【参加レポ】毎日新聞 ことば茶話 第2回
やあやあどうもふずくです• ᴥ •
大学最後の期末試験を終え、卒論の口述試験を終え、やっと落ち着きました。
今回は、だいぶ前になってしまいましたが、11月29日に行われた毎日新聞のオンラインイベント「ことば茶話」第2回について、感想を述べていきます。
第1回の記事はコチラ
ことば茶話とは
今回のテーマ
調査官に聞く ~秋の恒例,国語世論調査
今回のゲストと聞き手
ゲスト:武田康宏(たけだ・やすひろ)さん
武田さんは、「毎日ことば」でインタビュー記事も出されています。
聞き手:平山泉(ひらやま・いずみ)さん
感想
いちばん大切なことは?
話は世論調査の意義から始まり、そこから見えてくる日本語の変化についてというところへ。
前回の広辞苑の話のときもそうでしたが、国語や日本語に関わる職業の方々は、しばしば正しい日本語規範の支持者であることを期待されているように思います。
ここでの正しい日本語規範とは、「ら抜きことば」や「させていただく」のような従来の日本語のありようと対立することばの運用を許さない立場とします。「言葉の乱れ」を許さない立場です。
まあ実際、「誤字脱字を直している」「日本語について調査している」というとそういうイメージに繋がってしまうのは致し方ないのかも……。
実はこの「正しい日本語規範」、私が大学で国語学を志そうと思ったきっかけでもあります。
というのも、半数以上が本来の意味で使っていないことばを無理やり本来の意味で使おうとするのは、はたして意味のあることだろうかと疑問に思ったためです。
具体例を挙げると、「なし崩し」ということばがあります。
これは平成29年度の国語に関する世論調査でも取り上げられています。
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/r1393038_01.pdf
13ページ、「どちらの意味だと思うか」という設問を見てみましょう。
例文は「借金をなし崩しにする」です。
(ア):なかったことにすること
(イ):少しずつ返していくこと(本来の意味)
(ウ):(ア)と(イ)の両方
(エ):(ア),(イ)とは全く別の意味
(オ):分からない
※元の資料では「分からない」には記号は割り振られていませんが、筆者の都合で(オ)としています。
この5つの選択肢があり、結果は
(ア):65.6%
(イ):19.5%
(ウ):1.3%
(エ):5.0%
(オ):8.5%
となっており、6割以上の人が本来と異なる意味で用いていることが分かります。
ふつう、「なし崩し」にするというと、「なかったことにする」「うやむやにする」という不義理な印象を抱くということです。
しかしこれを「正しい日本語を使うべきだ」という考えで「少しずつ返していくこと」として無理やり使おうとすると、コミュニケーションはうまくいきません。
(ア)で受け取れば「なんてひどい人だ!」となるでしょうし、(イ)で受け取れば「こまめに返そうという意思があるんだね」、となるわけで、真逆の意味になってしまいます。
武田さんもおっしゃっているように、いちばん大事なことはコミュニケーションがうまくいくことです。
ことばがどう使われているかを見つめて、どうすればコミュニケーションが円滑に回るのか、ときには取捨選択をし、ときには言い換えをする。
そうして無難な表現を探していくのがよいのではないでしょうか。
国語に関する世論調査とは、その拠り所となるものだと考えます。
「正しい」ってなんだろう
辞書が好きな大学生、我々辞書尚友と同じですね。
そしてこの考えにも強く賛同します。
というのも、やはり小中高の教育によって、我々は「正しい日本語規範」の刷り込みが行われてきたと実感するためです。
大学1年生のときに「国語学概論」という授業がありました。
この授業はいわば国語学の入門編のようなもので、音韻から意味論までをカバーしています。
それを担当している先生によれば、リアクションペーパーや推薦入試の作文などに「正しい日本語を守らねばならない」と書く学生は多いそうです。
お話の中であったような模試の影響を考えれば納得です。
どうやったって「正しい日本語を守ろう」と書くしかないわけです。
中には「相手を意識して取捨選択をするべきだ」という回答もあるかもしれませんが、「(本来のではない意味が優越している)表を参照して」ならあまり好ましくないでしょうし。
そういう問題を作ってしまったら、そういう思想を吸収してしまうのは自然なことです。
ちなみにこの授業はそういう刷り込みを破壊するとことから始まります。
また、こんなこともありました。
これは読売新聞の記事ですが、文化庁がことばの解説サイトを開設する(ダジャレみたい)という内容です。
問題は、ことばの解説サイトのイメージ図。
○✗で示されているではありませんか!!
たしかに、ことばは変化していくものであるとはいえ「何らかの基準があってもいい。じゃないと文章が書けない」というのは、もっともな考えです。
ただこの○✗が与える影響というのは、計り知れない。
文化庁が、国がことばの正誤を規定するように見えるわけですから。
しかし、そもそも文化庁は「正用」「誤用」という表現を避け「本来の意味」「本来の意味とは違う」としてきました。
というか、用例を参照するのであれば本来でない意味が優越していることばの説明が余計つかなくなるのでは?と思っていますが、どうなんでしょう。
「○(正用)だけど✗(誤用)のほうが用例数も多くて……察して伝わる方を使ってね」みたいなことになりそうです。
X(旧Twitter)を見ていても、「助かる!」という声もあれば「言論統制の基盤づくりだ!」という声もあり、賛否両論といった感じです。
これについては、辞書編纂者の飯間浩明先生も言及されています。
ことばの解説サイトがどうなるのか、動向を見守っていきたいところです。
※この図があくまで読売新聞の用意したものなのであれば、実際の文化庁のサイトはまったく異なるものなのかもしれません
おわりに
いかがだったでしょうか。
私たちには、これまでの人生で作り上げてきた常識があり、語彙があります。
それは周囲の人間や国の施策などの影響を受け、知らず知らずのうちに形成されてきたものです。
もちろん全てを疑えというわけではありませんが、「正しい」とは何なのか、今一度考える必要がありそうですね。
今回ご紹介した内容以外にも、興味深い内容がもりだくさんの回でした。
皆さんもぜひ「毎日ことばplus」でよきことばライフを。ではでは。
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