【写真家・近未来探険家 酒井透のニッポン秘境探訪】長野県松本市の男根を担いで回る奇祭『道祖神まつり』
乗れば子宝に恵まれる
長野県松本市の美ヶ原温泉郷で行われている「道祖神まつり」は、人々にハピネスを分け与えてくれる祭りだ。
ご神体となっているのは、長さ4メートルあまりの『男根』。ハッピを着た10人ほどの男性陣がご神体を担いで20軒ほどの宿泊施設を回る。
クライマックスは、黒光りしたご神体に女性を乗せて、ユッサユッサと揺さぶるシーン。最初は、躊躇していた女性も、『エイッサ、ホイッサ。エイッサ、ホイッサ~』というかけ声に乗って揺られているうちに、笑みがこぼれるようになる。
実は、ご神体に乗ることができるのは、宿泊施設に泊まっている女性客に限られている。地元の人たちは、蚊帳の外なのだ。大勢の宿泊客の中から選ばれて、運良く乗ることができると「子を授かる」と言われている。
湯の原町会長の金宇保昌さんは話す。
「男根が登場したのは1960年代の後半です。衰退していく温泉郷を何とかしてアピールしたかったんですよ。最近の女性は大胆ですねぇ。昔では考えられなかったことです。でも、ご神体に乗ったことによって子どもが産まれたら、こんな幸せなことはありませんよ~」
「道祖神まつり」は、村に伝わる古いしきたりなどには囚われていない。祭り自体がインチキだとかアホらしいなどとかいった意見にも耳をかさない。みんなで楽しめればいいのだ。地域社会を活性化させようとしている人たちの絆は、絶対にブレることはない。