建物再生「Bespoke Apartments 成城学園前」の内覧会に参加しました
東京都世田谷区の成城学園前は計画的に整備された街並みと教育環境から高級住宅街として知られています。この地でAP STUDIO(以下「AP社」)による「Bespoke Apartments 成城学園前」のプロジェクトが進行中です。先日内覧会がありましたのでお邪魔しました。
以下、AP社の説明を引用しつつ、立地や地域特性、他事例との比較を交え、このプロジェクトの意義をまとめてみます。
1.AP社からのプロジェクト説明
はじめにAP社の説明を引用します。
2.成城学園前の立地特性
(1)成城学園前駅から徒歩2分という好立地
成城学園前は1920年代に「理想的な学園都市」を求め開発され、現在も高級住宅街として認知されています。小田急線の特急停車駅であり、新宿まで約20分のアクセスの成城学園前駅は、日常生活での利便性を確保しつつ、静かな住環境となっています。
Bespoke Apartments 成城学園前は、駅前という立地を最大限活用し、商業施設と住居機能を融合させた設計が採用されています。
(2) 教育と文化の街
成城学園前は幼稚園から大学までを持つ総合大学の成城学園が立地し、駅名にも使用される文教地域です。周辺には文化人や芸術家も多く住み、落ち着いた雰囲気があります。Bespoke Apartments 成城学園前のデザインや用途設計でも考慮されています。
3.他事例との比較:シリーズ全体の統一性と独自性
Bespoke Apartments 成城学園前は、AP社が展開する同シリーズの最新企画です。地域ごとの特性を活かして再生建築が為されています。
中野富士見町:1988年築の倉庫兼オフィスをSOHOとして再生。隣接する公園の緑を取り込んだデザインが特徴的。
武蔵小山:築40年のコンクリート建築を素材感を活かしたデザインで再利用。1階の栗スイーツ専門店は開店早々から話題です。
4.地域と未来をつなぐ再生建築
Bespoke Apartments 成城学園前は、駅前という好立地に加え、スケルトンでの提供という地域の多様なニーズに柔軟に対応できる点が大きな魅力です。出店希望者や住民は自由な発想で空間設計を行うことができるため、これまでにはなかった新しいビジネスやライフスタイルが生まれる可能性を秘めています。
また、成城学園前徒歩2分の立地でのSOHO型住居スペースの提案というのは、住む人、働く人、訪れる人の全てにとっても、「面白さ」があります。この「面白さ」は、単なる利便性や快適さだけではないでしょう。自由にカスタマイズ可能な空間設計は、利用者の個性や創造性を引き出すことにもなり、駅前に新たな彩りを添える可能性があります。
再生建築のシーンでは、既存の建物が地域の景観にフィットするかという点です。Bespoke Apartments 成城学園前は、控えめなデザインを採用しており、街並みにも溶け込んでいます。この点で、同社の企画コンセプトの「街に必要とされる建物」としての役割を果たしているのではないでしょうか。一棟貸しという制約から空きビル状態がしばらく続いた建物も新たな用途提案により、空間利用の幅が広がりました。長期的な資産価値の向上にも資することになります。なお、Bespoke Apartments 成城学園前は物件としてテナントのリーシングの相談とともに購入の相談も受けています。
近年、土地代や建築費が高騰する中で、既存建物を活かした再生建築は、経済的・環境的観点からも注目されています。建物を取り壊さず、地域特性を理解した再生プロセスを経て、新たな価値を生み出す手法は、他地域での再生プロジェクトにも大きな示唆を与えるものです。
私自身、この1年、再生建築について、調べ、学び、仕事に関わらせていただいくなかで思うことは、この建物再生というテーマは、単に経済合理性だけでなく、地域全体に新たな価値をもたらす可能性を秘めているということです。こうした再生建築の取り組みは、住む人や働く人だけでなく、地域のコミュニティに新たな活力を生み出す手段としての可能性も示していると感じます。
引き続き、建物再生に関する事例を紹介して参ります。