「ザ・ノンフィクション後編」婚活は相手を好きになったら負け。男性たちの敗因は舞い上がって恋愛感情を持ち込んだこと【中村淳彦の名前のないコラム】
婚活に奮闘する男女のリアルが地獄すぎると話題沸騰の「ザ・ノンフィクション 結婚したい彼と彼女の場合 ～令和の婚活漂流記２０２４～」（フジテレビ）。後編となっても男性たちの婚活はなかなかうまくいきません。なぜなのか。『中年婚活』著者・中村淳彦が解説します。
相手の女性がどういう状況かを俯瞰して見る
ノンフィクションライターの中村淳彦です。「ザ・ノンフィクション 結婚したい彼と彼女の場合 ～令和の婚活漂流記２０２４～ 後編」、めちゃめちゃ話題ですね。
前回は２９歳青年と５５歳オヤジの傾聴がなっていない。それだとちょっと難しいという話をしたけど、やっぱり後半も２人はなかなか苦戦します。
２９歳の進藤さんは男子校卒でちょっとコミュ障で、マザコン。でも、後編に入ったら一人暮らしするとか料理するとか、成長が著しくて素晴らしい。気になったのが歯科助手の３２歳の女性がお見合いで進藤さんに傾聴をめちゃめちゃして、進藤さんが好きになっちゃったパターン。でも、仮交際最初のデートで結婚観が違うとフラれてしまった。
３２歳女性が進藤さんのことを傾聴したら、話聞いてもらいたい進藤さんはもうメロメロになって好きになってしまった。初恋じゃないかくらい言いだして、舞い上がって、舞い上がった状態でデートに臨んだけど、玉砕となった。放送を見ている限り、進藤さんはちゃんとした店を選んでいたし、服装がちょっとダメだったけど、結婚の話とか恋愛の話をして、話の内容もめちゃめちゃ進歩していて普通だった。なにも問題がない。でも、一発でフラれちゃったわけですね。
フラれた理由は、進藤さんは「一人暮らしして、一歩一歩成長していきます」みたいなことを言った。結婚にかんして、まず自分のことを発言したわけです。でも、この３２歳の女性は今すぐにでも結婚したいっていうスタンスで、そこを指摘されて、一撃でフラれてしまったわけです。
進藤さんは女性と話したことないから経験不足は仕方ないけど、女性がどういう状態かと想像するべきだったですね。婚活は恋愛感情で舞い上がっている場合ではなくて、冷静に一歩二歩引いて、この人どういう感じだろうって見ていかなきゃいけない。
まず、年齢やプロフィールから想像つくのは、歯科助手って面白くない仕事だから、ちょっと人生を変えたいという意識がある。女性の状態は年齢や仕事でなんとなく想像がついて、３２歳で結婚相談所に頼っているということは１日でも早く結婚したいということだったのでしょう。俯瞰しながら関係性や状況を見て、どういう手を打った方がいいかっていうことを考えていかなきゃいけないわけですね。
でも、進藤さんは一目惚れして本当に好きで、恋愛してしまった。自分の事とか自分が楽しいことを話しちゃったり、自分が楽しいから相手も楽しいだろうと思い込んでしまった。婚活は心冷めたままやらなきゃいけないわけですね。恋愛感情で心が盛り上がったら「この人だ！」みたいなことじゃなくて、「この人で大丈夫か？」「この人は今どういうこと思っているの？」みたいなことを冷静に一歩引きながら見定めて、おかしなことがあったら即切りするとか即逃げるとか、いいと思ったらすぐに一手を打つとか、しかも他の男性との取り合いなので、自分が成長するために一人暮らしみたいな悠長なことを言ったのがまずかったわけですね。進藤さんは当落線上だっただろうから、惜しいことをしましたね。
画像は予告編YOUTUBEより（FUJITV GLOBAL CHANNEL）
それで進藤さんは大ダメージ受けて、けど諦めないで婚活を続けた。次に出てきたのは仮交際に進んでいた東大卒の同い年の女性。仮交際は２人とか３人と交際を同時進行して、複数の異性比較をしながら１人を選んでいくって時期なんです。でも、進藤さんはフラれ続きの婚活に疲れ切って、この東大卒の人で妥協して１人に絞ってしまった。好きという感情より、もう婚活を終わらせたいという気持ちが強かったと思う。
だけど、この東大卒女性はおかしい人で、家事がどれくらいできるのかみたいなことを重要視しだした。進藤さんに毎日毎日自炊を強制して、LINEで何作ったのか写真付きで報告しろとか、なんかおかしなこと言い出した。
結婚なので相手がおかしいと思ったら、もう無理なんですね。だから仮交際で複数の異性と同時進行して、いつでも切れる環境を整えるのが普通。でも進藤さんは東大卒の１人としか付き合ってないから、女が言うがままに自炊してLINEを送って、真面目にやった。家事能力を何ヶ月も何ヶ月も報告させるなんておかしいから、本来だったらもうこの時点で切るべきだった。
