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“山の神”が眠る廃村──「白岩集落」恐怖の怪奇伝説

見てはいけない「床下の仏壇」

 廃墟、廃村、廃神社……。廃◯◯と聞いて、物悲しさを感じると同時に
沸々と好奇心が湧いてくるのは人の性。

 今回訪れたのは、埼玉県は飯能市の山奥にある「白岩集落」。
 2019年に開業した「ムーミンバレーパーク」や曼珠沙華の名所と知られる「巾着田」などの観光地が点在する飯能は、10年ほど前から再開発が進んでいる地域である。とは言っても、駅の周辺を抜ければすぐに広がるのは田畑に山脈。どこか懐かしさを感じる自然豊かな飯能だが、正丸峠や畑トンネルといった有名な心霊スポットもあり、オカルト好きには名高い土地とも言える。

ハイキングコース入り口にて。白岩集落の成り立ちについて書かれている。「山の神」についての記述も

 明治時代に「名栗村」の名で成立した白岩集落は、その後、町村の合併など時代の流れで移転が進み、昭和後期に無人になったと言われる〝廃集落〞である。資源事業を展開する某大手企業の鉱業所が石灰石の採掘をしていた山でもあり、「白岩」の名の由来とも言われる。しかし2015年には鉱業所も閉鎖され、忘れ去られた土地となった。

 廃集落として注目を集めるようになったのは、2000年代初頭にネットに投稿された廃屋の写真がきっかけで、「床下の仏壇を見た者は、目の潰れた老人に襲われる夢を見る」というオカルト的な噂もあるとか。「いや、夢なんかい」と思わずツッコみたくなる。また、村民たちが山の神を祀っていたという記録もあり、神隠しが起きる山とも言われていたそう。

ハイキングコースを抜けたところに佇む祠
険しい山道を登ると集落にたどり着く

残されたアルバム、生々しい生活感

 現在、この集落へと続く道はハイキングコースとして開放されている。その道を10分ほど進むと、第1ポイント「下白岩集落」の家々が目に留まる。どれも全体的に朽ちてはいるが、外から中をのぞくと残された家財道具が当時の姿のまま残っていた。先客たちが物色したのか、アルバムや諸々の契約書など、もし引っ越すなら必ず持っていくであろうはずの代物が玄関口に置かれていた。

侵入者が漁ったのか、開かれたアルバムが廃屋の縁側に置いてあった
書類もそのまま。終の棲家とした住人が多かったのだろう

 第2ポイントの「上白岩集落」まで登ること約20分、開けたエリアに到着。完全に崩壊してしまっている家や、柱や梁は残っているものの壁は朽ち屋内が丸見えの家などがある中、比較的荒廃の進んでいない家屋が並んでいるエリアがあった。

 しかしその中に1軒だけ、扉が板で打ち付けられた〝開かずの家〞があった。

 ぐるりと家屋を回ると、他の家と違って壁も綺麗に補修されているが、誰かが壊したのか、人がギリギリ入れるほどの穴がある。
 一切の光も届かない暗い部屋には、どんよりとした妙な空気が漂う。
 しかし好奇心ほどの敵はない。

 ちょっとだけ……と覗いてみると、そこに広がるのはこれまで見かけてきた他の家には明らかになかった、生々しい生活感。
 何の変哲もない家族の日常、何かワケがあって突如住人たちが去り、彼らは二度と帰ってくることはなく、時間だけが過ぎていった家──そんな印象が強い。

 仏壇に桐だんす、そして美人画の施された大きな羽子板。
〝ここは見てはいけない〞、そう思い私たちは廃集落を後にした。
 唯一あの家だけが手入れをされていたことには何か理由があるのかもしれない。

 ちなみに最後の家にあった仏壇以外、どの家の床下にも仏壇はなく、噂のように夢で老人に襲われることもなかった。代わりにラジカセで爆音を流すカラーギャングの群衆に殴りかかられる夢は見たが、因果関係があるのかは不明である。

(文=ヤスデ丸

朽ちた家屋は何棟もある
廃屋に残る仏壇
いくつもの納屋や家屋が軒を連ねる
当時暮らしていた子供のおもちゃか

【著者プロフィール】
ヤスデ丸(やすでまる)
▶『実話ナックルズ』の女性編集部員。埼玉生まれ中東ハーフ。いよいよアラサー。乗っているバイクはYZF-R3。オススメのプロテインは「ウマテイン ミルクティー味」「ウルトラ 黒ゴマきなこ風味」。