。山、森、田んぼ、道にはえた草。青い空から綺麗にグラデーションになっていて、同じ緑でも濃さがそれぞれちょっとずつ違う。年をとってくるとこういうのが沁みるように良くなっていくのかもしれない。郷土の偉人、宮沢賢治は岩手のことを「イーハトーヴ(理想郷)」と呼んだ。理想郷にしたい、という思いが強かったのかな。
確かに自然が美しいが、冬は寒いし、虫や蛙は多いし、人は隣近所の悪口を言うし、遊ぶところは何もねぇ。「オラこんな村いやだ」ではないが東京さ出だのは正解だった。編集者になっていろんな人に会えたのは大きな財産だ。
おっと、つい田舎の嫌なところばかり出てきてしまう。実際18歳で東京へ出たので、花巻に何があるのかよく知らないのだ。不良でもないから夜中遊びまわってたわけでもないし。部活してたわけでもない、ほんと何もしてない10代だった…。そんなことはどうでもよくてメシの話をしないと。
とにかく花巻に行ったらマルカンデパートへ行ってほしい。上(かみ)町という今は寂れた中心街の真ん中にある。花巻市民はマルカンの大食堂が大好きで、2016年にデパート自体は閉店したのに食堂だけ再オープンしたくらいだ。今では昼時に行列するらしい。
昭和そのものの店内をまず楽しんでほしいのだが、菊池が必ず頼むのはオーソドックスな中華そば。スッキリした化調の効いたスープにちぢれ麺。ナルト、焼豚、海苔、メンマの具と逆にいま食べることのできない昭和のラーメンがそのまま生き残っている。糖尿病で医者に止められているが、このスープだけは飲む!
あとは巨大なソフトクリームを箸で食べよう。インスタ用なら、これとナポリカツを頼んでおけば完璧だ。昭和レトロというタグをつけてくれ。
飲食店で私が自信を持ってオススメできるのはマルカンしかない。あとはスーパーで渋い惣菜やらお菓子を買うのがいいと思う。がんづき、ばっけみそ、福田パン、ホヤなど岩手感のあるものをチョイスしよう。「アルテマルカン」や「コープ花巻あうる」は花巻東高校の近くなので大谷翔平もここらへん歩いてたのかなー、などと妄想しながら散策してくれ。
ただし冬はくそ寒いし雪で一面白くなったしまうので気をつけてほしい。どっどどどどうと風の又三郎みたいな強風が吹いたら本気でしばれるがら、その時は温泉に入って温(ぬく)ぐしてけろじゃ。
岩手編 続く