最後は真剣交際までいって、進藤さんは東大卒にプロポーズする。でも、最終的に家を買えとか、大学のレベルが低いとか言いだして破綻する。結果的には進藤さんはよかった。助かった。こういう女性と結婚してももう嫌なことだらけだろうから、フラれて縁が切れたのはラッキーだった。
進藤さんは今のスペックだったらもう全然いけるでしょう。ちゃんと婚活して、複数の女性と仮交際して１人に絞るということを丁寧にやれば結婚できるはずです。
婚活では恋愛感情を持たず、常に冷静でいること
一方、５５歳オヤジ、これもうどうしようもない。
このオヤジは中国人の女性に暴走した。相手は中国人の女性経営者で、自分と対等な立場でいいとなって、植草さんの所に勝手に真剣交際超えて成婚しますって報告して、成婚料も振り込んだらしい。でも、相手の中国人女性はそう言ってないのに、５５歳オヤジが勝手に結婚するつもりでいたことが判明した。
植草さんに呼び出されて、「あなた本当にそうなの？」って説教され、植草さんが間に入ってようやくオヤジの勘違いの全貌がわかったと。
画像は予告編YOUTUBEより（FUJITV GLOBAL CHANNEL）
どうも焼肉デートしたとき、オヤジはデレデレしながら「相手の女性に奢ってもらった」とか「女性が全部肉を焼いてくれた」とか、しかもお金まで払ってもらったみたいなこと言っていた。
えーっと思ってね。婚活中は全部男性が払うのが無難。こういう常識からズレた事象というのは、なにか裏があるわけです。相手はなんていうか企んでいるわけですね。
中国人女性からすればこのオヤジは優しくすれば舞い上がるから、適当なこと言って、ご飯もご馳走して、自分が焼き肉焼いて接待みたいなことをすれば、このオヤジは恋愛感情が盛り上がるだろうと踏んだのかもしれません。
焼肉デートでデレデレになって、オヤジは成婚退会しますって宣言。中国人女性側の結婚相談所は「はあ？」って感じで、その女性からすれば成婚退会なんて全くそんな話してないとなった。本当に結婚するんだったら「生活費は全部払ってください」から始まって、しかも「結納金もください」、それに「成婚料も払え」という要求をされた。オヤジは「もう心が壊れてしまいました」みたいな感じで終わるわけですね。
日本の男は男尊女卑とロリコンとマザコン、それに変態ばかりだからスペックはゴミ。国際結婚しましょうみたいなことを言っている日本人女性は一部いるけど、外国人は文化が違うとか、ヤバイ奴か大丈夫かみたいな微妙なニュアンスがわからない。日本人同士でも難しいのに、外国人と結婚するのは難しいでしょう。難易度が高すぎると思うわけですね。
このオヤジは５５歳でこんな言った言わないのすれ違いとなると、もう厳しい。１人で暴走した上に相手が金目当てなのにそれをまったくわかってなくて、経営者同士で対等に付き合おうと結婚して、そういう結婚生活を考えていたなんてとんでもないズレがあった。
何回かデート繰り返してこんな結果になるってことは、このオヤジは婚活してもちょっと難しいかな。このオヤジは仕事以外のすべて、人間関係とか居住地とか趣味とかすべてリセットして、心入れ替えないとダメでしょうね。
もう植草さんの結婚相談所やめたほうがいい。アプリと別の相談所に入会し直して、フルコースで課金して人生をやり直すしかない。バツイチだけど、前妻に逃げられて捨てられたことも納得です。全部変えて心入れ替えて、掃除して、神社に行って、傾聴を学んで。この人は本当に傾聴ですね。とにかく大きな変化が必要です。
この番組を見て僕が先日だした『中年婚活』が、本当に正しいこと書いてあるなと思いました。つくづく思った。やっぱり、婚活では恋愛感情を持たない、傾聴する、常に冷静でいるってことが大切。相手の女性を好きと思って舞い上がってしまった時点で負けてしまう。舞い上がってしまうとオヤジだから、もうロクなことをしない。すぐミスして破綻ということになる。
オヤジの婚活は修行です。どれだけ自分をリセットできるか、という勝負になってくる。無残な５５歳オヤジの姿を眺めて、改めてそう思いましね。
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＜著者プロフィール＞
中村淳彦（なかむら・あつひこ）
ノンフィクションライター。無名AV女優インタビュー『名前のない女たち』シリーズ、『東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか』、『悪魔の傾聴』などヒット作多数。花房観音との共著『ルポ池袋 アンダーワールド』（大洋図書）が絶賛発売中。Voicy「名前のない女たちの話」ほぼ毎日放送中。ニコニコチャンネルプラス「中村淳彦の40歳からの婚活ちゃんねる」が2月より配信スタート。