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「不動産業による空き家対策推進プログラム」の説明をお聞きしました。

 JARECO(日米不動産協力機構)では、日大教授の中川雅之先生を囲む社会人講座として連続講座が開催されています。本講座に通底するコンセプトは、「不動産再生の最前線~不動産コンサルティングは地域再生のカギになるか~」です。
 第1回講座では、「不動産業による空き家対策推進プログラム、~地域価値を共創する不動産業を目指して~」と題し、国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課長 川合紀子様からのご講演を頂きました。以下に聴講メモをまとめます。

1.空き家問題
 日本全国で増加する空き家問題は、地域社会にとって深刻な課題となっています。2018年時点で349万戸の空き家があり、2030年には470万戸に達すると予測もある中、この問題に対応するため、国土交通省では2024年6月21日に「不動産業による空き家対策推進プログラム」を策定しました。
 このプログラム策定の背景について国土交通省は以下のような説明をしています。

 我が国においては、空き家や空き地、マンションの空き室(以下、空き家等)の急増が課題となる一方、二地域居住などの新たな働き方・住まい方へニーズが高まっています。また、空き家等を放置すると、使用困難となり、やがて周辺環境等に様々な悪影響を及ぼすこと等から、「使える」空き家等は、なるべく早く有効に利活用を図ることが効果的と考えられます。
 この点、不動産業者は、物件調査や価格査定、売買・賃貸の仲介など、空き家等の発生から流通・利活用まで一括してサポートできるノウハウを有しており、所有者の抱える課題の解決や、新たなニーズへの対応が期待されます。
 不動産業者がこうしたノウハウを発揮できるよう策定したものが「不動産業による空き家対策推進プログラム」です。

出所:国土交通省

2.「不動産業による空き家対策推進プログラム」
 このプログラムに込められた期待は、不動産業者の専門知識とノウハウを活用し、空き家の流通と利活用を促進することにあります。
 そのプログラムは以下の2つの主要な要素で構成されています:

1.流通に適した空き家等の掘り起こし
2.空き家流通のビジネス化支援

具体的な施策は以下の通りです:

 さらに、流通に適した空き家等の掘り起こしとして以下の4項目に細分化されます。
1.所有者への相談体制の強化
2.不動産業における空き家対策の担い手育成
3.地方公共団体との連携による不動産業の活動拡大
4.官民一体となった情報発信の強化

 また、空き家流通のビジネス化支援としては以下の4項目に細分化されます。
1.空き家等に係る媒介報酬規制の見直し
2.「空き家管理受託のガイドライン」の策定・普及
3.媒介管理に含まれないコンサルティング業務の促進
4.不動産DXにより業務を効率化し、担い手の確保

 一部の補足をします。空き家流通のビジネス化支援の「1.空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」について、特に低額物件の取り扱いの促進を目指しました。具体的には、物件価格が800万円以下の空き家について、媒介報酬の上限を超える30万円(税込33万円)に設定されました。
 また、「2.「空き家管理受託のガイドライン」の策定・普及」については、不動産業者が空き家管理サービスを提供する際の標準的なルールを定めた「空き家管理受託のガイドライン」が策定されました。このガイドラインは、空き家管理を第三者に委託したいという所有者にニーズが拡大していることを想定した対応となります。
 「3.媒介管理に含まれないコンサルティング業務の促進」については次項にまとめます。

3.不動産コンサルティングマスターの役割と期待
 前項の空き家流通のビジネス化支援「3.媒介業務に含まれないコンサルティング業務の促進」に対しては不動産コンサルティングマスターの役割に期待を寄せています。
 不動産コンサルティングマスターは、不動産に関する専門知識と実務経験を有する資格者です。この資格を取得することで、不動産の売買・賃貸の仲介だけでなく、空き家対策や不動産の有効活用に関するコンサルティング業務を行うことが可能となります。約1万5,300人(2024年3月時点)の不動産コンサルティングマスターが登録されています。

