【わたしたちは「自由」に囚われている?〜作家・石井あらたが綴る等身大の自由】石井あらた
「都会の息苦しい生活から抜け出して、自然豊かな土地でのんびり暮らしたい」
だれもが一度は心に浮かんだことがある願いかもしれない。
だが大体は、日々の忙しさのなかでその願い自体を心の奥底に押し込めてしまっている。
その願望を、実現してしまった人がいる。
彼の名前は石井あらた。
都会から和歌山県の山奥に移住し、「山奥ニート」として10年間、様々な経緯で山奥に集まった若者と共同生活を続けてきた。
起きる時間も、何を食べるかも、何をして過ごすかも、すべて自分次第。
無理して働かなくていい、なんなら一日中ゲームをしていてもいい。
そんな生活が、明日も明後日も、ずっと続いていく。
世間の誰もが羨むような「自由」のなかで彼は暮らしてきた。
だが今、彼は「山奥ニート」を辞めた。
その経緯は彼のブログで語られている。
この裏側で、彼は何を考えたのだろう。
そして、街の生活の中で今なにを「妄想」するのだろう。
担当編集のそんな関心から、石井さんに『妄想講義』へ寄稿していただくことが決まった。
石井さんの文章を通して見えてきたのは、私たちが囚われていた「自由」への新しい視座と、現実と折り合いをつけながら生きなければいけない私たちへの等身大のメッセージだ。
『妄想講義』24人の著者紹介。今回は、作家の石井あらたさんと彼の「自由」にまつわる妄想の話だ。
石井さんが山奥ニートの生活で何より大事にしていたのは、「自由」を奪われないことだったという。それを石井さんは「挨拶しない権利」という言葉で表現している。
しかし、そんな絶対的な自由を揺るがすようなイベントに石井さんは直面する。コロナ禍、山奥を離れての生活、そしてお子さんの誕生だ。
山奥の集団生活という状況で、コロナがいかに今までの平和な生活に打撃を与えたのか。
そしてそこから街に出て、子供を育てるという生活の中で、彼の「自由」がどのように変わらざるを得なかったのか。
詳しいエピソードは本編を読んでいただくとして、ここで伝えておきたいのは「私たちは、現実の形に合わせて自由の形も変える必要があるかもしれない」ということだ。
石井さんが綴るのは、現実と向き合わざるを得ない生活者としての私たちの、等身大の「自由」の作り方だ(と私は思う)。
自分を殺さない、生きていくための「自由」。
思えば、億万長者にも仙人にもなり得ない私たちにとって、それはいま一番重要な「ライフハック」なのではないか。
そして、そんな等身大の自由を作り出すための材料のひとつが、「妄想」なのかもしれない。
これが、石井さんの文章を読んだ担当編集の「妄想」である。
最後に、『妄想講義』に寄せた石井さんの文章の中で、担当編集がもっとも好きな部分を引用しよう。この3行にビビッときた人は、ぜひ本書を手にとって、全文を読んでみてほしい。
人間という生き物にとってもっとも大切なことの一つが、きっとここに書かれている。
この石井さんの文章が読める『妄想講義 明るい未来の描き方と作り方』
を9月30日に発売します。石井さんのほかにも、様々な領域から集まった計24人の著者が、個性的な「妄想」を繰り広げます。
本文320頁、なんと総文字数は30万字以上。圧倒的コスパで「中身ぎっしり」な本書。ぜひお買い求めを。
「執筆中」の石井さんの文章を、WEB上で購入して読むこともできます。
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