本書は、現代社会が抱える様々な問題をコモンの喪失という観点から分析し、コモンの再生こそが解決の鍵であると説いています。
コモンとは、共同体で共有・管理される資源のことを指します。具体的には、草地、森林、水路、道路などがあげられます。かつては、村落共同体などがコモンを管理することで、住民は生活に必要な資源を確保していました。
しかし、資本主義の発展と個人主義の台頭により、コモンは私有化され、囲い込まれていきました。その結果、人々は自然とのつながりを失い、地域社会の共同体性が失われていきました。
地域共同体が失われ、さらに分断が進む中で、再びコモンを生き返らせることの重要性を本書で訴えています。特に、技術進歩による雇用の変化、社会的孤立、文化的連帯感の欠如など、現代社会の様々な問題に対して、コモンの再生を通じた地域共同体の強化として、「ご近所」共同体を解決策として提案されています。
また、ベーシックインカムや教育の無償化など、社会保障の充実を通じて個人が社会において自立し、積極的に関与できる環境を整えることが、コモンの再生に資すると論じられています。著者は、これらの政策が個々人だけでなく、社会全体の持続可能な発展に寄与すると主張しています。
加えて、地域が自らの問題を自己決定できる権限を持つことで、コモンの効果的な管理と活用が可能になるとも唱えています。そこには、新しい統治のあり方が必要です。
『コモンの再生』は、ただ過去を懐古するのではなく、過去の共同体の知恵を現代の問題解決に活かす方法を探る試みとして、示唆を与えてくれています。