果たせない約束//桜 本当の友達
新しいエアコンとコジマさん
2022年7月16,17,18日の3連休は日光の家に帰省して、ガス抜けになったエアコンを新しくした。
たまにしか帰らない家に贅沢かとも思ったけれど、飲み友達のコジマさんが取り付けエアコンの取り付け工事を宇都宮から軽トラックで日光に来て1人で仕上げて下さった。
コジマさんは以前、私が住んでいた賃貸住宅の大家さんで、私がある日突然! ホームレスになりそうになった時も、私の事情を心配して心強い言葉をいくつもかけてくださった。
その言葉に励まされ、頑張る気持ちが湧き、日光に来る活力となり現在に至っている。
栃木県 宇都宮市にはコジマ電気の本店がある。現在テレビのコマーシャルで流れている「コジマ×ビックカメラ」のコジマさんに、今でも私は、こんなにもお世話になっている。
感謝の気持ちは言葉では言い表せない。
冬休み 春休み 夏休み
私は旅行会社の仕事の他に、平日は特別支援学校のスクールバスに乗務している。
ドライバーではなく介助員として、障害のある小学1年生から高校3年生の子供たちの登下校の介助をする仕事で、春・夏・冬休みがあり、その休みを利用して日光に帰省する楽しみが、友人のミネさんに会う事なのだ。
日光に帰省している時は朝の6時ころ車にジロー犬を乗せてミネさんに会いに行く、朝のうちにゴミを出せるようなら、ミネさんの家のゴミ出しをする。
1年前の夏、車でミネさんの家に行く途中、遠くにミネさんがシルバーカー(手押し車)を押しながら歩いる姿が見えた、近所に住む姉さんの家に向かっているのだ。
ミネさんから3メーターくらい離れて後ろを歩く初老の男性がいる、知り合いなのかと思いながら私は車を止め、ミネさんと話していると、追い越して行ってしまった。
1人でシルバーカーを押しているミネさんを見守ってくれていたのだとㇵッとして、私は振りかえり、黙って頭を下げた。
ミネさんは私に気が付くと、少し私の顔を眺めて思い出し「あんたが来たから、今日は仕事を休むよ!!」と、草むしりの仕事ができなくなりずいぶん経つのに、満面の笑顔になった。
私は「草むしりの仕事、ミネさんが休んだら他の人が困るでしょ」と話を合わせた。
「いんだ!いいんだ! 休むんだ! 」との弾ける笑顔が嬉しかった。
叶わなかったお花見
去年の春はミネさんと桜を見に行きとても喜んでもらった。
5か所の桜を車で順々に廻ったが、最後の頃はミネさんも疲れが見えたので、今年は2か所に絞り桜の下にシートを敷きゆっくり食事をしようと計画をたてていた。
しかし今年の春休みの桜は、茨城では散り始めても、日光ではまだ開花には早く、ミネさんと見に行くのはもう少し後にしようと見送り、開花のタイミングに合わせて出直そうと予定を変更した。
スクールバスの仕事は、私の場合特別な任務で、担当バス介助員が休みの時に代わりにヘルプとして乗務をする、3つの支援学校で合計13台のバスがあり、全車両が私の担当なのだ。
私はスクールバスのスケジュールを調整し、満開の桜に合わせてミネさんに会いに行こうと決めていた。
ところが春休みが終わり出勤すると、○○支援学校の2号車の担当者が入院をして、そのヘルプのため仕事を休めなくなり、ミネさんと行くはずだった日光の桜は、その間に散ってしまった。
突然のお別れ
私は、エアコン取付のその日の朝、いつものようにミネさんの様子を見に行った。
門が締まっている、まだ寝ているかもしれない。
けれどドアの前に張り紙があり嫌な胸騒ぎがした。
連絡先に時間をあけて電話をした。
娘さんと繋がり、ミネさんは4日前に老人ホームに入所したと聞いた。
亡くなったわけではない事に少し救われたけど、寂しさと後悔の気持ちで
涙が溢れた・・・。
振り返れば冬休みに会いに行った時には、私の顔を見ても思い出すのに時間がかかり、度々不安そうな表情をしていた。
それでも私の調子に合わせて笑顔をみせてくれたけど、次の日の朝に、また様子を見に行くと、こたつのコードをどこかにしまったらしく、見つからず寒いままでいた。
私はとても切なくなり、すぐにコタツのコードを買いに行った。
こんなことがしょっちゅうあったら寒いだろうにと心配はしていたが
ミネさんは福祉のお世話になりながら、もうしばらくは家にいてくれるのだと思い込んでしまっていた。
ミネさんの庭
幸いなことにミネさんの暮らす老人ホームは、日光の家から10分くらいの場所にあった。しかし近くにいてもコロナで家族でさえ面会ができない。
三連休の最後の朝、私の心に大きな穴があいている。
どうにもならない喪失感に襲われた。
何時もならミネさんに会いにジロー犬と車ででかけるあの家に
ミネさんはもういないのだ。
認知症になっても、綺麗に手入れされた庭や家の中には、いつも感心させられていた。
庭に桔梗が咲いている、桔梗は背が高いから倒れないように棒を立て、ひもで結ばれている。来年この桔梗はどうなるのか?
咲いてくれるのか?
玄関の近くにある桜の木の花は、梅にそっくりな花が咲く。ミネさんが桜だと言うので私は梅だと笑っていたが、木をよくみたら確かに桜だと納得しミネさんに謝ったことがあった。
この桜は変わりなく、来年もミネさんが居ない庭に、梅のような花を咲かすだろう。
コロナがおさまったら、ミネさんに会えるようになるのだろうか?
面会に行き、外出の許可はでるのだろうか?
ミネさんと桜を見に行く約束を果たすために、希望を持ちつづけていたい。
老人ホーム
旅行会社でツアーコンダクターをしている私がなぜ、介護福祉士の資格を持っているのかと言うと、一言で答えるとすれば、人に恵まれて習得できた資格だと感じている。
以前ヘルパー2級という資格があり現在の「介護職員初任者研修」を勉強中に特別養護老人ホームに実習に行ったご縁で、その老人ホームで短時間だが働かせていただいた。
その時に私に仕事を教えてくれた先輩が素晴らしい人で、先輩の仕事ぶりを見て感動した。
それからも介護の仕事を続けているうちに尊敬してやまない沢山の人に出会ってきた。
認知症のミネさんが、在宅で今までいられたのは、ご家族の努力も勿論である。ミネさんの場合は東京から、毎週娘さんが訪ねられて、私も数回お会いしたことがあった。
ミネさんは娘さんやプロフェッショナルな良き方々に支られてきたからこそ認知症を発症しても2年近く一人暮らしを続けられた。
私は今後、ミネさんがお世話になる老人ホームに期待している。
ミネさんが幸せな生活を送れるように願い
またミネさんと桜を見られる事を願っている。
本当の友達・・
どうか・・ 幸せでいてほしい🌸
ミネさんにも私にも馴染み深い 日光杉並木
最後まで、お読みいただきありがとうございました。