(1)コンサルティングマスターの主な業務
 不動産コンサルティング業務は、「不動産に関する専門的な知識・能力を活用し、公正かつ客観的な立場から、不動産の利用、取得、処分、管理、事業経営及び投資等について、不動産の物件・市場等の調査・分析等をもとに、依頼者が最善の選択や意思決定を行えるように企画、調整し、提案する業務」であり、一定の要件のもと、宅地建物取引業務とは分離独立した業務として報酬の受領が可能となります。この点をより明確にし、相談をする側からの認知を高めていこうとされています。以下に説明を追加します。

(2)コンサルティングマスターの現状と課題
 不動産コンサルティングマスターに対して実施したアンケート調査によれば、回答者の約8割が空き家業務に前向きな姿勢を示しています。一方で、 空き家の流通を促進させる上でも単に空き家の流通への関与のみでは終わりません。所有者が抱える相続、権利調整、管理等様々な問題もあり、それが、不動産仲介業務に関連するなかで仲介手数料以外の業務で報酬を得ていない割合が約4割に上ります。報酬が発生するという社会的認知が定着していかない限り、プレイヤーも空き家対策の優先度を下げてしまいます。その対策としての本プログラム問う位置づけの中でコンサルティング業務の促進策を講じています。

(3)不動産コンサルティング業務の促進
 本項(2)でも触れましたが、不動産コンサルティングマスターが、空き家対策推進プログラムの中で重要な役割を果たすにおいて、国土交通省からは、以下のような関連施策を実施する計画です。

①コンサルティングサービスの認知度向上
 コンサルティング業務に対する需要を喚起し、所有者や利用者にその価値を広く伝えていくための施策を展開していきます。例えば、「不動産コンサルティングマスター検索システムの創設」、「全国不動産コンサルティングフォーラム」の開催、課題解決支援ツール等の作成が挙げられます。

②媒介報酬規制の適用範囲の明確化
 コンサルティング業務に対する報酬が媒介報酬規制の対象外の別業務であることを明確にし、不動産業者がより多様なサービスを提供できるよう促します。

③専門家の検索サイトと事例サイトの構築
 専門家を容易に検索できるサイトや、業務を支援する事例サイトを整備し、コンサルティングサービスの利用を促進します。

 以上のとおり、不動産コンサルティングマスターは、地域の持続可能性を支える重要な存在です。有資格者が持ち合わせている専門知識に基づくアドバイスにより、空き家の有効活用が進み、地域社会の活性化に貢献されるものと期待が寄せられています。また、地域の価値を高めるための取り組みが進展し、地域社会全体の発展が期待されます。
 
(4)今回の説明をお聞きしての感想
 空き家の流通を促進させることは重要ですが、一方で、インフラが老朽化している地域では、今後さらに高い負担を強いられることがあります。こうした地域では、地上の建物と地下のインフラとの歩調を合わせたような取り組みが求められ、場合によっては町の将来的な縮小を視野に入れた対策も必要ではないでしょうか。そうなると、空き家が空き家のままであることも合理的な場合があるのではないかと感じました。空き家の活用方法について、コンサルティングが技術的な面にとどまらず、政策と連動した社会課題の解決を目指したソリューションを提供することが求められるのではないかとも考えます。
 また、大きな政策課題となっている観光促進、農業振興による食の自立化、エネルギー問題といった諸問題を空き家問題とどう絡めて対応していくかを考えると、課題は多岐にわたります。これらの課題はプレイヤーも横断的であり、省庁も横断的な対応が求められます。地方自治体との連携が重要であるということも理解しました。講師の河合様からも、地方自治体との連携や役割分担が地域事情に沿った個別対応のために必要だという趣旨のご回答を頂戴しました。
 私の意見とも質問とも言えない雑多な発言を質疑応答の場でさせていただきましたが、今回は空き家活用という観点から、空き家を持続可能な地域の資源としてどのように再活用していくのかという点に意識を向けてみました。ビジネスという観点を踏まえた社会課題の解決としてやっていけることが多岐にわたりそうだということを改めて感じさせられました。

4.最後に
 国土交通省では、地域価値共創プラットフォームを立ち上げ、地域価値共創に意欲のある事業省等の後押しをしていきます。そのキックオフイベントが9月6日に開催される予定です。詳細などが分かりましたら、また共有させていただけたらと思います。


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