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「バーベルに月乗せて反る背中かな」      今井聖

う~ん、分かる分かるその景色。夜トレはしないから経験はないけど、SEIBUGYMはベンチ台が窓際だから、角度が合えば20Kgプレートのような月がシャフトの向こうに見えるかもしれない。(誰か試せ。きっと美しい。
ゴールドジムは窓が小さいからダメだな)

 バブルの時代は広告屋だった。でも「我ながらコピーライターはむかないな」と、足を洗ったのは、ヘッドコピーが自分で読んでも気恥ずかしいほどに下手クソだったからだ。だから、俳句なら17文字。短歌なら57577。いわゆる詩歌は読むのは好きだが、自分では絶対に作らない。
 多分、このコンプレックスが漫画の中での少々クサイ「決め台詞」に姿を変えたんだと思う。
ただし、歌の世界「あるある、そんなこと」と分かる物だけではない。

「キリンの子」KADOAKWA刊

母親の衝撃的な自死について書いた人を2人知っている。ひとりはもちろんかの末井昭さん。「素敵なダイナマイトスキャンダル」で母親のダイナマイト心中について書いている。これはマスコミ業界では有名な話。
そしてもうひとりがこの、女性歌人・鳥居。
(鳥居はペンネームです)

灰色の死体の母の枕にはまだ鮮やかな血の跡がある
透明なシートは母の顔蓋(おお)い涙の滴をぼとぼと弾く

歌集のプロフィールにはこうある。
2歳の時に母親が離婚、小学校5年の時には眼の前で母に自殺され、その後は養護施設での虐待、ホームレス生活などを体験した女性歌人。義務教育もまともに受けられず、拾った新聞などで文字を覚え、短歌についてもほぼ独学で学んだ。

先生に蹴り飛ばされて伏す床にトイレスリッパ散らばっていく
爪のないゆびを庇って耐える夜「私に眠りを、絵本の夢を」
全裸にて踊れと囃す先輩に囲まれながら遠く窓見る

凄絶な光景に言葉を失うが、「言葉」を得たからこそ救われたに違いない。歌集のタイトルにもあるこんな歌に、読者も救われる。

目を伏せて空へのびゆくキリンの子 月の光はかあさんのいろ


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