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【昭和の政界 権力闘争史】闇将軍・田中角栄に噛みついた竹下登◎その1

ロッキード事件で逮捕後も闇将軍として政界に多大な影響を及ぼしていた田中角栄。そんな彼の派閥に属していた竹下登であったが、密かに反旗を翻す機会を狙っていた──権力の座をかけて激闘を繰り広げた男たちに迫る

政界のドンに君臨

 1982(昭和57)年に誕生した第1次中曽根内閣は、首相退任後も“闇将軍”として、自民党内の絶対的な実力者として君臨し続けた元首相・田中角栄が、第1次田中角栄内閣誕生時の功績などから重用し続けてきた中曽根康弘を擁立する形で成立した、ある種の傀儡政権ともいうべきものであった。というのも、1974年に、いわゆる“黒い金”に関する糾弾を受ける形で内閣総辞職した田中は、退陣後も糾弾を受け続け、1976年にはロッキード事件が発覚。これにより逮捕されたことで、離党し、表向きは無所属となるが、保釈からたった4ヶ月後の総選挙で大勝し、その力に何ら翳りがないことを示すと、それ以降も表向きは「無所属」でありながら、自民党議員が集まる「田中派のドン」として君臨し、同派を通じて総理大臣以下閣僚の選定に強い影響を及ぼし続けたのである。要は、そうした状況下で田中が擁立したのが、中曽根だったというわけだ。
(その2に続く)

取材・文◎呉麓山