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「サリンジャーにマティーニを教わった」
……と、言われたらバー漫画の原作家としては見過ごせない。ところが本文中にこんな引用箇所を見つけて困った。
さて、全国バーテンダーさんなら、どうします?
本分の中で「基本的には透明なスピリッツで作られるカクテルはスターする。スターするとスピリッツ独特の透明さと味わいを薄めることなく冷たいカクテルを作ることが出来る。シェイクすると、カクテルが泡だって濁ってしまう」。
と、「究極のバーブック(Ultimate Bar Book)から引用している。
引っかかったのはこの「スター」という呼び方。どうも馴染めない。
もちろん「stir」のことだが、日本のバーのカウンターだと普通「ステア」というだろう。Googleセンセに発音させてみると、確かにスターとも聞こえる。星(star)の発音記号は「stär」。「stir」の発音記号は「stər」。聞きようによってはスターにも聞こえるが、やはりステアに近い気がした。というよりこれは、たんに「ステア」という言葉に耳が馴染んでいるだけかも知らないが。ちなみに「シェイク」を発音させてみると「シェイキ」と聞こえる。
では、かの映画史上有名なセリフはどうなるのか。
「ウオッカマティーニを。ただしスターではなくシェイキで」
と、カウンターの客が気取って言ったら、バーテンダーさん、平然と笑顔で「かしこまりました」と答えるだろうか。ワタシなら思わず吹き出しちゃうに違いない。それがどんなに正しい発音でもネ。